妹思いと理由
一晩経った‥‥
ここに隠れてから今は遠くの方で戦火が上がっているのが見える。この距離で見えるあの大きさの魔法の光球とかどんな相手だよ‥‥。だがもう俺に出来ることはない。あのお嬢様の来るのを待つしかない‥‥だがそれはあちら側が勝つということ。つまり俺の妹は‥‥。
「あら。助かったというのに意気消沈ですわね?」
「うわぁ!?いきなり現れる‥‥なっ‥‥?!!」
振り向くとそこに自分が諦めたものが立っていた。
「お兄‥‥ちゃん‥‥!お兄ちゃーーーーん!!」
「シロール!!アアアア!!良かった!!!」
クルーガの妹シロールは例の装置の中に入れられていた1人だった。クルーガはイセのデカい光球が見えた時、装置も壊されたと思って諦めていたのだ。
「妹を大事になさいと言ったでしょう?」
「ありがとう‥ありがとう‥‥あんたが助けてくれたんだな?」
「いえ、私では無理でした。礼は私の師匠であるこの方に言ってください。」
「どうもぉ師匠のズク・リューコって者だよぉ。兄妹共に無事で良かったねぇ。」
「リューコさん‥‥何とお礼を言って良いか‥。」
「対処してる時に気に入らないやり口に気づいて頑張っただけさぁ。このシーを助ける為に対処しに行ったのに敵さんとはいえ子供をこんな目に遭わせるのかってね。お陰で時間食っちゃって危うくこの妹分がやられる所だったよ。でもまぁ、あんたと同じ、『妹を守る』事は出来たかな?」
ハハハと笑っているが妹が利用されるという事でその装置の概要を知っていたクルーガは、その作業が如何に困難なものだったか多少なりとも理解していた。その技量に敬服すると共に益々感謝が止まらなくなる。
「ではあなた方にはカラハマの方に一度来て頂きます。この戦を止めてくださった方の前で今後について説明と選択を。」
「了解したが‥‥止めたのはお二人ではないのか?」
「私達2人は抵抗し、食い止めていたに過ぎません。止めたのは私の魔法学会での同窓で姉妹弟子であるイセ姉様。こちらで先程見えたかは分かりませんが巨大な光球を生み出して車輪船にぶつけていた人ですわ。」
「あの馬鹿デカい光球を放った本人か‥納得だな。」
「それに、ガサの元軍隊長、その軍隊長の召喚した龍と組んだイセ姉様のメイド、ベルレ神の御使様の従者お二人、それら全員を従えた御使様本人になります。」
クルーガは開いた口が塞がらない。あの光球を放つ人を更に従える奴がいてそれが神の御使?!ガサの軍隊長で召喚!?? 情報過多で軽く眩暈がする。
「先日のソーアの戦を止めたのもこの方です。色々と経緯などをお聞きしたいとの事でしたので其方に御同行願いますわ。」
「色々と頭が追いついていないが‥‥元より選択肢は俺にはない。よろしく頼みます。」
「じゃあ行こうか。私に掴まんなよお兄さん。」
シーとリューコは1人ずつ抱えてカラハマの街へ飛ぶ。
カラハマ 兵詰め所
「カナリ様!」
到着したのはイブースの軍隊長カシマ・アントラ。
「カシマさんご苦労様です。お互いにあっちこっちと移動で大変ですね。」
「カナリ様の移動距離と比べれば私など遠く及びませんよ。」
距離だけにね。と、この人ギャグも言う人なのね。
「別働隊への対処はどうでしたでしょうか?」
「はい。やはり山中に船2隻分程の兵が下船し潜伏侵攻しておりました。いずれも獣人で手強い相手でしたが、こちらでも山の上から巨大な光球を確認し、船がやられたのを見て降伏して来ました。全て捕縛してこちらに連れて来ています。」
「船がやられ、それだけの兵でイブースでの任務遂行は成せないと踏んだんでしょうね。イセ様の光球が図らずも信号弾の役割を果たされた訳ですか。ありがとうございますイセ様。」
「どういたしましてですわ。」
ふふん!とドヤ顔で胸を張るイセ。あの魔力とのギャップがあって可愛らしい。
「カナリ様。只今戻りました。」
「シーさんお帰りなさい。そちらが例の彼ですね。」
「はっ!キサガナル第2帆船長兼獣人軍第3隊長のクルーガと申します。此度は我々兄妹の命をお助け下さりありがとうございます。侵略者側である以上、私はどんな処罰でも受け入れる覚悟です。妹が無事だっただけでも幸運ですので何なりとお申し付け下さい!」
跪き、丁寧な挨拶。話が進め易そうだ。
「ベルレ神からこの世界の調和の為に遣わされた加成剛志です。カナリで結構です。早速処罰の件ですが、皆さんが起こした侵略の責は全てキサガナル王に被って頂きます。あなた方には代わりに人手が足りぬガサに亡命して貰います。ガサで今興している『作物を増やす国家事業』の農夫や運搬者となり働いて貰いたい。侵攻したゴシマには置けませんのでその代替案として捉えて下さい。ですが国に家族があり、戻らねばならぬ人もいるでしょう。セボ提督と手分けしてキサガナルに帰還する班とガサへ亡命する班に分け、それぞれの行動に移って貰います。あなたにはガサ亡命班の長となり動いて貰いたい。」
侵略者に対してなんと寛大な処置。しかし‥‥
「委細承知の上、1つ質問を宜しいでしょうか?」
「何でしょう?」
「他にも獣人の長はいたはずですが何故私にその任を?」
「ああそれは‥‥。」
口元を緩め笑顔で俺は答える。
「私も弟を大事にしてきた人間だからです。」
クルーガは目を見開き、分かりました‥‥と一言頭を下げる。一粒の涙をこぼしながら。




