持久戦と一組一隻
船上では白兵戦が続いている。ゴシマの兵士達はシーを筆頭に敵船先頭の3隻に広がり、その侵攻を食い止める。敵船に乗り移った兵士達はリューコから魔道具を与えられ、肉体強化と障壁の効果を得て一層躍動し、敵兵を倒していく。
「(一体どれほど魔道具を作られて来たのでしょうあの人は‥‥。)」
シーもその装備を身につけ、昨日より戦い易い環境でその戦線を維持していた。だが魔法はやはりかなり抑えられていて、放てない訳ではないがさして意味を為さない。その為魔力を自分の足の速さ強化に限定し、立ち後れる兵の支援に回れるように戦場を見渡して戦っていた。数で劣るこちらが善戦しているのはこれに支えられている部分が大きい。
「(魔法が使えない環境でも戦えるようにリューコさんに鍛えられましたが、流石にこれをいつまでも維持は出来そうにありませんわね‥‥。なるべく早くお願いします!リューコさん!)」
同刻 海底
「こんな物が引っ付いて来てるとはね‥‥。」
敵船を調べる内、船尾の方から鎖が伸びているのが見えた。それを辿って行くと強固に固められた球が繋がれており、その球から発せられている振動と音が、魔法使いが嫌がるランフォーの鳴き声を聞いた時にそっくりな感覚をこちらに引き起こした。 これが原因なのは明らかだ。さっさと破壊しようと思ったがその手は止まる。
「こんな事‥‥出来るもんかねぇ‥‥。」
小窓から見えるその球の中には‥‥子供。 繋がれ、そこから力を吸い取られてこの振動と音を作り出しているようだった。
「これは‥‥ちょっと時間が掛かるよぉシー。踏ん張っておくれ。」
「はぁ!!!」
ビカカカカカカカカカカカカカカ!!
「「ぐあぁぁあ!」」
「くぅ‥ 。」
時刻は中天を迎えている。4時間近くは戦い続けている計算だ。流石にここまで駆け付け、2日間の白兵戦連戦の疲労がシーを襲う。
「(遅い‥‥いくらなんでもリューコさんにしては遅すぎる。何かしら知らせがあってもいいのにそれも無い。 まさか何かにやられた?あのリューコさんが?)」
疲労によって不安に駆られたかそんな考えが頭を過ぎる。だがやる事は変わらない。目の前の敵を討つ。それだけだ。
ガクッン!!
魔法で加速させていた足に疲労が来て思わず膝をつく。
「やっとへばったかこの女。ここで一気に畳み掛ける!!」
「うおおおおお!!」
「私はこの国の守り手‥‥シー・ザ・カイを舐めないでくださいまし!!」
再び鎖鎌一閃。
「!!!!!」
しかしあちらも目が慣れたのか躱されて分銅側を絡め取られた。
「今だ!やってしまえ!」
「いや、やるのはこれから。」
シーの目の前にいた敵は全て倒れ、代わりに5人の背中が視界に入った。
今この状況で最も信頼出来る背中が。
「良いねシーさん。覚悟の一言しかと聞き届けた。この戦、ここまで耐え抜いた貴女の勝ちだ。」
御使カナリ 参戦
「何だ!?てめえら!」
「こいつ今何しやがった!?」
「うわぁ時代劇でしか聞いた事ない台詞ー。」
「ジダイゲキ?なんだそりゃ?ふざけてんのかてめぇ!!」
ああそうかこちらにはテレビ無いわ うっかり。
「あーごめんこっちの世界の話。じゃあ皆、さっきの割り振り通りによろしく。」
「「了解!」」
敵5番船(左端)
「どうした?中央の船が急に静かになったぞ?」
「いよいよあちらさんを仕留めたのか?」
「アタイ達が来たからだよ!」
滑空と同時に縁にいた数人を海に放り込むメキ。
「うわああああ!?」
「そっ双翼の竜姫!?何でここに!?」
「おっアタイの事知ってんのかい?どっかで戦った事あったっけ?」
「バルでの戦いでな!だがお前はガサの兵士だろう!なぜこの戦に加担する!しかも人間族側に!!」
「悪いね。今は戦に負けてある人の従者になったのさ。その人の命令で動いてる。」
「お前が負けたぁ?!どんな奴だよそいつ!?」
「ベルレ神の御使、そして最高の主さ!!」
敵3番船(右端)
「中央の船が静かになったと思ったらいきなりこんな奴が‥‥ なんで‥なんで『魔法が使える』んだ!!?」
「確かに全開とは行きません。出力は3〜4割といった所でしょうか。『いつもより負荷が重い』ですわね。」
普段なら12個の魔法を無詠唱だが今は4〜5発ほど。甲板を闇に変え足場を奪い、残り4つの光弾を相手に当て仕留めて行くイセ。
「3〜4割って‥普段どんな魔力量なんだよ!装置の意味がねぇ!」
「おや?何かこの現象の秘密を知っている様ですわね。その情報、いただきますわ!!!!」
敵4番船(左から2番目、1番船と5番船の間の後方)
「りゅっ竜!?」
「なんか炎吐いてね??えっやばい?」
「お嬢様と離れるのは正直不安ですが‥‥ノクトさん。相棒役を務めさせて頂きますね。」
「グルゥ!」
敵2番船 (右から2番目、1番船と3番船の間後方)
「獣人族と人間族の兵‥‥?」
「両方女?何しに来たんだ?」
「あんたらを倒しに来たっすよ。」
「久々の戦場。勘を取り戻させて頂きます。」
「人間と獣人風情が粋がってんじゃねぇ!!」
ドサッ‥‥‥
「嫌っすねぇ種族差別は聞いてて気分が悪いっす。」
「然り。特に相手の実力も測れない技量の者であれば尚更ですね。」
ツバサの刀一閃、掛かってきた兵はその場に切り捨てられた。
「じゃあ行くっすか。どんな腕か確かめさせて貰うっす。」
「存分に。恩を返しつつご主人様の眼鏡にかかる者である事を証明したいと思います。」
「その息っす。」
再び敵1番船 (中央)
「皆所定の船に着いたみたいだな。」
「カナリ様。ありがとうございます。」
「御礼はここを切り抜けてからにしましょう。ところでリューコさんは?」
「魔力を封じられる原因を海底に感じたそうでそちらの調査から戻られません。何か手こずるような事があったのかと‥。」
「そういう作業ならあの人が最適ですね。まあ貴女達の師匠がそう簡単にやられはしないでしょうし、愛の力で解決して戻って来ますよ。」
「フフッwそうですわね。」
「ではここからは安心して待っていて下さい。よく頑張りました!シーさん!」
俺はニカっと笑って敵に向き直る。
「はい‥‥あとはお任せします。」
シーはカナリの外套を羽織り、その場に座り込む。
「待っててくれるとは存外優しいんだね皆さん。」
「ぬけぬけと‥‥てめぇ何しやがった!こっから先に進めねぇし動けねえぞ。」
「そうですね、解除しましょう。」
俺は堰き止めに使っていたジャリ糸を外し解放する。
「女の子を苦しませる悪い奴にはお仕置きしなきゃね。」




