作戦立案と一球入魂
数分前 カラハマ東上空
「見えた。あそこが戦場だ。」
ゴシマの船が横向きになり、入江の侵入を防いで抵抗している。抵抗しているという事はシーさんはまだ無事である可能性が高い。
「しかしゴシマもキサガナルもお互いに魔法を使っている様には見えないっすね。もっと魔法の光や炎が見えてもおかしくないのに。」
「魔法封じの何かがまた働いていると考えます。私もシーもリューコさんに魔法が封じられた時の為の戦い方は叩き込まれていますが果たして戦力になるかどうか‥。」
「主どうする?」
「少し考える。」
上から見える船の位置は敵船が矢印を下に向けた状態、それを横に船を向けてゴシマが受けている形。スマホのダウンロードボタンのマークみたいな隊形だ。尖った部分は5隻、後ろに伸びる縦列が4隻の計9隻。ふむ。
「よし、思いついた。」
「早!10も数えてないぞ!」
「作戦は『一組一隻』 それを今から割り振る。傾注。」
皆カナリに注目する。
「まずメキはあの規模一隻なら1人で行けるだろ?左端の一隻を頼む。」
「ああ任せとけ!」
「次にハルエさんはその隣、ノクトちゃんと組んで蹴散らして下さい。」
「お嬢様と私を離すんですか!?」
「その通りです。理由を説明します。シーさんの奮戦ぶりを考えると魔道具補助があれど肉体強化の魔法を自身にかけていない状態ではここまで戦えていないでしょう。おそらく無効化ではなく弱体化の効果を敵は施しているのだと思います。」
「‥‥成程。ハルエの抑制魔道具を離して、敵の弱体化効果と入れ替え、遠慮なく魔法を使う事で普段通りの威力を得られる筈とお考えなのですね?」
「はい。ですが弱体化の具合が今は判断がつきません。よって右端をイセ様に担って頂き、その隣にチャルとツバサの組を配置します。視野の広いチャルを横に据える事で危ない状況でもすぐ駆け付け負傷の際には癒し手として救護に当たって貰います。いいね?チャル?そしてハルエさんも?」
「分かりました。チャル様、お嬢様をよろしくお願いします。」
「了解っす。戦いでは今回初見のツバサの動きの観察も兼ねるんすね?」
「理解が早くてほんと助かるねチャルは。」
「にゃーw」
「ツバサはチャルに付いてその補佐を頼む。武器は『それ』で良いんだね?」
渡したのは刀。倭刀の拵えで細身の刀身だがツバサが握る姿は様になっており、手にフィットしているのは他が見ても分かるほどだ。
「ええ。ご主人様に生み出して頂いた武器の中ではこれが1番私の技と身体に合っています。これで存分に期待に沿えるかと。あと私もチャル殿には及びませんが癒し手の心得もある為、いざとなれば回復にも当たれます。御承知下さい。」
「良いね、なお安心した。その力存分に見せてくれ。」
「はっ!畏まりました!」
「中央は俺が引き受ける。俺の武器は皆周知の通り、射線に入ると流れ弾が危ない。この位置なら流れ弾の先も敵船。よってこの配置で行く。でも最初は皆で中央の船に降りよう。ここまで頑張ってたシーさんを安心させてから各自の持ち場へ散開。これで行く。」
そして俺は指を差し、目標を示す。
「敵船の縦列の後ろから2番目。そこを目掛けて戦って行く様にしてくれ。流れ弾にだけは気をつけてね?」
「1番後ろではないのですか?」
イセが首を傾げる。
「指揮官がいるとしたらそこさ。指揮官を全周で守り、且つ全体を見回す事を考えたらね。後ろからの挟撃を防ぎ、前方の戦局が悪くなれば撤退の為に後方に移ることが出来る位置。つまりここさ。」
自衛隊の戦車教育の座学で相手戦車の配置のどこに初弾を撃ち込むか?というレクチャーがあった。その場で俺が今と似た様な理由で意見を出したら教育担当の中隊長からは絶賛された。後にその中隊長は富士の演習場で戦車の数を3倍に見せる作戦を見せてくれたものだ。今は退役しているが後進や隊員家族の為の活動をなされている。自衛隊と国に貢献し続ける隊長がいるというなんという安心感。良い思い出の1つで時折思い出す。
「戦況をひっくり返し、あそこに集合。では作戦開始!」
「「了解!」」
‥‥‥
現在 敵1番船
「さあて最初から全力で行きますか。」
イデアで生み出すのは機関銃のキャリバー50。対戦車榴弾砲LAMも考えたがカウンターマスト(後ろに飛ぶ火煙)がシーさんを直撃してしまうのでこちらをチョイス。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!
「「うわああああああああああああああああああああああ!!??」」
初めて見る兵器に戸惑い、障壁も生み出せないぐらい魔力が弱体化している者は一掃される。
「読み通り障壁ぐらいは出せる人もいるか。そちらはこれで相手しようかな。」
アイテムBOXから槍を取り出し、『装備は着けず』に突く。
パキーーーーーン!
「ぬぁあ!?」
そうする事で元々の障壁機能は槍に乗り、相手の障壁を相殺し貫通して突ける。魔法が飛び交って来るなら断然装着する方が得だが、こういう場面では役に立つ。
「うらぁああ!!」
「おっ大剣。」
人が減って使いやすくなったか。だが難なく槍で受け流す。
「その武器使うならクオカーフ王より強い技を身に付けて来い。」
そのまま薙ぎ払い海に落っことす。
敵5番船(左端)
「つっ強ぇ‥‥。」
「一応これでも一国の軍隊長張ってたんでね。主の見立てで船一隻を任された以上それには応えなきゃな。しかし皆魔法が無けりゃ大した事無いなぁ。これじゃあ魔法封じとか諸刃の剣だろ?何でこんな戦法だったんだ?」
「‥‥実験も兼ねてたんだよ。」
「実験?主も予想してたけど何かの装置のか?」
「予想済みかよ。頭良いなその主は‥‥。魔法を範囲的に使えなくする為の装置とその装置を無効化する魔道具の実験さ。」
敵3番船(右端)
「無効化する魔道具は完成しなかったがある事をする事で範囲的に使えなくする装置は一応の完成を見た‥‥。」
「揃っていないのにいきなり実戦投入とは‥考えなしの王様か大臣ですわね。」
魔法の縄で縛り上げ、イセの尋問は続く。
「まったくもってそう思う。今回の俺たちはかつての戦の敗残兵の寄せ集めとキサガナルで下級扱いの獣人で構成されていて、王の目的と新兵器の実験両方に使われる事になったのさ。」
「ご愁傷様ですが侵略で力を振るう言い訳にはなりませんわ。亡命は考えませんでしたの?」
「流石に海の上じゃな‥‥。それでも少し脱走した。俺みたいに人質を取られて参加している奴もいる。」
「人質‥‥終始穏やかではありませんわね。憤りしか感じません。」
「いよいしょっとーーー!!」
ザパァアアアアンと突如海から上がって来たのは何やら人を抱えた我等が師匠、ズク・リューコその人だった。
「リューコさん!ご無事でしたのね!」
「いやぁ手こずったけどねぇ。何とかなったよ。シーには悪い事したけどイセが居るって事は御使様も来てくれてるんだねぇ?」
「ええ中央でシーを守りながら存分に力を発揮されていますわ。」
「マルル!!」
突如尋問していた敵兵の男が叫ぶ!
「おお?この子の関係者かい?それは丁度良かったこの子の保護を頼むよ。」
イセは魔法の縄を解き男は少女に駆け寄る。
「マルル!マルル!」
「‥お父‥さ‥‥ん?」
「何やら訳ありな親子の再会ですわね?リューコさん、海の中で何があったのですか?」
「それはこれから御使様と話ながら説明するよ。」
そう言うと札を取り出し、カナリを呼び出す。
「ん?おっシーさんリューコさんから連絡ですよ。」
「やはり無事でしたのね。出て下さい。」
この船の敵をあらかた片付けた所で例の通信に使える札で連絡が来た。
「リューコさん。ご無事で何より。中央の船を制圧してシーさんといますが今どこです?」
「どうも御使様。今は右端の船でイセと合流した所さ。海の中に例の魔法封じの装置を探してたんだがね。その分解にここまで時間掛かっちまったよ。シーには悪かったと伝えておくれ。」
「‥‥破壊ではなく分解‥ですか。」
「相変わらず察しが良いね。破壊するならそんなに時間は掛からなかったんだけどね。実はその装置には子供が使われていたのさ。」
!!!??子供‥‥!?
「どうやら特殊な子供の声の中にある魔力制御になる音波の増幅と動力源である魔力を子供から吸い出し、魔法を抑える波動を周囲に放つ装置の様だ。その子達を全員救い出す為一つ一つ手作業で分解して陸に上げるを全隻分やってたら時間を食っちまったのさ。まったく年端も行かない子供に酷い事するもんだよ。」
「リューコさんお疲れ様です。全員無事に救出出来たのなら何よりです。了解致しました。この後はイセ様と共に行動して下さい。イセ様には『遠慮なく行って良し』とお伝えを。」
「分かったよぉ。ではまた後で。」
プッ
「聞いての通りですシーさん。ここからは魔法が存分に使えます。遠慮なく行きましょう。」
「かしこまりましたわ。今のを聞いてここまでの鬱憤に更に憤怒を感じます。正直抑えられる気が致しませんわ。」
「同感です。」
「という事だよイセ。遠慮なく行って良いそうだし、一丁あの船に目掛けてブッ放すってのはどうだい?」
「良い提案ですわね!」
グモモモモモモモモ!!!!
対角線上にある1番後方の船に向けてありったけの魔力を込めて光球を作り出していくイセ。横で敵側親子はひぇぇぇと酷く怯えている。
「身体壊さない程度にはしとけよー。」
「ええ私から離してそのまま操ってぶち込んでやりますわ!」
敵4番船(左から2番目) ハルエ・ノクト組
「あれは!?お嬢様?あれ程の光球を作り出すと言う事は魔法封じの装置の対処が終わったようですね。ノクトさん!私達もそろそろ向かいましょう!」
「グルゥアアアアアアア!!!!!」
黒炎が吹かれ、残っていた兵を焼き、消火の為皆海に飛び込んだ。
ハルエはノクトに飛び乗り、上空へ舞い上がる。
敵5番船(左端)メキ
「おーすげーすげー。あんなのぶつけられたら一溜まりもねぇなー。容赦無しじゃんお嬢様。」
あらかた双剣で倒したメキは空中で呑気にイセの光球を鑑賞する。
「あんなの平気でブッ放す奴がいるのかよ‥‥。」
「魔力はあんたらも戻ったんだろ?あのお嬢様と対決してみちゃどうだい?」
「「無理!」」
「じゃあ大人しくしてろい。捕虜になるか逃げる準備かしときな。」
敵2番船(右から2番目) ツバサ・チャル組
「うっひゃー凄いっすねーこっちまで眩しいっすよ。」
「あれが魔法を抑えられていない状態のイセ様ですか‥‥敵には回したくないですね‥‥。」
ツバサの剣技が冴え、チャルがその隙に捕らえるを繰り返し、7割ほどの捕縛をやってのけた。残り3割は海に飛び込んだか後方の船に逃げ仰せたかだ。
「捕縛した皆の処遇は後で言い渡すっす! じゃあツバサ、集合場所へ行くっすよ。」
「承知!」
「では行きますわよ。」
直径80メータはありそうな光球が船上に輝き、戦域全てを照らす。
「飛んでっけー♡」
最後尾の船は跡形も無く消し飛んだ。
知り合いに描いて頂いたイセが可愛くて消し飛びます(笑)




