謁見と試食
自宅のネット環境に不具合があり投稿が遅くなりました。お詫び申し上げます。 ハルエ
本日はいよいよクオカーフ王との謁見の日。どんな猛者な王様が出て来るやら。
ツバサは別室から出し、普通に従事をして貰う。昨夜の行き過ぎを反省したのか妙に大人しい。
謁見という事で服装をスーツに外套というスタイルで望ませて頂く。
「準備はできた様じゃな。では参るのじゃ。」
サウラのすぐ後ろに着き、謁見の間の門が開く。
「(広いなー。)」
その謁見の間はガサの1.5倍は広いもので、レッドカーペットの横には貴族と近衛兵達が左右所狭しと並んでいる。我ら一行は堂々と進み、玉座へと近づくが、歩く度に差別のヒソヒソ話が聞こえて来るので気分が悪い。玉座の手前に今回の為に置かれた長机の端でサウラは立ち止まり、口上を述べる。
「ガサ国の王、サウラが此度の企ての件について話し合いたく馳せ参じた。クオカーフの王と落とし所を取り決めたい。」
玉座に頬杖を突き鎮座する浅黒く体格の良い男。腕や首筋などに所々傷があり、戦好きという話を納得させる容姿だ。ラオ◯みたいだな。
フンと鼻で笑い、クオカーフ王は答える。
「相変わらず勇ましく美しいなサウラ。まだ我が伴侶になる決心は固まらぬか?」
「その様な事を話に来たと妾が述べたか?充分に女子を侍らせておるのじゃから妾まで手を伸ばす暇もなかろう。此度の顛末をどの様に始末をつけるか、さっさと話合おうではないか。」
サウラが着席しその右後ろにそっと控える。
「まあ待て。そう急く前に我にも御使とやらを紹介してもらおうかサウラ。その隣におる者がそうなのじゃろう?」
「そうじゃの。紹介しよう。こちらの者がベルレ神の御使であるカナリじゃ。」
そのタイミングで俺は前に出て挨拶をする。
「お初にお目に掛かります。クオカーフ王。ベルレ神にこの世界に遣わされた加成剛志と申します。カナリで結構です。」
「我がクオカーフの王、ナーカス・ホークス3世だ。サウラの推薦と此度の一件の被害者として其方の話を聞こうと思っている。着席を許す。」
俺も席に着き、会談は始まる。
「まずはこちら側の大臣の愚行を詫びておく。大臣を尋問し、そちらのパラサと手を組んで国の乗っ取りを企てていたのは事実の様だ。大臣は牢に繋ぎ、他の罪状を調べている。」
周りの貴族や役人は王が人間に詫びた!?と言わんばかりに驚愕のざわめきを謁見の間に響かせる。ここまであからさまだとむしろ清々しいな。
「お主らしくない企てと思っておった。何度も我が国に戦を仕掛けてきたが、謀略ではなく戦略と力で勝ち取る事を美徳としているお主の信条にそぐわぬとな。」
「サウラにそこまで理解されているのは光栄だ。その我の信条を汚した輩には然るべき罰を与える。其方のパラサにはもう罰は下してきたのか?」
「妾が直接氷漬けにして国外追放にした。」
「ハハハハハハハハハハ!!実の伯母を氷漬けか!それはさぞ相手の心を抉ったであろうな!だが身内とはいえ命を取らぬのはまだまだ甘い所があるようだな。サウラよ。」
怒号の様な笑い声を上げてサウラを伺うナーカス王。
「肉親に左右されながらも耐えてきた者が嫌がるという事でそこな面子に止められた。妾も納得し、その者の信条に沿う事にしたのじゃ。この者の信条にの。」
ここで俺に話を振る。ナーカス王の視線がこちらに向き、睨みながら聞いてくる。
「ほう。カナリと申したな。その信条とはなんだ?」
「弟を守る事。それを続けてきた果てに得た能力や知識を世に反映し笑顔の継続を図る事です。」
ふむ。と顎を撫でながらナーカス王は不敵に笑う。
「笑顔の継続とするか。どんな経験をしてきたが知らんが根幹を見据えるに至るものであった事は窺えるな。」
「カナリの過去は一通り聞いたが、幼き頃から人が心折れる要素が幾重にも降りかかってきたようじゃ。それでもこちらの異世界に来てまでも使命の為邁進しておる。顕現してからひと月と経っておらぬ身でこの場まで来れる程の早さでじゃ。」
その早さに関してはナーカス王も驚愕の表情を見せる。しかしすぐに何かを思いついたのかニヤリと笑い、こちらに話かける。
「カナリ。其方なら何を以って我を笑顔に出来る?」
「まずは生きる者の根源である『食』で。」
そう言ってアイテムBOXから事前に用意していたクオカーフ向けの料理を取り出す。一瞬近衛兵が身構えたがナーカス王がそれを制し、俺の配膳を受ける。
「これは‥魚か?」
「私の世界の『刺身』という魚の食し方になります。クオカーフは魚を主体に食べられる海洋国家と聞きましたのでこの品を選びました。こちらの魚も生でも食べられるかどうかは自身の身体と従者の身体で安全を確認しております。これに一度漬けてお召し上がり下さい。」
スッとその横にジャー油の小皿を置く。
「待って下さい!得体の知れない物を王が一番最初に食すのは危険です!僭越ながら私が毒見役を!」
初老の貴族っぽい方が進み出てもっともな意見を述べ、ナーカス王もそれに応じ、試食が始まった。
パクッ
!!!!♪♪♪♪
その美味そうな笑顔に安全を確認したのかナーカス王も手を伸ばす。
「!!! 美味い!!! 美味いぞーーーーー!!!」
白髪の髭の爺さんが出て来るアニメのセリフと拳王様の声を合わせたような声が響き渡り、一同の俺を見る目が変わった。
「お口にあったようで何よりです。」
「カナリよ。皆にも食させ、この美味さを共有したい。用意は無いか?この城に貯蔵する魚でも行けるか?」
「そう言われる自信がありましたのですぐ食せるように準備をしております。机の一角をお借りします。皿の用意だけよろしいですか?」
「分かった。皿の用意だ!」
はっ!と使用人が駆け足で人数分の皿を用意しに走る。
「イセ様。少しお手伝いをよろしいですか?」
「はい。」
「魔法で今から来る皿を『少しだけ』冷える様にして頂きたい。」
ここで皿の熱でネタがダレて味が落ちては元も子もない。
「かしこまりましたわ。」
そうして長い机の側面に移動し、イデアで撥水加工のテーブルクロス、布巾とまな板と柳刃包丁を生み出し、無限水筒で手を洗い薄手のゴム手袋を装着、まな板に水を掛けてから、アイテムBOXの中に保存していたあちらでいう所のカジキマグロのサクをドン!! 皿も到着し、イセは身構える。
「さぁどんどん行きますわよ!」
「お願いします!」
渡しながら次々と皿が冷やされる。チャルは俺のまな板の横にその皿を置き、俺はキッツケを2枚ずつ載せ、メキがジャー油の小皿と合わせて貴族役人達に配って回る。
渡された人から順に食し、先程と同じ美味しさの笑顔の花を咲かせて行く。食べ終わった皿を机の上に重ねていって、その量を一目で分かるようにする。
そして全員が食し終えた。
「この皿が、答えです。」
ニヤリと再び笑い、この国の王は満足げな笑い声を上げる。
「ハハハハハ!実に単純明快である!そしてわざわざコレを食させたという事は、今回の事件の賠償もこれに関係していると見るが?」
「御推察の通り。こちらの調味料『ジャー油』に関係しております。順に説明致しますと、こちらのジャー油はズイという作物から作られます。」
「おお!ズイから!我にはそれで謎が解けたぞ。ガサが戦を仕掛けた理由はそれか!」
「お考えの通り。ジャー油は発見されど原料のズイが不作となり続け、似た気候と地質地形を持つソーアを攻め、確保しようとした侵略でありました。」
ナーカス王は頷き、サウラは少し表情を曇らせる。
「ガサは専守防衛に努めておったのに何故今回に限ってサウラは戦に出たのか? その理由を考えあぐねておったがようやく合点がいったわ。そしてその戦を止めたのがお主という事だな?」
「はい。力で戦を止め、前の世界での知識から不作の理由を突き止め、研究から導いた対処法を提案し、それに必要な資材をソーアから購入する事と復旧の人手をガサからソーアへと送る事の2つを賠償させました。」
ナーカス王は手を叩き賞賛する。
「見事に相互利益の成された賠償だ。犠牲になった者と関係者には怨恨も残ろうが、戦に付き物のそれすら霞む利益が有ればいずれその怨恨は薄らいで行くであろうな。」
「今後もそうなるように努めて行く所存です。」
怨恨に足を止めれば機会を逃す。それでも止めちゃうのが人間なんだけどね。であれば目の前に美味い人参をぶら下げ、歩みを進ませるのみだ。
「して、今回の我が国のカナリとガサへの賠償の話に戻るのだが、話の流れから差し詰め『支援』を求めるか?」
「はい。どう計算してもガサのみで賄える額ではなく、その補填を賠償として請求したいと考えております。」
ざわ‥‥ざわ‥‥と周りはざわつき、やがて静まって自分達の王の反応を注視した。
「つまり‥‥今回の事件を水に流してやるからその代わりに美味い物食うための金を出してくれ。という事か。論より証拠とばかりに先に食させたのも作戦だったのだな?」
「その通りです。」
「正直だな。その点に於いては見事にしてやられたわ。だが死に目にあっておきながらカナリ自身に利がある様な要求ではないと考えるが?」
「先程申し上げた通り、笑顔の継続を図る私の目的の為に必要な措置をしているだけです。」
「自らの死に目すらその為の手段にする事を厭わない‥という事か‥。その考えは自己犠牲が過ぎるぞ。どこかで犠牲になってしまったら頼りにしていた者達が後に続かん。そんな危うい男を信用するのはちと難しいのう。」
ガサでサウラにも似た様な事を言われたなぁ。
「その点についてはベルレ・ガルアにて次世代の担い手の教育を導入する段取りが出来ています。各国において教室などを設けられればその問題も解決かと。」
「お主自身の求心力には及ぶまいが、次も見据えておる点も抜かりはないという事か。」
「『継続』を語る以上、そこを疎かには出来ません。」
「当然だな。恐らくはその教育内容まで固まっているのだろう。だが益々我らの世界には利があるがお主に利がある様に思えぬな。我を納得させるにはまだ不十分だ。」
「と、言いますと?」
「最初に『まずは』と申しただろう?それは『食以外の算段もある』という事だ。それを我に示して貰おう。我がお主に感じる危機感をそれで拭って見せるがいい。」
成程。つまりもっと手札を明かして安心させろという事か。
「では。」
長机の上の皿を退けて貰い、再びイデアであちらの物を生み出す。続いて出すのは‥‥




