オセロとコロッセオ
イデアで生み出したのはオセロ、チェス、将棋、トランプといった盤上遊戯の数々。
長い机にずらりと並ぶとどこぞの大会の様だ。
「これはまた多くの物を並べたものだな。これらは何だ?」
「机の上で対戦する『盤上遊戯』の道具達です。」
「ほほう、対戦。」
対戦という言葉に意欲的な反応を示す。戦好きという所を突く為にこの言葉を使って正解だったな。
「一対一の物から大人数で出来る物までございます。これらを娯楽として一部普及して行こうと画策しております。どれか試遊されますか?」
「無論だ。すぐ出来る物を試したい。」
自分で経験してから判断するタイプ。先程の試食でもそれが見て取れたが臣下は苦労するだろうな。
「ではこちらのオセロが良いかと。白か黒を選び、自分の置いた駒で相手の駒を挟み、挟まれた部分にある相手の駒は自分の色にひっくり返ります。駒を置く場所は挟む事が出来る場所だけです。盤面が埋まる、または両者が置ける場所が無くなった時点で終了。自分の色の駒の数が多い方の勝ちです。黒が先手番になります。決まり事は以上です。黒と白はどちらに致しますか?」
「黒だ。」
「では先手をどうぞ。」
単純明快だがそれ故に奥が深い日本発祥のゲーム。ボードゲームの楽しさを理解するのには最も適しているだろう。
「ムムム‥。これは我が置ける場所が無い‥か?」
「はい。その状態になったら相手の手番になります。」
これだけギャラリーがいて行うボードゲームは初だが何とか落ち着いてプレイ出来た。王も政務で慣れて頭が回るのか理解が早く、意外と接戦。何とか勝利をもぎ取った。
「‥‥我の負けだな。単純明快な筈がこれ程頭を使い、勝負の醍醐味に溢れている。楽しかったぞカナリ。」
「そう言って頂けて何よりです。理解が早く、最後は焦りました。」
「この様に楽しい物がこれだけ揃っているのか‥この場だけではやり尽くせぬな。」
ナーカス王はゲーム達を見回し、こちらに向き直って質問する。
「だが気がかりな事が1つ。お主はこれらの『一部を普及』と言ったな?全てを普及しないのは何故だ?」
「今やって頂いた遊戯は盤上が全て見えた状態で競えますが、中には手の内を見せずに行う物も多くあります。つまりその気があれば裏工作が行えるという事です。勿論規約違反。勝負ではありますがあくまでも遊戯として楽しんで貰いたいのでその種類を選びたいという事です。」
「ふむ。賭博行為に使われる可能性もあるしな。遊戯であるのに殺伐としては本末転倒というわけか。」
「仰る通りです。」
「お主の言葉からお主がこれら盤上遊戯品の一般普及を目指していると捉え、理解している。その辺りの法の整備も必要だが、身を粉にして鍛え上げぬとも対戦を楽しめる物は是非欲しい。食と遊を満足させるのは国家安寧に大きく影響するからな。今回とは別に、直接取引をしたい所だがどうだ?」
「先程の私の懸念を考慮して頂けるのなら是非に。生産の件に関しては幾つか取り決めも必要かと思いますのでその会議に参加の許可を願います。」
「勿論顧問となってもらう。その報酬についてだが‥‥。」
ナーカス王は再びゲーム達を見回し、俺に聞く。
「カナリの一番好きな遊戯はどれになる?」
「好きなのはこちらの『麻雀』ですね。芸を披露する事も含めるのなら遊戯方法も断トツに多い『トランプ』が1番です。」
「お主は芸事も嗜むのか?まったく次から次へと多種多様な‥。」
「情報量が多くて申し訳ありません。楽しませる事が幼少期から好きな性格なもので。」
保育園の年長から文化祭のステージに立ち続け、自衛隊においては日本武道館のマーチングフェスティバルに出演する程パフォーマーとしてやってきたものだ。
「麻雀に関してはサウラ女王が私専用の拠点とそれを麻雀用に改装をして下さっています。ズイの不作対策の褒美として頂く事にしました。」
「我も個人に対する詫びの品やこれからの相談料として考えていたが既にサウラに先を越されていたか。それでは設けても持て余すだけだな。」
ナーカス王は再び悩む。 ここかな?
「個人的、というのであれば不躾ながら私から提案をしてもよろしいですか?」
人間族が図々しい!という空気も端の方で聞こえたがナーカス王が睨みを聞かせてそれを制する。
「聞こう。」
「今回の企てに参加したシャーネ以下208名の身柄と今回世話役に入って貰ったツバサの身柄をこちらに頂きたい。」
ざわ‥ざわ‥と周りが驚きを示す。
「それで‥‥良いのか?」
「このまま行けば彼らは極刑で森の肥やしになりましょう?同じ肥やしとなるなら私の活動で扱き使いたいと思います。其方は手間が省ける事になるだけかと。」
「そこだ。お主は労働力を得るのだろうがこちらは手間が省ける。こちらが何も負っていないではないか。詫びにならん。」
あーその辺は公平に行きたい人なのね。良かった。全部の交渉が上手く行きそうで。
「ではお願いを1つ追加で。以前、オタイオとミヤーザの連合軍と戦ったと聞いております。そこで捕らえた人間族の捕虜の中にシンメイという者がいるかどうか調べて頂きたい。」
「2年前の戦だな。一覧を管理する者に調べさせるがその者の返還を求めるか?カナリになら全員戻しても構わんぞ?」
何と太っ腹な。何人いるか分からない人間の管理が難しいがここはご厚意に甘えよう。
「ではそのご厚意に甘えます。」
「よし。 管理官!早速調べてこちらへ知らせい!」
「はは!」
これで持ち掛けたかった賠償と頼み事が出来た。この方なら有言実行で全てつつがなく進めてくれるだろう。
「さてそれを調べている間、お主の事をもう少し『見させて』貰おう。」
「見るとは?」
「なあに、お主の『食』と『遊』の提供力と『頭脳』については理解したが、先の戦を止めたという『武力』をまだ見せて貰っておらぬ。それが見たいというだけだ。先程から周りでもまだお主を人間族だからと見下しておる者の声が聞こえていただろう?ここは力の国クオカーフ。その力を示し、皆を納得させ、我を楽しませよ。場所を移すぞ。付いて参れ。」
連れて来られた先は闘技場 最初からそのつもりだったのだろう、観客は満員御礼だ。周りの大歓声の中ナーカス王と向かい合う。
「やっぱこういう流れになるかぁ‥‥。」




