大試食会と2つの知らせ②
「続いてはポガポガとブルガンジーの合い挽き焼きでございます。ギネマのソースをお掛けになってお召し上がり下さい。」
続いてはハンバーグ。焼き加減も良く、塩の塩梅も丁度良い。先程から感じる海洋国家な故の塩の取り扱い方は目を見張る物がある。とても美味いがジャー油と合わせる事で塩分過多にならないように注意が必要と後で注意喚起しておこう。
「主〜こっちのケチャの料理も美味いぞ。どう?」
「頂こう。」
ケチャ、つまりトマトを器にした中に入っていたのはモミージのもも肉とチーズ。焦がされたチーズの香りとトマトの焼かれ具合が良い。ケチャの酸味とモミージが合う。イタリアンな料理だ。
「この城には良い窯があるのですね?」
「はい。断熱性の高い土を丁寧に乾燥させた煉瓦を組み上げて作った窯がございます。大小合わせて10窯。バクス粉の食材をふっくら仕上げるのにも重宝しております。」
「良いですね。あちらの言葉で遠赤外線効果という現象です。熱伝導率が素晴らしく、美味しく仕上がるんです。焦がさない為の見極めは難しい所ですが。」
「エンセキガイセン‥?でございますか聞きなれない言葉ではありますが、美味しくなるのであれば使いこなし、精進に努めて参りたいと思います。」
「窯があるならこう言う料理を作るかなぁと私なりの腹案もあります。また後日にでも。」
「生き甲斐にして励みたいと思います。」
んな大袈裟な。
「これは麺がうどんとやらに似ておるが麺が細いのう。」
サウラが気になった麺はおそらく乾麺。先程のセサとビーネと何かの出汁を合わせた冷麺の様な麺だ。本来の冷麺なら大好物で自衛隊時代に2日で京都大阪23店舗食い歩きツアーするぐらいだったがはてさてお味は‥。
「‥この麺は練る時に石を砕いた水を使っていますか?」
「ええ!?何故分かるのですか?」
「やはりですか。石の上澄み液を繋ぎに使い、麺のコシを強化したんですね。出汁に使われているのはおそらく煮干しと海藻も少しあるかと。」
「仰る通りです。失礼やも知れませんがあちらの世界でもこの様な物があったのでしょうか?」
「はい。私の好物の1つでした。なのでもう一つコクを出す為になんですがこちらのジャー油を出汁に一皿あたり大さじ2杯ほど加えてみて欲しいです。すみません、手っ取り早く現物をお出し出来れば良いのですが残念ながら魔力が‥‥。」
「とんでもございません!早速こちらで試してみますのでお気遣いなく!」
ここでこちらからも食事の提供。
メニューはランフォーの串焼きと酢ポガだ。
「ではナーカス王、毒はありませんが毒見を経てこちらの品をお試し下さい。」
「これは何の肉だ?」
「ランフォーでございます。」
「ランフォーだと!?あの厄介な魔物を仕留めて食事の品にしてしまったというのか‥‥。」
やはり魔法封じと飛行能力を持つランフォーはこちらでも厄介者の様だ。魔人族の魔法封じられたら難易度爆上がりだろうしなぁ。
「我が国でも捕獲して使役している隊はあるがその苦労は絶えぬ。おそらく先程の銃とやらで仕留めるのだろうがあの厄介者をこれほど容易く提供出来る程か‥。」
毒見が終わり、串焼きに齧り付くナーカス王。
「こんなに柔らかい肉なのか!ペッポの実も利いて肉の旨味が溢れんばかりに口に広がる!」
「ソーアの戦の後にも提供致しましたが、皆さん活力を取り戻された様子でした。」
「この味なら納得いく話だ。続いての品は?」
「あちらの世界での好物を再現してみた『酢ポガ』になります。」
「ふむ。頂こう。」
調理長も毒見役もナーカス王も目を見開く。
「美味いな!!揚げたポガポガがこのとろみのある汁に絡みあって、味はジャー油と酸っぱいのはビーネか?2つが丁度良い塩梅だ!野菜の歯応えも残しつつ食感も変化があって良い!好物なのも頷けるな!」
「うちの迎賓館の調理長もお気に入りの料理なのじゃ。取引の時にでも技術交換会を開くと良いかもな。」
「迎賓館‥確かドーレルとか名乗っておった女子だったな。煮込む料理が主であったのは覚えているぞ。」
「カナリに教えを乞い腕を上げて行っている所じゃ。今後の取引での来訪などでいずれ食す機会もあろう。」
「それは楽しみだな。アラチ、その時はお前もついて来るが良い。技術を学び、国に還元させるのだ。」
「有り難き事です。承知致しました!」
アラチさんは目玉が爛々だ。
「カナリよ。そちらの世界ではこの様な物をいつでも食せるのか?」
「そうですね。対価を払えば割といつでもお店で食す事は出来ます。」
「これが一般化しているのか!まさに食の都だな!」
「私のいた国は食に妥協しないのですよ。他の国では飢饉などで苦しむ国もあります。 有事の際の糧食活動として私も携わって腕を磨いていたんです。実家では農業から製造、販売等色々と営んでいたもので元を作る所からやって来たというだけの話ですよ。」
「正に腹が減っては戦は出来ぬ話だな。生きる根源から物事を見つめる姿勢も素晴らしいと思うぞ。」
「ありがとうございます。常にそうありたいと思いますし、安全な治安、やり甲斐のある仕事と美味い食事、良き伴侶、そこに楽しめる催し物等が伴えば必ず人は笑顔になれると信じています。その考えに準じて私は活動します。」
「うむ。」
ナーカス王は頷くが暗に戦を仕掛けるなと言っているようなものなのだが伝わっただろうか? というか『良き伴侶』の言葉をブツブツと復唱してる女性陣何?
「陛下!」
そこに何かを携えて兵が1人入って来る。
「食事の席だがどうやら火急の知らせな様だな‥何だ?」
ナーカス王は耳を傾けてその内容を聞く。おもむろに1つ溜息を吐き、こちらに向き直る。
「2つ知らせが入った。一つ目はお主らの探している男の所在が明らかになったようだ。捕虜にはならず、逃げおおせた様で、クオカーフとオタイオの国境沿いの島にて漁師が見たという情報が上がっている。どういう経緯でそこに至ったかは分からぬが強い魔獣がいると言われている島だ。我々も放置している様な島だから隠れて生き延びる為にそこで暮らしているのかもな。」
「感謝します。そちらに赴き、連れ帰りたいと思います。」
「その様にせい。」
王の承諾を得て、リューコさんの婚約者はミヤーザに連れ帰れそうだ。イセ達もやったと手を合わせて喜んでいる。一方でナーカス王の表情は先程の食事の喜びはどこへやら、悩ましく眉間にシワを寄せ目を閉じて話し始める。
「そしてもう一つ。」
一同が静まり返りその言葉を待つ。
「キサガナルが‥‥ゴシマに戦を仕掛けた。」
ゴシマといえば‥‥ イセの表情が一気に曇る。
「シー‥‥!!」




