降伏と言伝
敵6番船(中央2つ目) カナリ・シー組
「流石お姉様ですわ。あれ程の質量の光球は私には無理です。」
平然と風魔法を2人に纏わせ、相手が攻撃して来るのを全て弾き、切り裂き、船を渡りながらシーは感想を述べる。
「遠慮しないとあれぐらい行っちゃうのかぁ あんなのがまたすぐ溜まってってなるならそりゃあ抑止力が必要になる訳ですね。」
「リューコさんから聞いているのですね。今は抑えていた頃が懐かしいです。リューコさんが今はそばにいるのならぶっ放した後も大丈夫でしょう。1番後ろの船の船員もいち早く海に飛び込んで難を逃れた様ですし、主幹の船もその救出に追われて戦闘どころではないでしょうからカナリ様にここからの交渉はお任せ致しますわ。」
「分かりました。引き受けましょう。」
ここの戦闘における全権を持つシーに依頼され、俺達は救助でごった返す敵主幹の船に乗り移った。
指揮官らしき男が中央に佇み、憔悴し切った様子で口を開く。
「降伏致します。私の身を如何ようにでもして下さい。これほどの事をしておいて恐縮ですがどうか部下の命だけは‥。」
頭を下げ懇願する男。
「何かを取りなす前に名乗りましょうか。ベルレ神の御使加成剛志です。」
「キサガナル国海軍提督 セボと申します。」
「セボ。今回の侵攻理由は海の歌姫の奪還と新兵器の実験と認識していますが合っていますか?」
「間違いありません。キサガナル王から7日間で完遂せよと命じられ事に及んだ次第です。」
「イブースまで攻めるとなると無謀というか舐め切っているというかという命令ですね。次に、今回導入された兵は獣人と先の戦の敗残兵とお聞きしましたがその理由は?」
「大きく2つです‥。1つはお気付きかもしれませんが捨て駒の側面‥‥もう一つは実験の為です。」
「今回の兵器の実験ですか。」
「はい、装置だけでなく獣人その物や魔道具との連携も含まれます。」
「獣人その物?」
「今回の兵器「アンテレパス」は魔法封じを目指した弱体化の装置です。その波動は魔人族、獣人の中でも子供と人狼族にのみ見られる傾向で子供である程強い事が分かったのです‥‥。」
「それでその装置の中に子供を入れたと‥‥。」
「はい‥‥私の息子も適性が見られその兵器の中に‥‥。」
「ふむ。息子さんのみを戦地に送り出す訳にもいかない上に、程の良い人質状態ですか‥‥提督として指揮を執る為と言いつつ、一緒に来る事で子を守り、親としての責任をも果たしたかったって所ですか。」
「その通りです‥‥。ですが魔法が解放されたとなってはもう息子は‥‥。」
セボは項垂れ涙ぐむ。
「あーその点はご心配なく。こちらの方の師匠に当たる方が全て海中で分解して救出済みと連絡を受けています。」
「ええええええ!!!?本当ですか!!?あの複雑で魔力を吸い出す装置が止まると自爆する設定のアンテレパスを‥しかも9個、海底でとは‥‥。」
「人間国全体の魔導技術開発局創設者で初代局長が対応されていましたのでね。大分手こずっていた様ですが。」
って言うか自爆とかやば。
「獣人の先兵作戦の目的に関してはどうなんでしょうか?」
シーが疑問を抱いていた部分を聞く。
「人狼族は雄叫びを上げる時に魔法封じの波動を少し出すからです。それと併用して最新の魔道具を持たせて出力差を測るのが目的でした。」
雄叫びに例の装置と同じ作用があり、魔道具の魔法が機能するか試したのか。本当に実験だな。
「キサガナルとしては実験も出来て姫も手に入る一石二鳥と考えた末の行動だったんですね。」
「そうです‥。今は人間族を舐めて掛かった結果がこの様になって返って来たと理解しております。」
「先程の喜び様じゃ子が解放された今、国に忠義を為す意思は無さそうですがどうなさいますか?亡命などなされますか?」
「私は妻も本国で人質に取られています‥‥子供だけでも解放して頂ければ‥‥他も希望者を受け入れて頂けるならと思いますが‥‥。」
「今人手がいる事業を興しています。そちらに手伝いに入り、生計を立てる事になりますがそれで良ければ。事件など起こせば今のこの状況に逆戻りするという条件付きで。」
「骨身に染みております。寛大な処置に感謝を。では部下に通達し、希望者を募りたいと思います。」
「遺恨のあるこの国には置けません。ガサに渡って農夫として働く段取りにすると通達を。このカラハマの方達に姿を見せぬ様に沖合いに待機し、後にガサへ連行します。人間族軽視の者が不要な行いに出ても困りますから。」
「承知しました。」
俺はふと山の方を見る。
「おそらく別働隊がイブースに向かいましたね?シーさん、後追いしているカシマさんの位置はおそらくその別働隊と鉢合わせる事になると思います。兵の方に伝令を頼み、無駄な交戦をせず捕縛する様お伝え願えますか?」
「分かりましたわ。すぐに。」
カシマさんの腕も見たかった所ではあるがまたお預けだな。
「セボ。これから本国に帰る事になるけども王に言伝を頼みます。」
「はい。」
『国の継続した証である子供を私利私欲に利用し命の危機に晒すなど言語道断。然るべき時に其方に出向き此度の件の清算をさせる。 首洗って待っとけ』
恐らく予想以上に怒りを覚えていたのだろう。殺気がだだ漏れだったようでセボは承知するも何処か怯えていた。
最後のセリフは日本の前世代に向けて。




