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第二百十二話 ひとりになってみて

怒りをぶちまけて立ち去ったあと、後ろを気にしていた。

もしかしたらルイミン達が追い駆けて来るかもしれないからだ。

悪いのはルイミン達だから謝りに来るかもしれない。

そんな期待を抱きながら足を緩める。


「謝ったって許してあげないんだから」


しかし、ルイミン達が追い駆けて来る気配はない。

時折、後ろを振り返ってみたが人影すらなかった。


「何よ。こう言う時は私を追い駆けて来て謝るのが道理でしょ」


”ちょめ助、私達が悪かったよ”とか言って。


最初に裏切ったのはルイミン達の方なのだ。

だから、謝るのもルイミン達の方からでないといけない。

私の方は全く悪いことはしていないのだから。


「薄情者」


謝りに来たら許してあげようかと思っていたが止めた。

あとで謝りに来ても許してあげないようにしようと思う。

傷ついたのは私の方なのだから。


「まったくムカつくわ。よりによってアーヤのところへ行くなんて」


私から独立して自分達で”ファニ☆プラ”をやるならまだしもアーヤのお世話になるなんて許せない。

私の方がルイミン達をよく知っているからプロデューサーに向いている。

それなのにギャルしか知らないアーヤを頼るなんて許せない。


「”ラズベリー”だかなんだか知らないけれど、しょせんはべんじょ虫の集まりよ」


いずれルイミン達もべんじょ虫のウイルスに犯されてべんじょ虫になるだろう。

そうなったらもう二度とルイミン達といっしょにアイドル活動をすることはない。


「あーっ、イライラする」


アーヤのことを考えただけで虫唾が走る。

アーヤは私の天敵だから仕方ないのだけど。


「そもそもこんなことになったのはアーヤが私の真似をするからよ」


はじめにアイドルプロデュースをはじめたのは私だ。

それをアーヤが後から真似をしてプロデュース業をはじめた。

べんじょ虫文化を広めたいからべんじょ虫をプロデュースして。

あっちの世界で広まっていたからこっちの世界でも広めようとしているのだ。


「べんじょ虫なんてこの世からいなくなればいいのに」


そうなった方が世の中は平和になる。

べんじょ虫が原因の事件もなくなるからだ。

援助交際とか薄汚れた交際とかすべてべんじょ虫の事件だ。

とかくべんじょ虫は楽して稼ぎたいと思っているから自分の体を売る。

そうしてスケベなおじさん達からお金を巻き上げて稼いでいるのだ。


「べんじょ虫なんて世の中のゴミなのよ」


べんじょ虫がいなくなれば家出する女子も減るだろう。

身なりも普通に戻るから清純な女子高生に変わる。

昔のべんじょ虫がいなかった時代に戻るはずだ。


「ムカつく」


ひとりイライラしながら歩いているとアイドル部の部室の前まで来ていた。


「何でよりによってアイドル部の部室に来るのよ。ここにはもう用はないのよ」


無意識と言うのは恐ろしいものだ。

普段から通い慣れているから体が覚えていた。

だから、無意識でいてもここへ来てしまったのだ。


「イライラしてきた」


嫌でもルイミン達のことを思い出すから怒りが込み上げて来る。

ここでルイミン達といっしょに練習をしていたことが懐かしく思う。


「もう、ここには二度と来ないから」


私は回れ右をしてアイドル部の部室に背を向ける。

そして肩を怒らせながらアイドル部の部室から立ち去ろうとした。


が――。


「このままじゃ腹の虫が収まらないわ」


ルイミン達に嫌がらせをしないと気分が晴れない。

あいにくアイドル部の部室にはスプレー缶が置いてある。

ちょうど路上ライブの看板を作る時に使っていたものだ。


私はそのスプレー缶を持って来てアイドル部の部室と向き合った。


「落書きしてやる」


そう決意するとテレキネシスを使ってスプレー缶を操る。

そしてアイドル部の部室の壁にバカだのアホだの落書きをした。

スプレー缶は油性だから洗っても消えないだろう。

その方が嫌がらせになるからちょうどいいのだ。


「ふーぅ、こんなものね」


相変らず自分の落書きのセンスに惚れ惚れする。

遠くから見てもわかるぐらい大きくしておいた。

これを見たルイミン達がどんな顔をするのか楽しみだ。

きっと悲しい顔をして怒りまくるだろう。


「私を怒らせたのだから当然だわ」


そんな顔を見れないのが唯一の心残りだ。

まあ、ある程度は想像できるから問題ないけど。


「もう、私には関係ないんだから」


だけど、何故だか心の中にポカンと穴が開いている。

嫌がらせをして憂さを晴らしたからだろうか心の穴に風が吹く。


「はーっ、何かつまらない」


ルイミン達にムカついているはずなのに悪いことをした気がして来た。


「私は悪くない。当然のことなんだから」


すると、ふいに”バカ息子”のことを思い出した。

あの時もワイドショーで話題になったぐらい世間を騒がせた。

だけど、結局うやむやになって”バカ息子”がネタとして残った。

今でも”バカ息子”はキラーワードになっているからときどき耳にする。


「私は”バカ息子”と同じにならないから」


そう言って逃げるようにセントヴィルテール女学院から出て行った。


それからどれぐらい走っただろうか。

気がつくとクジラ公園の噴水の前にいた。


「はぁー、何でまたこんなところにいるのよ」


ここの公園はルイミン達が路上ライブをしていた場所だ。

今は他の部が活動の場として使っているが想い出は残っている。

ルイミン達が路上ライブをしていた場所を見ると嫌でも思い出す。


「私はルイミン達と絶交したのに何でよ」


無意識のうちにルイミン達を必要としているのだろうか。

それだったら嬉しいけれど同時に腹立たしく思える。

もう、ルイミン達と絶交したのだからこの場所を求めてはいけないからだ。


「王都にはあちこちに想い出が残っているから王都にいない方がいいわね」


そうすれば頭の中からルイミン達が消えるだろう。

今は思い出すだけでも腹立たしくなるからいない方がいいのだ。


「ミクは冷たいけれどミクの家に戻るか」


私は転移の指輪を取り出して魔力を注ぎ込む。

すると、指輪から眩い光が溢れて来て私を包み込んだ。


「とうちゃ~く」

「また戻って来たの」

「帰って来てそうそう、冷たい言葉を言わないでよ」

「ふぅー、せっかくひとりになれると思っていたのに」

「今までひとりだったじゃん」

「私は一日ひとりでいたいの」

「そうですか。お邪魔虫は出て行きますよーだ」


相変らずミクは冷めた反応を示す。

少し前は喜んでくれたのに今は冷たい。

思春期だからと言えばそれまでだが、とかく私には冷たく接するのだ。


私はミクの部屋を出て廊下に来る。

そして人の気配を感じてルイの部屋を見るとルイがドアを細くあけて覗いていた。


「あっ、ちょうどよかったわ。ミクの部屋から追い出されちゃったの。ルイの部屋に入れさせて」

「やだ」

「何でよ。ルイは思春期じゃないでしょ」

「ルイも思春期だもん」

「まだ6歳じゃない。思春期はまだまだ先よ」

「ルイは大人だもん」


そういいわけをしてルイも部屋に入れてくれない。

間違いなくミクの真似をしているのだが変なことを真似ないでもらいたい。


「お願いだから部屋に入れさせてよ」

「ルイはひとりになりたいの」

「ミクの真似をしないでよ」

「じゃあ」


そう言うとルイは部屋の扉を閉めてしまった。


「もう何よ。二人そろって私を邪魔者扱いして。私は家族なのよ」


自分ではそう思っている。

ミクの家に来て長いから家族も同然だ。

ただ、私の立ち位置はどこなのか気になっている。

普通に考えればペットと同格だろう。

だけど、こう見えても女子中学生だからペットよりも上でいたい。

望むところはミクとルイのお姉ちゃんと言う立ち位置だ。


「まあでも今の立ち位置はペット以下なんだろうな」


たとえ思春期であってもペットまでは追い出さない。

ペットの存在は癒しになるから返って必要とするのだ。

なのに私だけ追い出されるなんてペット以下と思われているのに他ならない。

たしかに”ちょめ虫”だから”お邪魔虫”と親戚に思われているのだろう。


「いーもん、いーもん。私には秘密基地があるから」


そう言って外に出て屋根の上の秘密基地まで移動する。

しかし、あいにくの雨で屋根の上はビチョビチョだった。


「もう、何でこんな時に限って雨なのよ」


私に罰を与えているつもりなのだろうか。

日頃の行いはいいから罰があたることはない。

だったらツイていない虫なのだろう。


「あーあ、これじゃあ秘密基地を使えないわ」


私は軒先でザアザア降る雨を眺めながら大きなため息を吐く。

せっかく秘密基地で日向ぼっこしながらまったりしようと思っていたのに台無しだ。

雨は嫌いじゃないけれど、時と場所を選んで降ってもらいたい。

今は必要としていないからどっかえ消えてもらいたいのが本音だ。


そして不意に目の前にあった道具小屋を目に止める。


「あそこなら雨がしのげそうね」


道具小屋はパパの畑仕事に使う道具が置いてある。

畑に出るときは道具小屋から道具を持って行っている。

今日は雨降りなので道具小屋はいっぱいだろうが。


「たしか道具小屋には2階があったんだよね」


外から道具小屋の2階の窓を眺めてみる。

埃塗れで曇っていたが窓は開きそうだ。


私はパパのところへ行って道具小屋の2階を使っていいか頼んでみた。

すぐにパパはOKを出してくれたが2階は使っていないから埃塗れだと言って来た。

それでもひとりになれる空間を確保できるなら多少の我慢は大丈夫だ。


許可をもらってから、さっそく道具小屋へ駆けて行く。

そして2階に上がる階段を昇ると埃まみれの2階へ着いた。


「うわぁ~、すごい埃っぽい」


歩く度に床に積もっていた埃が舞い上がる。

それは目で見てもわかるぐらい埃が密集していた。


私はすぐに窓を開けて風通しを良くする。


舞い上がった埃は風に流されて外に出て行った。


「しばらく窓を開けていれば埃もなくなるわ」


床に残った埃はほうきで履いてゴミとして捨てればいい。

屋根の上の秘密基地と比べれば快適さはないが自分の部屋があるのはありがたい。

ミクの家に来て初めて私専用の部屋ができたからだ。


「ここを私の城にしよう」


そう決めると部屋をキレイにしたい欲求が湧いて来る。

せっかくの自分の城なのだから自分仕様にしたい。

まずは埃を片づけて部屋の掃除をすることからはじめることにした。


「私の部屋、私の部屋」


私は雑巾を濡らしてから埃まみれの床の掃除をはじめる。

普段なら掃除は面倒くさいと思うけれど今は苦にもならない。

鼻歌を歌い掃除を楽しみながら部屋をキレイにした。


1時間も掃除をしているとすっかりと部屋がキレイになった。


古い建物だから床が黒光りしていれ味わいがある。

だけど、日当たりはよくないので少しだけジメッとしている。


「こればかりはしょうがないよね」


窓を増やすこともできないし、太陽を傾けることもできない。

少しばかり陰湿な空気は漂っているけれど仕方のないことだ。


「あとは家具よね」


道具小屋の2階には何も置いていないからまっさらになっている。

なので私ひとりが座っているととても寂しい空気に包まれてしまう。


「ソファーとラグとテーブルとベッドとテレビも必要よね」


ついでにWi-Fiと家庭用ゲーム機があれば最高だ。

私はネットゲーム世代だから日々の日課にゲームは外せない。

スマホゲームもいいけれどやっぱり大きな画面で楽しみたい。


「Wi-Fiは繋がることはわかっているけれどテレビはどうかな」


同じ電波であれば繋がるはずなのだけどその点は不明だ。


「とりあえずちょめジイにお願いしてみよう」


私は久しぶりにちょめジイに念話をつないだ。


(ねぇ、聞きたいことがあるんだけど)

(うほっ、何じゃこのぱんつは。湿り気たっぷりじゃ。ウホウホ)

(もしかして”ふんどしぱんつ”を楽しんでいる?)

(これは”ふんどしぱんつ”と言うのか。なかなか上物じゃないか)

(お祭りの時にしか身に着けない貴重なぱんつだからね)

(しかも大漁じゃ。これは褒美をやらんとな)


そんな嬉しいことをちょめジイは言って来る。

ぱんつ集めをして以来、ちょめジイから褒められたことがない。

いつもケチをつけられてぱんつのカウントを減らされていた。

だけど、今回に限っては違ったようだ。


(褒美をくれるならさ、ソファーとラグとテーブルとテレビとゲーム機を召喚してよ)

(随分と多いな)

(私専用の部屋ができたの。それで必要だからさ)

(普段ならそんなことはせぬが、今日はいいじゃろう)

(ありがとう、ちょめジイ)


言ってみるものだ。

今日のちょめジイは機嫌がいいから言うことを聞いてくれた。

きっと”まにあっくなふんどしぱんつ”がちょめジイの心をつかんだのだろう。

それにお祭りをしていたからたっぷり湿り気がついている。

とかくちょめジイはぱんつの湿り気が好きだからちょうどいいのだ。


しばらくすると私の部屋に注文をした家具が召喚された。


「これで必要なものは揃ったわ。あとはゲームをしてまったりするだけね」


心配していたテレビもつながった。

やはり電波は次元を超えるようだ。


「あっ、そうだ。おやつを用意するのを忘れていたわ」


自分の部屋でまったりするならおやつは欠かせない。

スナック菓子をバリボリしながらゲームをするのは楽しい。

手を動かしていると口が寂しくなるからおやつを欲するのだ。


私は道具小屋からでて母屋に戻る。

そしてママのところへ行って今日のおやつをもらって来た。


「今日はパンケーキか。美味しそう」


ママ手づくりのパンケーキだからすごく美味しく仕上がっている。

お店に出してもおかしくないぐらいのクオリティーなのだ。

おまけに飲み物は紅茶と少し上品なおやつになっていた。


「さてと、おやつも準備できたし、ゲームをしようかな」


私が最近ハマっているゲームは昔販売されていたゲームのリメイク版だ。

私にとっては新鮮だし、昔のゲームの楽しさを味わえるから一挙両得だ。


「昔のゲームって単純なのだけど面白いのよね」


余計な造りがないからすぐにゲームにのめり込める。

しかも、中毒性が高いから夢中になってしまうのだ。


「ゲームって作り込めば映画のような作品ができるけど、最低限の要素を絞り込んだ昔のゲームはゲーム性が高いのよね」


だから昔の子供達はゲームに夢中になったのだ。


あいにく私はスマホ世代だからファミコン時代のことは知らない。

だけど、リメイク版を通して当時のゲームの楽しさを追体験できる。

それができるところがゲームのいいところでもあるのだ。


「さてと何からはじめるかな……やっぱ”EM2”かな」


”EEリバース”や”スポロボY”はプレイしたことがある。

やり込み要素も多いから長く楽しめるところが好きだ。

だけど、同じゲームばかりしていても面白くない。

せっかくだから薄く広く楽しみたいのだ。


「”EM2”って”EM1”からパワーアップしているのよね」


”AP”システムを採用したことでゲーム性が高くなった。

おまけにキャラ限定のスキルも覚えるから楽しみも増えた。

なのでやり込み要素も高くなったからハマっているのだ。

ただ、一部武器の弾数が減っているのは使いづらさを感じる。

ビジュアルはカッコいいけれど使えない武器になっているのだ。


「最近、EM3も出たからそっちも楽しみだ」


どれだけパワーアップしているのか知りたい。

よりゲーム性が増していたら楽しめるだろう。

しかもリバイバル版はお安いからお手頃なのだ。


「やっぱ私ってロボマニアよね」


大抵のロボットゲームはプレイして来た。

その中で自分にあっているのはシュミレーションだ。

アクションのように操作性が必要ないから誰でも楽しめる。

おやつを食べながらするにはちょうどいいゲームなのだ。


「さ~ぁて、夜までやり込むぞ」


私は雨音を聞きながらどっぷりとゲームの世界にハマった。

自分の部屋だから気を使わなくてもいいところがちょうどいい。

おかげで時間を忘れるぐらいゲームに夢中になれた。

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