17負傷
失敗した。もう本当に最悪だ。
騎士なのに。利き手を負傷するなんて。
どうして、もっと上手くやれなかったんだろう。
数多くの者が負傷したが、利き手を負傷したのは私だけだ。
気分が沈む。
王城内で暴れた魔獣の討伐後の魔石崩壊。
討伐での負傷ではなく、事故での負傷というところが、自分の中で納得いかない。
治癒師により治療はされたが、騎士という職業上、無理に魔術で治癒すると以前の動きが出来なくなる可能性、そして今まで以上の能力の向上が出来なくなる可能性があるとのことで、止血と筋と神経の接合のみで、1カ月の安静。休職を言い渡された。
溜息が出る。
何て情けない。
カイウスは、負傷した私を見て、それはそれは慌てた。
居合わせたリオン・グラートにしっかりしろと、頬を叩かれて、ハッとしたように、普通に戻ったが。
少し体位を変えたくて右腕を動かすと、ビリビリと痺れが指先に伝わる。神経も痛めているのだろうな。1カ月の安静。長いな。神経の損傷の治癒は2~3カ月かかるときもある。3カ月見て、痺れが残れば、能力の向上は諦めて治癒師に治療を頼むしかない。
治療が終わって、戻ってきた自分の寮の部屋。
いつもの馴染みの壁の染みを見ながら、気分が落ち込む。
窓の外は、まだ、夜中で暗い。
扉がノックされる。
「どうぞ。」
声をかける。
入ってきたのは、カイウスだった。
・・・女子寮なんだけど?
「すまない。」
一言、カイウスが言う。
「私こそ、迷惑をかけて申し訳ありません。」
ベッドに座る。
「座っても大丈夫なのか?」
心配そうに私の腕を見る。
「動かさなければ、痛みはありません。」
「そうか。わかった。」
「はい。」
「じゃあ、行くぞ。」
「えっ?」
急に行くって、どこに?
「俺の家。」
「どうしてですか。私「もう、お前の家にも、俺の家にも伝達している。もう、決めたんだ。来い。」
そんな、勝手な・・・。
返事を返せないでいると、カイウスが更に言う。
「悪い。勝手に決めて。だが、今の状態でお前をここに置いておけない。」
見つめられると困る。
左手に差し出された手を、黙って取る。
「歩けるか?」
「大丈夫です。」
「歩いて痛くないか?」
「少し響くぐらいでしょうか?」
そう答えたら、
「じっとしてろ。」
と言われて、右腕に触れないように、すくい上げるように抱き上げられた。
ふわりと身体が地を離れる感覚に、体がこわばる。
「ゆっくりしていろ。」
悠然と歩くカイウス。
夜半で廊下に人がいなくてよかった。
こんな所、見られたら恥ずかしくてたまらない。
寮の前に、馬車が待っていた。
私を抱いたまま、軽々と乗り込むカイウス。
いつもの馬車より、大きくない?
侯爵家では、夜半にも関わらず、メイドさんが待機していた。
夜なので、構わなくていい旨を説明し、下がってもらう。
初めて客間に泊まる。
なのに、カイウスが離れない。
「ねえ、私は大丈夫だから、休んでくださいませんか?」
そう言うと、渋面を呈し、
「また、明日な。」
と言って、出て行った。
眠れないかなと思ったのに、疲れていたらしい。カイウスが部屋から出たのを見届けて、私の記憶は途切れた。




