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小説の世界に転生しましたが、既に終了しているようなので安心です!?  作者: Debby
第二片/ふたひら

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24 決死の演技と車輪に消えた叫び


ルルを乗せた馬車が男爵家に到着した。




「ルル!そんなにパパと同じ色が嫌だったのか!?」



その音を聞きつけた父ダニエルが、玄関から飛び出して来るなり発した第一声がそれだったから、ルルはとても驚いてしまった。


ルルには呼び出された理由に心当たりが──両親に秘密にしていることがいくつかある。


前世の記憶を思い出したことと、髪を染めていることはいわずもがな。


ブリジットに絡まれていることはチラッと話していたが、図書館での出来事は伝えていない。


あとはシエル(公爵令息)、最近では第三王子に絡まれていることだ。


予定になかった呼び出しに、ルルはその中のどれかがバレたのだと予想していた。


父に縋られ、義母に苦笑いをされながら邸内のサロンに移動したルルは、そこで今回呼び戻された理由を知った。


(まさかの全部だった……)


五つの隠し事のうち、前世の記憶以外のすべてがバレていたのだ。




しかも、その情報源はブリジットの父親──謝罪に来た筈のドロワット子爵が、何故か爆弾を投下して帰っていったらしい……


どうやらドロワットファミリーは鬼門のようだ。

──今後は、出来るだけ近付かないようにしようと心に決めたルルだった。






*――*――*






「ルル、第三王子殿下とブルーベル公爵令息と一緒に試験勉強していたって、何故そんなことになったんだい?」


そう父に聞かれるが、そんなのルルが聞かせて欲しいくらいだと思う。


何を、どう説明すれば良いのか分からないのだ。


ハンカチをすり替えられたことだって理由なんか分からないし、ルカと試験勉強をすることになった理由も、何故なのか分からないのだから。


元平民のルルに王族と高位貴族の高尚な考えなど、聞かれても答えようがないのだ。


ルルの頭から煙が出るかと思ったその時、義母(キアラ)が口を開いた。


「あなた、ルルちゃんがお世話になることになった三華サロンは思いの外影響力があるのよ。

殿下もブルーベル様も、三華サロンに所属することになったルルちゃんに興味を持って様子を見にいらしたのではないかしら」


「「な、なるほど……」」


キアラの説明は、ダニエルにとってはもちろん、ルルにとっても得心のいくものだった。


そっか、三華サロンに声を掛けられる前に会っていたシエルだって、二度目に会ったのはサロンに入った後だった。

しかも入学式当日だった一度目は、生徒会の仕事だという明確な理由がある。


「で、ではルルが学園で髪を染めているというのは……」


帰ってきたばかりの時は 「パパと同じ色が嫌だったのか!?」 と飛びかかってきたくせに、今度は少し遠慮がちに聞いてくるダニエルに、ルルは申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


呼び出しの心当たりはあったが、前世の記憶は説明のしようがないし、シエルや第三王子、ブリジットの考えていることなどルルには分からない。


ルルは男爵家に着くまでの時間のほとんどを、髪を染めていることへの言い訳を考えることに費やしていた。


そして、その件に関して準備したルルの言い訳は二つ。


ひとつが前世云々を両親に話してしまうということ。

しかし、これを実行に移すには慎重に言葉を選ばなければならない。

転生者はルルだけではないし、受け入れてもらえるかも分からないからだ。

それに、話すことによってかえって心配をかけることになる可能性があるからだ。


となると、ルルに残された選択肢はひとつ。

ただ、これを実行に移すには勇気と演技力が必要で、なけなしのプライドも犠牲にしなければならない……




「ルル、たとえこの色が嫌いだと言っても怒らないから、君の素直な気持ちを教えて欲しい」


母セシルが父ダニエルにそっくりだといって、愛おしそうに撫でてくれたこの髪色が嫌いなわけがない。


だから、ルルはそんな嘘だけは、つきたくなかった。


「お父様。この髪色、私は大好きです」


「ルル……」


父は感動したようにうるうるしているが、これだけでは髪を染めている理由にはならない。


ルルは心を決めた──


「でも、この色とても目立つでしょう?

私はこの髪色を理由に殿方の目に留まりたくはないの(っていうか、せめて小説がエンディングを迎えるまではそっとしておいて欲しい)。

大勢の中に埋もれている私を、ただ一人の相手に探し出して欲しいのです(嘘です。ごめんなさい。全力でモブに紛れ込んでいます!)……」


父親がさっきよりうるうるしているような気がする。


(お義母様は……いや、お義母様は意外と鋭いから今視線を合わせれば、演技力の如何に関わらずバレる気がする……)


こう言ってはなんだが、ダニエルは若干浮世離れしているところがある。

そんなダニエルが男爵としてやっていけているのは、キアラのお陰なのだとルルは思っている。

フリでもいいから、キアラもなんとか納得してくれるといいと思うルルであった。






ルルが学園に戻る日、父は言った。


「知らなかった事を今さらとやかく言っても仕方がない。仮にバレて退学になったとしても将来のことは心配いらないよ。

貴族家の跡継ぎの条件に学園の卒業はないからね。実務能力うさえあればなんの問題もないんだ。

がんばり屋のルルのことだ。家庭教師について学べば大丈夫だろう。


私たちはルルのことを信じているよ──」


「お父様……」


ダニエルの、信じているという言葉を反芻しながら、ルルは学園への帰途についた……



が。



(んんん????)



「まさか学園に入学しないって選択肢があったのぉ!!!!????」



はじめから通わないのと、退学になるのは全然違う!


考えもしなかった選択肢の存在に、思わずあげたルルの叫びは、外に漏れることなく車輪の音に吸い込まれていった。



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