地図読みと役割分担
戦の報が入り晩餐の空気が一変した。ナーカス王は続けて情報を話す。
「キサガナルの奴らはどうやら先のガサとクマポンの戦の話を聞きつけ、ゴシマが協定により出兵し手薄になる事を見越し、好機と捉えて仕掛けたようだ。早さから考えて元々準備しておったのだろうが時機が重なったのだろうな。海と陸両方から攻めている様だ。」
「妾の仕掛けた戦が引き鉄となってしまったのか‥。」
サウラは眉を顰める。
「サウラが気に病むことはない。サウラの起こした戦はガサ国の為を思ってやった事。奴らはそれに便乗したに過ぎん。その戦の責任だけ負っておらねばキリがないぞ。」
その通り。ただサウラの優しさを思えば気持ちは分からなくはない。
「カナリ様‥‥。」
「やはりシーさんが気になりますか。俺もです。」
イセは自分の妹分であり親友の安否を思って神妙な顔になっている。ここは俺も動く所だろう。
「ナーカス王。晩餐はこの辺りにしてその戦の情報を把握されている分を教えて頂けないでしょうか?」
「御使としての使命を考えれば当然気になるか‥‥。」
「友の命も掛かっているかと思われますのでどうか。」
ふむ‥とナーカス王は少し残念そうな顔をした後口を開いた。
「良い。今日はとことん楽しませて貰ったしな。別室に皆集まれ。」
食事は片付けられ、皆で会議室なる所へ。
「まずはこれを見よ。」
広げられたのは初めて見るこの世界の地図。海に囲まれた太い半月状の1つの大陸に7つの区分が為され、クオカーフとオタイオ、キサガナルとゴシマには小さい島が点在しているのが分かった。
「この街があるのはここ。そして今戦争の起きておる場所はここだ。」
ほぼ対角にある国の更に海側、北から南下しての侵略だ。
「カナリは元々国の守り手だったのだろう?この状況をどう見る?」
「攻め方に関しては特産品や資源を奪うのは後回しにして船によって侵略し、まず土地の確保を狙っていると考えていますね。海から牽制し、陸の道を通す。一般的な攻め方だと思います。ただ侵略理由については懐疑的です。」
「何故そう思うのだ?」
「海での戦に慣れている自信なのかもしれないですが、人間族の国を攻めるだけならガサと一時的に手を結び、陸続きのクマポンを一緒に侵略した方が、船を動かしてクマポンを跨いだゴシマを攻めるより労力が格段に違うからです。」
地図を指差しながら兵站の労力計算をしてもやはり割に合わない。つまり、そこから導き出される事は
「ならばそのゴシマにキサガナルにとって必要な物があり、その所在は曖昧な為、とりあえず土地だけ確保しそこから捜索にあたる。その気概で作戦を立てて陸の北側から侵略兼捜索隊を送り込んで人間族を痛ぶり楽しみながら兵士の士気を上げ進んでいると考えられます。神器の類か要人か等は分かりませんが、地形と攻め方からその様に読みますね。」
「地図を見ただけでそこまで読むか。流石だな。」
「人の営みは地形と気候に左右されます。地図を読めるのは人の営みを読む事に繋がるんですよ。」
地図帳は友達。地理は学年トップ、数学下から5位となるぐらい教科の興味に差があったがこの持論と能力は投資などにも役に立つ能力なのだ。営みを先読み出来る様になれば気候変動の際にどのジャンルの株が上がるかなどの予想が出来る。
「であるなら‥‥おそらく要人であろうな。彼奴は大層ご執心だった様じゃからのう。」
サウラは何か思い当たる節があるのかな?
「キサガナルの王にとって何か重要な人物がいると?」
「海の歌姫と呼ばれる女子がおっての。キサガナルにあるとされる海底の遺跡への道を開く鍵となる存在という話じゃ。話自体は各国で出土した古文書の類いに多数記されておるから信憑性は高いんじゃが、キサガナルの王 テンボスはその遺跡話の執着が強い上、その歌姫を王族訪問の時に邂逅した際に一目惚れしおった様じゃ。」
「成程。前もって準備していたと思われるというナーカス王の考えにも通じるものがありますね。」
そこで俺は袖を引かれ、心配で何か焦っている様子のイセがこちらに訴えかける。
「カナリ様‥‥シーが‥‥。」
「ええ、分かっていますよ。飛行魔法の使い手であるシーさんは知らせを聞いて文字通り真っ先に飛んで行って戦線に参加するでしょう。それを助けたいんですよね?」
「それはそうなのですが‥その歌姫というのは‥‥おそらく‥‥。」
イセはその正体を明らかにする。
「海の歌姫と呼ばれているのはライフ・パーク・カイ。 シーの‥‥お姉さんですわ‥‥。」
なんと。本当に姉妹がいらっしゃったのか。
「尚のことシーさんは無理しそうですね。ではナーカス王。申し訳ありませんが私共は其方に向かわせて頂きたく思います。」
「そうか。今の地図読みを見てカナリの戦略眼や戦術を我も観戦したい所だが、王がその場に行くわけにも行かぬ。後の語らいを楽しみにしておこう。」
強さを認めたら話の分かる御仁なんだな。戦好きとして色々と戦での動きについて話もしたかっただろうにあっさりと引いてくれた。あれ?今日一日の事思えばあっさりか?
「では僭越ながら役割分担をさせて頂きます。まずサウラ女王。」
「おうさ。」
「サウラ女王は引き続きナーカス王とジャー油研究製作費用等の諸々の打ち合わせをお願いします。ホタ君はその護衛。そして、ポーゼ。」
「はい!」
「君も護衛に残り、同時に例の一族の召集を行なって欲しい。打ち合わせが済み次第ガサへ戻って一族をベルレ・ガルアとソーア組に振り分けて活動を開始。人間族軽視行動が見えた場合は処分する旨は徹底してね。よろしくね。」
「了解です!ご武運を!」
「ツバサはこちらに合流。俺に何か返したい思いを早速果たして貰う。元戦士の力を見せて欲しい。」
「はい!かしこまりました!」
「メキ。ノクトちゃんで送って貰う場合の戦場までの日数は?」
「3日半って所だ。休ませないとこの距離は難しい。」
「了解。それで行こう。俺、チャル、メキ、イセ様、ハルエさん、ツバサの6人は戦場に向かう。」
「はい!」
「サウラ女王。今からガサに連絡を入れると同時に『ベルレ・ガルア』にも連絡を入れて頂けますか?文書はすぐにお渡し致します。」
「イセ殿の事もあるし当然じゃの。心得たぞ。」
「よろしくお願いします。」
もう一つ『理由』がありますが。
準備を終えて日付が変わる前に出発。俺はノクトちゃんの上で仮眠を取らせて貰い、寝ている間はチャルがのしかかりながら押さえて落下防止。他のみんなもそれぞれ腰にしがみつき、側から見たらムカデごっこみたいな形でゴシマへ向かう。 良かった空で。
私の右の頭がおそらく内部で損傷 病院を検討します




