ナーカス王との戦い② 武器戦と歓声
「ぐぅううう!!?」
自分の身体が宙に舞った驚きを一瞬で我に返し、地面に背中を打つも転がった直後に足を伸ばして踏ん張り起き上がるナーカス王。
「ぐぅう‥今のは何だ?当て身か?」
食らった本人は何が起きたのか分からない状態だ。観客も皆息を呑んで静まり返ってしまった。
「すごいっすねー‥見様見真似であそこまでやれるもんすか‥イメージ力強すぎでしょご主人。」
「チャル殿。妾にはどうなったのかよく分からなかったのだが‥‥解説を願えるか?」
「ご主人のあの構えはいわば『受けの奥義』っす。右手防御、左手攻撃、最後にとどめと順番に一瞬で叩き込む返し技をする為の構えっす。今のはナーカス王の拳を右手で上に流して同時左手の手刀を顎に当てて仰け反らせ、直前に加速の魔法を掛けていた足で足払い‥というか蹴り上げっすね。ナーカス王の拳の勢いをそのまま利用して綺麗にひっくり返して宙に舞わしたっす。」
相手の勢いが強ければ強いほど威力が増す様になっている。ナーカス王の繰り出した拳がまっすぐだった事とその強さであれだけ宙に舞う事になったのだ。
「流石ですね。あれだけ舞う威力とは思いませんでした。直撃なら1発で終わっていました。」
「返し技を決められては威力があろうが全て自滅への道だ。その構えを取られている間は素手では通用しそうもないな。ここいらで使わせてもらうか。」
当然の様にアイテムBOX持ちでそこから取り出したのは大剣。握りに無駄が無く、振るう重さにも余裕で耐えそうな腕の筋肉の張り具合。愛刀と見て間違いないだろう。観客もついに出た!と言わんばかりの歓声を上げる。
「ではこちらも。」
アイテムBOXから槍を取り出し両腕に手甲を装着。構える。第二ラウンド武器戦の開幕だ。
「そちらの武器は槍か。尺がある分厄介だがそれが一番の得意な武器か?」
「武芸百般とは行きませんが20程使える武器の中では上位3種に入りますね。」
「なら残り2つも引き摺り出してみせよう!!」
ガキィイイイイイイイイイイイン!!!!!!
大剣を握っているのにとてつもない速さで突進して横振り一閃!槍で何とか受け流すものの、身体が弾かれ、武舞台の端まで追いやられる。すげぇ威力。これで戦場を駆け抜けてきたのならそりゃ王になるわと思わされる。「カナリ様!」「カナリ!」とイセとサウラの2人は心配の声を上げるが、攻撃が見えている従者とハルエさんの4人は黙って戦いを見守っている。
「ほう、これも流すか!戦では10人くらいはこれで吹っ飛ぶんだがな。やるではないか!」
「ふぅー、お褒めに与り光栄ですが受け流すだけで精一杯ではジリ貧ですね。」
「分かっているなら次の得意武器を出したらどうだ!!」
今度は魔法弾を四方から繰り出し、それを手甲の障壁で弾いた瞬間に先程の一閃が今度は縦に飛んでくる。躱して大剣が武舞台の障壁に弾かれる瞬間物凄い火花が飛び散る!
「その手甲の障壁も中々良い!どこで手に入れた!?」
攻撃を緩めず息をつく間も与えぬままナーカス王は聞いて来る。
「そちらのイセ様の先輩に当たる方に強化して頂きました!うおっとい!」
「良い魔道具屋だなそれは!今度紹介せい!」
素材集めが好きな人がいる様にこの王は武器集めでも趣味なんだろうか?攻撃を仕掛けながら武器の状態を見ているようだ。興味津々なのにこの威力の攻撃って!
「ぐあっ!?」
受け流しの間合いをミスり、右足の太ももを斬られてしまった。
「カナリ様ぁあぁあ!!」
「ご主人!」
「主!」
「カナリ!!」
応援席の皆々がその光景に声を上げる。しかしそれも他の観客の歓声にかき消された。
「その足では次は受け流せまい?そろそろ他の武器を出したらどうだ?」
ナーカス王の見立て通り、掠った傷口からは血が流れ、立っているのがやっとだ。
「それとも降参するか?」
「いえ、お気遣いなく。『もう足を動かす必要がありません』ので。」
「?? それはどういう‥‥!!??」
途端に大剣を握っていた右手がひっくり返り大剣を落とす。更に左足を横に引っ張られ、股割り状態になって王は堪らず膝をつく。その光景に観客は困惑の声を上げながら武舞台を見渡す。メキだけは『一度喰らった』事がある為その正体にいち早く気付いた。
「アレ本当最初何されたか分かんないんだよなぁ。」
「何を‥したのだ‥‥これは?」
「私の得意武器『ジャリ糸』で拘束させて頂きました。見えない程の細さで人が5人ほど乗れる強度を持つという代物です。大剣を受け流して移動している間に設置させて頂きました。」
「何か触れている感触はあるがそうか糸か。これでは身動きは取れんな。また妙な物を繰り出して来るものよ。だが‥‥フンッ!!」
糸を操作していた左手が引かれる。何てパワーだ。だが糸が食い込み腕と左足からは鮮血が流れる。
「ナーカス・ライ・アム・カータ!ナーカス・レフ・レグ・カータ!」
拘束された腕と足に魔法で強化して食い込みを防ぎ、ナーカス王は見事に立ち上がった。経験者のメキは思わず「すげぇな!?」と驚嘆する。
「ぬぅ。立ち上がったは良いがやはり身動きが出来んな。」
「立ち上がるだけ恐ろしいですよ。操作している手がこれ程引っ張られるとは思いもしませんでした。」
「お主の足も動き回るには辛かろう。これでは互いに次の手が打ちづらい。ここからどうする?」
「私の1番取り扱ってきた武器達で攻めたいと思います。」
「何?」
イデアで生み出したのは『89式小銃』『MINIMI』『自衛隊重機関銃 キャリバー50』『対戦車榴弾砲 LAM』 の個人・小隊運用火器達。
「まずはこちらから。」
ダァァァァァン!!
手に取ったのは89式小銃。ナーカス王の顔の横を通り過ぎる様に1発撃つ。障壁に当たって弾は弾け飛んだ。ナーカス王もそれを目で追い、驚愕の表情を見せる。」
「私はこれを400メータ先から撃って心臓を外しません。」
「400メータ!?戦の範囲をほぼ網羅出来るという事か!この威力と速さでは感知も出来ぬまま倒される事に‥!」
「観客の皆さんにももう少しご理解頂きましょうか。」
キャリバー50を客席に向け、イセ様にアイコンタクト。障壁の強化をお願いしてブッ放す。
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ!!!!!!!!
「うわぁああ!!!」
「きゃあああ!!!」
観客の慌てふためく声が乱立する。だが障壁強化の甲斐あって直前で弾け、客席には届いていない。撃ち止めて観客の声が落ち着くまで待ち、俺は王に銃口ごと向き直り口を開く。
「これが私の持つ『戦を止めた力』です。」
そう言ってナーカス王の拘束を解く。腕と足の感触を確かめ、一息ついてこちらを見る王。
そして歓喜の声を上げた。
「ハーーーーハハハハ!!!良い!良いぞ!!存分にその力楽しませて貰った!食、遊、武どれをとっても満足のいく物だった!ここは力の国クオカーフ。ここにおる皆もこれで文句あるまい!」
オオオオオオ!!と大歓声が上がり、カナリコールまで巻き起こった。
「お主の力を認め、今回の各件の受諾、及び国内でのカナリ自身の活動の許可と友好の証をこのクオカーフ王が認める!皆!カナリと共にこの国を美味い物と楽しい物で溢れさせようぞ!!」
ナーカス王バンザーーイ!!カナリバンザーーイ!!
先程までの人間族差別の視線はどこへやら。なんとか払拭出来たようで俺は皆に手を振って武舞台から降りる。応援席の皆の元に着いてから兵器達をアデイする。
ガクッ
「ご主人!」
「主!」
咄嗟にチャルとメキが俺を受け止める。謁見からここまで様々な物を生み出し、流石に魔力が限界だったのと足の出血で体力も持って行かれた。観客から見えぬ角度にあるここに来るまで根性で毅然と歩き、強い男をなんとか演じ切れた。
「お疲れ様っす。ご主人。」




