37 蜂蜜の恋と思い出されたプロローグ
シュクレ子爵家に婿入りすることを理解していながらも、そのことが「次男であるにも関わらず、侯爵家の仕事に携わるに値しない。それだけの能力を持ち合わせていない」と幼少期から断じられていたということを理解できなかったフリードリヒ。
彼がビアンカともども子爵家でも家を継ぐに値しないと判断されたのは、当然のことである。
子爵夫妻には二人の間に出来た子供を跡継ぎにはするが、准貴族としても役に立たない二人を養う余裕はない。
食い扶持は自分たちで稼ぐようにと言われたフリードリヒは、失意のままシュクレ商会辿り着きあのような見当違いの発言をしたらしい。
マノンの新しい恋の話に興奮しているルルは、シュクレ商会からの苦情を受け取ったロゼッタ子爵が彼にどんな仕打ちをしたのかなど、もうどうでもよくなっていた。
女子は基本皆、人の恋バナが大好物である。
「で、そのテオ・ラングレン様は今、どちらに?」
マノン編は去年の卒業式で終わっているはずである。
なのにルルは、マノンの想い人であるテオにまだ会ったことが無い。
──当然ハッピーエンドなのですよね?
ルルの無言の圧を感じ、マノンが苦笑いをする中、フェリシティが口を開いた。
「彼なら父が気に入って留学させてしまったわ」
ウォード公爵は、メイベルに引き続き娘が懐に入れた令嬢を調べる中で、テオの優秀さに目をつけたらしい。
学費、滞在費含め、かかる費用は全て公爵家持ちという好条件でテオに留学を勧めたのだ。
テオはマノンに見送られ、ルルとすれ違いで旅だったらしい。
将来的に自身の側近にする気なのかは公爵のみぞ知るところだが、もし公爵がその気であるのなら、マノンは近年中に公爵とテオを掛けた戦いを繰り広げることになる。
──はじめて出会って以来、マノンとテオは桜下のベンチで何度か逢瀬を重ねた。
マノンはテオから明確な言葉こそ貰ってはいないが、
「女性はマノン嬢くらいにはふくよかな方が抱き心地が良さ──……わぁぁぁ!失礼しましたっ! 僕はなんてことをっ! すみません! すみませんっ!! 僕はふくよかな女性が好みだと言いたかっ──、いや、そうじゃない、いや、そうなんだけど、そうじゃないんですっ! ふくよかであれば誰でもよいってわけではなくてですねぇ……僕は、僕は……!!」
真っ赤な顔をして、泣きそうな顔でパニックに陥るテオを見て、マノンは言葉など要らないと思ったのだ。
今考えると、ルルは少しテオに似ている気がする。
留学明け、少し成長しているであろうテオに再会するのを楽しみに思いながら、ルルの恋の行方を見守るマノンなのであった。
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そしていよいよシエルとの約束の日。
二人分のお弁当を手に桜の木に向かっていたルルは、遠くに見える桜の木を目にした瞬間、重大なことを思い出していた。




