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小説の世界に転生しましたが、既に終了しているようなので安心です!?  作者: Debby
第三片/みひら

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28 氷晶の“らしからぬ”毒舌と予算会議


(そう言えば図書館で別れたきり、ハンカチ男と会っていない……)


ルルはカバンの中に堂々と鎮座するC.Bと刺繍されたハンカチに目をとめた。


いつでも返却できるようにと持ち歩いているそれは、最近嫌にその存在感を増している。


そのくせ図書館での出来事以降、それまではあんなに避けていても()()目にしていたあの灰青(アッシュブルー)を、全くと言っていいほど目にしなくなった。


やはり彼にとってルルは、『生徒会の仕事』であり、義母の言う通り『三華(みはな)サロンに所属することになった一年生に興味を持って声を掛けて来ただけ』の存在なのだと、何故か少し寂しく思った。




「生徒会予算会議、ですか?」


「そう。三年という期限付きだし、私財を投入するから予算は皆で分けて構わないと伝えたんだが、それならそれで会議に出て明言して欲しいと言われているんだ」


予算割り当ての会議は新入生の入学後、新入会員を迎えたサロンとクラブが落ち着いてから行われるらしい。


何事も経験であるとのフェリシティの言により、ルルはその会議にメイベルと共に参加することになった。


(生徒会……ハンカチ男もいるのかな……)


ふとそんなことを思ったルルだったが、ブルブルと頭を振る。


バルトを避けるため、普段は教室のある校舎とサロン、寮のみで共有スペースには一切足を踏み入れないルルであったが、予算会議が行われるのは共有スペースがある校舎だ。


余計なことを考えている場合ではない。


ルルはビクビクしながらも会議室に辿り着き、席に座ったところで息をついた。


「だから心配しなくて良いって言っただろう。君が気をつけるべきなのは()()()()()()()()()()だよ」


以前聞いた話ではあの桜の木が物語の起点(プロローグ)であるという話だった。

物語ではヒロインとヒーローの逢瀬は必ず桜下(おうか)のベンチか桜の見える場所で行われる。

図書館の桜の木が見える学習スペースがわかり易い例だ。


──とはいってもこれは現実。いつ何があるか分からないため、ルルはつい疑い深くなってしまう。




「メイベル・クランベリー……何故君がここにいる!?」


会議の開始時間が近付くにつれ、人の流れが多くなってくる。


その中の一人がメイベルの姿を見るや否や近寄り、声を掛けてきた。

カラフルな髪と瞳(ボルドーの髪と碧眼)を持つ自尊心(プライド)の高そうな眉目秀麗な令息(イケメン)だ。


「おかしな事を言うものだ、ディミトリ・スペンサー()()()()

私が学園サロンに所属している以上、ここに座っていることに何の違和感もないだろう」


冷たく光る氷晶(アイスブルー)と、「ハッ」と彼を鼻で笑うメイベルに、ルルはいつもの彼女には感じない棘のようなものを感じた。


今にも「そんなことを言い出すなんて、君は頭にウジでも湧いているのかい?」とでも言いだしそうな雰囲気だ。


「クッ! メイベル・クランベリー! 君はそんな横柄な態度を取る様な女性ではなかったはずだ。一体どうしたというんだ」


正気に戻ってくれとでも言いたげなディミトリに、メイベルが苦笑を浮かべた。


()()()()()()()()()()()こそ、爵位が上の家の者に対してそのような──言葉選びの良し悪しも分からないような程度の低い男ではなかったはずだが。

──一体どうしたんだ? そんなことを言い出すなんて、頭にウジでも湧いているのかい?」


(……言っちゃった……メイベル様、やっぱりそう思っていたんだ……)


メイベルらしからぬ攻撃的な態度に、ルルは隣で頭を抱えた。


返す言葉がなかったのか、ディミトリは「やはり君とは会話が成り立たないようだ」と言い捨てると、大股で離れていき、メイベルから一番離れた席に着いた。

そのため、そこで二人の攻防は終わりを告げる。


さすが貴族学園とでもいうべきか、私財で賄うため予算は不要というサロンは三華サロンだけではなかった。

特に高位貴族の令嬢が(あるじ)となり運営する淑女サロンは、その殆どが予算の割り当てを辞退し、断りを入れてから会議室から退室した。


メイベルとルルが退室する際、ディミトリの悔しそうな顔が視界に入ったが、メイベルの「大丈夫だよ」とささやく声に、ルルは彼に背を向けその場を後にした。


──結局、シエルの姿を見ることは出来なかった。






「あいつはね、三片(みひら)恋標(こいしるべ)『メイベル・クランベリー編』の相手役(ヒーロー)なんだよ」


戻ったサロンでルルが紅茶を口にしようとした瞬間、メイベルがそんなことを口にしたため、ルルは紅茶を吹きだすかと思った。



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