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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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ナーカス王との戦い① アウェーと拳

闘技場の武舞台の中央に2人は向かい合う。


「御使だかなんだか知らねぇが人間族なんぞ一捻りにして下さいナーカス様!」

「人間族が偉そうに対等に喋ってんじゃないわよ!」


クオカーフ民の観客は盛り上がってこちらにヤジを飛ばしてくる。どこぞの暗黒武術の大会の様なアウェー感。


「大変な人気ですね。ナーカス王。」

「ふん。これがお主が払拭したいものだ。お主の力量を示して貰うしかないが、単騎で戦を止める程だ。我も心して掛かる必要があろうな。」

「方式や作法はありますか?」

「相手を殺さないのならそれで良い。素手でも武器でも魔法でも構わん。相手が気絶か戦闘不能かこの舞台から落ちたら負けだ。」

「はい。」

「妙に落ち着いておるな。」

「演者として色々な舞台で演目をしてきたもので、大勢に見られるのは慣れています。不愉快な言葉を投げられるのは癪ですが。」

後ろのウチの応援者のイラつきっぷりが背中に刺さってくる様だ。

「それに‥‥私が戦うのは貴方ですから。」

「(ニヤリ) 上等だ!始めるか!」


ドガァン!と四股を踏む様にナーカス王は構える。左の拳を前にやり、背中に黒い魔法弾。浮かび上がる数は5つ。成程、まずは魔法と肉弾戦をお望みか。


「残念ながら魔法はそれほど修練を積んでませんので‥。」


左足を前に踏み込み半身に構える。


「あの構えは!?確かチャル殿が‥!」

「本家が見れるって事っすね‥‥。」

サウラが気づいたあの構えはチャルが使った『聖瞳流 術式』の基本構え。

「大丈夫なのか?‥あれは心が‥。」

「それぐらいしないと勝てないと踏んだんっすよ。何かあればボクが全力で止めるっす。でも多分‥‥。」

カナリの口元は笑っている。全力出しても良いのだと喜びを感じた時に出る本能的な癖。


「慣れた構えだな。行くぞ!」

闇の弾が一気に頭上から襲って来る。制空権を取り正面から攻め込んでくるつもりか。


トーン。トーン。トーン。


ステップを踏み、相手を常に正面に置きながらも飛び跳ねる方向はランダム。ナーカス王の魔法弾を躱し、正面からの拳も空を切る。魔法弾が武舞台に着弾すると勢いよく弾けて消えた。


「武舞台が壊れるかと思いましたが‥‥処置がなされているんですね?」

「そうだ。武舞台と観客の周りには障壁が施してある。治癒術士も優秀なのがおるからな。遠慮は要らんぞ?」

成程。魔法の流れ弾も舞台の損傷も気にする事ないって事。ここまでやる理由は‥‥


「何でも全力じゃなくちゃ楽しくないですもんね。」

「分かっているじゃないか。来い!!」


御指名に応えて今度はこちらから行ってみる。専守防衛が主ではあるが自分から相手の懐へ飛び込んだ。

「ぬぅ!!?」

聖瞳流「指進」が意外と速かったのかすんなり間合いへ。様子見でもしているのかな?と思いながら親指を立てて脇腹に突っ込む。肋骨の隙間を突き、肝臓に直にダメージを狙う。

「おっと。」


流石にそこは筋肉の壁。隙間を狙ったが跳ね返された。一旦距離を取る。

「点で肝臓を狙って来るとはな。距離を詰める歩法も見事だ。」

「1発でもこちらは喰らえば気絶しそうな一撃が飛んでくるのでね。魔法弾も脅威。なので距離を詰めてみたんですが跳ね返されました。」



「あの技も聖瞳流術式の技なのかチャル殿。」

「聖瞳流術式 『指進』から『肝指』の連続技っすね。肋骨の隙間に鍛えた親指を一気に突っ込んで肝臓に衝撃を加える技っす。今はツボ押しの技法にしてるっすけど最小限の衝撃で効果が出るっす。でも指を鍛えてないと折れる自爆技に近いんでご主人が指の鍛錬を続けてきた証拠っす。魔法弾の躱し方もイセ様との錬成で目が慣れてて冷静に避けれてるっすね。」

解説する中、対戦を見てどこか悲しみと懐かしむを同時に表現したような表情と声色で話すチャルを見て、サウラは2人の重い過去に思いを馳せる。

「スゴイですわー!良いですわよカナリ様ーー!!」

その横ではカナリを全力で応援するイセ。魔人族のヤジなどお構い無しだ。

「(完全アウェーの中、ありがたいねぇ)」

そういえば競技中の見知った人間からの応援の歓声なんていつ以来だろうか。地元の長距離走では自軍すら応援しなくなったし、思い返したら自衛隊の武装走以来じゃないか?ありがたさついでにちょっとだけやってみたい事するか。


「!?構えが変わった!?」

「‥‥ちょっと試したくなったみたいっすね。あの構えはご主人の好きな漫画の魔王の構えっす。」


魔法がある世界なので少しやってみたい事だ。正面に向き左手を上げ右手を下げるただそれで佇むだけのこの構え。システマの呼吸で内臓の状態を一度フラットにして俺は構え始めた。


「また構えが変わったな。色々と面白い奴だ!」


近づくのは危険と判断したのか魔法弾を殴って飛ばして来るナーカス王。流石戦いの勘は鋭い。

構えを解き、左右に避け、再び構えを取る。


「あくまでその構えを続けて我を誘うか‥‥。良いだろう乗ってやろうその挑発に!」


両拳に魔法を込めてナーカス王はこちらに突進して来る。


「砕けろ!!」




次の瞬間‥‥ナーカス王の身体が宙に舞った‥‥

8/4仕事のトラブルと体調不良で遅れております。ご容赦下さい。

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