作戦と海戦
翌日早朝 カラハマ 兵詰め所
「ご協力に感謝致します。リューコ様。」
「様なんてよしてくれよぉ、私は愛弟子を助けただけさぁ。」
手を振ってリューコは謙遜する。
「お二人で帆船の撃沈。残った数隻も引き返して行きました。これで侵攻は終わったと見ても良いかと。」
「いえ、そんなに甘くはないと思います。現キサガナル王の執着具合を考えるとすぐに次を送って来るか、既に上陸した者が都市に向かっているとみた方が良いです。即時検問を敷いて都市までの道を当たらせる事が賢明かと。」
「シーの提案に賛成だねぇ。私達は次に備えて構えておくべきだよ。」
「承知。検問の件は早速イブースへも伝書を送ります。次への対策は?」
「あの船に乗った時、魔道具は平気だったけど魔法は上手く使えなくなったのさぁ。だから肉弾戦にせざるを得なかったんだけども、どうもその制御してくる存在が遠くの『下から』の感覚だった。おそらく車輪船の下に魔法を抑える魔道具の類を隠してる。私ら魔法使いには天敵。魔法使いがいると情報を得たあちらはすぐに移動できる車輪船で態勢を調えて計画を立ててくる。勝算ありと踏んだなら自ずと次は早まるさね。」
「次は獣人兵よりも魔人族兵が多くもなりそうですな‥。」
「『魔法を抑制する魔道具の影響を受けなくなる魔道具』があるのならそうなるだろうね。」
こっちは魔法を抑えられてあっちは使えるとなればやりたい放題だ。ならば一回撤退したのは何故か?この最初の襲撃自体が『実験』だったと考えると辻褄が合う。獣人兵が捨て駒の様だったのは上手くイブースまで攻め込めたなら儲け物、悪くても自分達の実験の壁役に。そう考えて先鋒を任せたとしたら胸糞悪い話だ。船員の揚収も程々に撤退したのもその為だろう。
「捕虜はどうしていますか?」
「一部暴れておりましたが皆牢に入れております。今回の自分の役割を理解した者から静かになって行きました。」
「その者達から情報は?」
「やはり先鋒を任されただけで魔道具に関しては最新を持たされただけ。魔法を封じる魔道具に関しての情報は得ていませんでした。」
「では作戦としてはまず魔人族をとっ捕まえる他無さそうだねぇ。すぐ攻めてくるだろうからそれはこっちでやるよ。」
「え!?よろしいのですか?」
「私が行かなきゃあ、魔道具の事はどうにもならんぞ? それとも私じゃ不服かい?」
人間族全体の魔法学会の魔道具技術開発局 初代局長がその任を担ってくれるなどこの上ない提案で不満なんてあるわけが無い。
「不服だなんてとんでもないです! では我々は敵の侵攻に耐え、魔道具に関しては其方にお任せ致します。我らの力が至らず、ご迷惑をおかけ致します。」
隊長は頭を下げる。それと同時に急報がきた。
「敵船がまた現れました!!昨日より車輪船が増え、合計9隻です!!」
予想通り早速のお出まし。朝駆け夜討ちは戦の基本と改めて思わされる。
「シー。恐らくというか最初から魔法は使えない気でいなよ。私が探って破壊してくるまで教え込んだ物で耐えておくれ。」
「承知しましたわ。リューコさんの手腕を1番に知るものとしてその任を拝命致します。」
「武運を祈るよ。」
「ええ。其方もご武運を。」
2人は拳を合わせ、作戦を開始する。
キサガナル軍 船上
「こうも獣人があっさりとやられるとはな。予想外であった。」
キサガナル軍 提督 セボはキサガナルが持つ車輪船の半分を導入し、戦の足を早めた。キサガナル王が今回の作戦に提示した期間は7日間。既に3日目となり、首都イブースまでを考えれば猶予はない。
「今回の新兵器によって魔法は使えぬこの作戦。獣人兵の遅行は考慮していたが、よもや人間族がここまで抵抗するとはな。あんな船を持ち上げ、嵐と雷を引き起こす程の魔力を持った者が2人もいようとは‥‥。」
1つため息を吐き、心を冷静にした所で気合いを入れ直す。
「よーし!!昨日は遅れを取ったが全速力で取り返す!我らが王の命を果たすのだ!」
「おおおおおお!!」
セボの檄により兵達は士気を上げる。そのまま昨日潰された船の残骸を避けながら入り江の領域までやってきた。
「なっ!?」
突如残骸の影から矢が大量に飛んでくる。ゴシマ側の兵が潜み攻撃してきたのだ。
「右の3隻で応戦だ!放てぇ!!」
お互い魔法が使えぬ状態では原始的な交戦にならざるを得ない。その3隻に応戦を任せて残りは岸に向かう。
「行かせませんわ!」
それを遮るようにゴシマの船も横向きで相手に対峙する。シーは昨日と同じく白兵戦にて相手を食い止めに掛かり、敵船上へ降り立った。
「それでは、参りましょう。」
「おおおおおおおおおっす!!!!!」
こちらの士気も上がっており両者は激突する。
その頃 戦域の海中
「(うーん 船底とかにあると思ったんだけどなぁ)」
リューコは風魔法と水魔法の併用で作った潜水用の魔道具で海中に空気の膜を張り、近づいてきた敵船の船底を調査に入った。船底設置の予想は外れ、船体を再度調べるがどこにも魔道具の反応はない。
「(この船には無いだけか?いや‥これは‥‥更に下‥‥?)」
感覚を頼りに更に深く潜る。
「(これは‥‥!!)」




