修練場とズルい女
なかなかペースが戻らずですが一気に7000PV達成!何とかペースを戻して行こうと思うので今後とも宜しくお願いします。
「大丈夫かカナリ?」
別室でチャルに右足の治療を受けながらいるとサウラが心配そうに声を掛けてくる。
「魔力限界の怠さはありますが足の方はチャルの魔法でもう大丈夫です。応援ありがとうございます。皆もありがとう。」
「いやぁご主人がほぼ1人でここまでやっちゃってお礼まで言われたら恐縮っすよ。ご主人の成果っす。」
「うーむ正直これで良かったのかと思う所はあるんだよね。結局最後は兵器で脅しただけみたいになっちゃったし。」
「観客にはそう捉える者もいたかも知れんがカナリはナーカスを楽しませるという事で言えば満点の働きをしたと思うのじゃ。誇らしいぞ。」
「その通りで‥
「その通りだ。」
イセの言葉を遮って入って来たのはナーカス王とお付きの者達。先程の謁見の間にて毒見役を買って出た役人もいる。
「我を楽しませて納得させる事には大いに成功しているぞ。王が笑顔である事もまた領民にとっては喜ばしい事だ。誇るが良い。」
その場に立って礼をする。が、右足が痛み苦悶の表情をする事に。
「あたた‥ 。」
「良い良いそのままで。治療を続けよ。」
その言葉に甘えて着席で治療を続ける。
「その傷の治療が終わったら先程の受け流しの技法をまた見せてくれ。修練場は空けてある。」
「なっ!?この状態のカナリにまだ負担を強いるつもりか!」
「そういきり立つなサウラよ。カナリ、お主ならこの提案の意図が分かるのではないか?」
「初めて目にした物や習得したい物を身体に反復学習させるには出来るだけ早い方が効果的。そして疲労をしている時にこそ無駄な力無く動きを学べて体力の限界値を上げる事にも繋がる。それをしたいって事。それを以て王になっても向上心と純真さを持ち、民を惹きつける挑戦を続ける為かと。」
「やはりお主は良い。益々気に入ったぞ!」
「まあその信条を他の人にぶつけるのは我儘だなぁとは思いますけどね。応えられるのが私しかいない以上、ドンと受け止めてみせましょう。チャル、ありがとう。ちょっと行ってくるよ。」
「大丈夫っすか?」
「ナーカス王も左足を股裂きで膝の内側に損傷があるまま来てる。その状態でやりたいんだろう。」
1つ息を吐いてチャルは承諾した。
全員で修練場に移動し、今回の解説と練習会の開催だ。
「あの槍での受け流しの技法は見事だった。まずはそれの解説を頼む。」
「分かりました。どの武器でも共通なんですが繰り出す技には『起点』と『終点』があります。上下、左右、前後の違いはありますが正面から見れば『点と点を結ぶ作業』なんです。」
「起点と終点か、ふむ。」
「その起点か終点の間の線に自分の身体が入れば斬られるわけですので、その線を『湾曲』させ自分の身体を斬らせない方向に促すわけです。」
「なるほど。起点から終点に向かう際の力を利用する為に沿わせながら湾曲させるのだな。」
「その通りです。自分のより大きな獲物であってもそれに合わせられれば重さによる差を感じずに受け流せるわけです。」
「突きのような前後の攻撃ではどうなる?」
「武器の頭を叩きます。同時に自分の体の軸を左右どちらかにずらし、ずらす方向は相手の背中。背後取りというやつですね。そのまま背や首、持ち手を狙っても良いのですが次に横薙ぎが来た場合に備えて足運びでまた正面に構えて起点と終点を捉える体勢に戻るのが良いです。」
「摺り足で頭の高さも変わらずまた正面に向き直るのが見事だな。我が大剣でも捉えられぬ訳だ。どれだけ基本を叩き込んだのやら。」
「そこは反復と想像力で補いながら鍛錬に努めていましたので。」
地獄の中学時代と自衛隊時代の銃剣道、徒手格闘の訓練で散々やりましたからね。躱せないと顔や腕に青アザ作りまくる事になる。
「しかしその脚を斬った時に違和感を感じた。この動きが出来るのなら躱し切れない事があろうか?とな。」
「単純に威力を流し切れなかったのもありますが、あの一瞬だけは1対多の想定の動きが反射的に出てしまい、右足を残してしまいました。ナーカス王だけを見ると言っておきながら申し訳ない。」
「そういう事か。練習しすぎで反射で対応を誤る事もある、か。身体に叩き込む加減も難しいな!」
そこからは反復練習。円運動や起点の捉え方、足運びを繰り返し、2時間ほど経った頃、大方習得して貰えたようだ。
「そろそろ辞めにするか。いやあ良いものを学べた。食事の用意をさせるから先に風呂でも入ってくるがいい。」
「そうさせて頂きます。」
という訳で使用人に連れられ俺は城の風呂へ。
「風呂もデケェなぁ‥。」
浴場の広さにテルマエ◯マエの映画を思い出して掛け湯をして浴槽に入る。
温泉が沁みる。長旅の疲れとこれまでの緊張を解すのに丁度良い心地良さだ。湯のある所に争いは起こらぬという言葉を感じさせてくれる。いかん眠くなってきた。
「カナリ様。」
「え?おわっぷぅ!!」
突如聞こえてきた女性の声に驚き、俺は浴槽内で滑り沈みかける。女性の正体はツバサ。風呂の世話をしに来たらしい。
「いや。1人で入れるから!」
「いえ他の使用人から背中を流して上げなさいと言われまして(という体で行こうと思ってやって参りました)。」
「今回の交渉でツバサさんは俺の管轄になりましたので俺の指示に従って貰います。風呂の世話は良いので外で待機してて下さい。」
むぅーと口をつぐんで退室するツバサ。その背中に一声だけ掛ける。
「やっと、帰れるよ。」
ツバサは一瞬立ち止まり、小刻みに震えながら
「‥‥ずるいです。そこまでしてくれるのに私には何も返させてはくれないなんて‥‥。」
そう言ってそのまま浴室を出ていった。
ズルいっていう女




