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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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襲撃者と戦争の正体

「竜人族の皆さんはあんなに子作りの事ばかり考えてますの?」


眉間に皺を寄せながらイセはメキに問う。


「うーんそうじゃないんだけど族長筋は中々掟や縛りが多くてさ。その中で心に色々溜まっちまうものが多くてそれを発散したい感じかな。モニーも副族長筋としてアタイと同じく自分を打ち負かした相手しか婿に迎えられないって掟を背負ってるもんで溜まってるものは多いと思う。機会が巡って来たなら即って考えだし、名付け親になるのは慣わしであると同時にアタイとの約束でもあってさ。それが目前となれば黙ってはいられないだけだと思うぜ。」


あー恥ずかしい‥と言いつつも、良い点を幾つも挙げられて照れているのかメキは赤面する。


「それに村が壊滅された事の復興の証を示すのに族長の子孫が出来るってのは一族の士気向上にめちゃくちゃ効果あると思うから、責任感からの焦りも出てるんだろ。」


「そうですわね‥。」

あまりにカナリに近づく為失念していたが、この二人は壊滅させられた村の族長なのだ。悲しみからの焦り。族長筋としての姿勢を見せる為の掟の遵守。様々なものを抱えてカナリに接している。それを思えば自分の何と恵まれた事か。そうイセは反省する。


「カナリ様。カナリ様はその件について今この状況でお考えを改める方針ですか?」

だがカナリを奪われるのはまた別の話。ここは本人の考えを修正して本来の方向へ戻す。

「いや、今は使命優先。その方針に変わりはないよ。一考の余地はあるけどまだ俺の安否も定かではない旅で欲や外野からの促しで悲劇の種になってもしょうがないしね。あと異世界人である俺が身体的にちゃんと子を成せる能力がこちらの女性と合っているのかも分からない。不明の部分が多い事に今は時間を割いてられないよ。」


遠回しに自分ともそういう状況になる気はないと宣言された訳だが方針が変わらないのであればまだ機会は平等だ。イセは安心する。


「では運搬の件共々、救国の事業の為、お互いに尽力していきましょう。」

「はい。全力で頑張ります!」


モニーさんのめっちゃ眼力バリバリでの返事に圧を感じながら挨拶をしたらモネザちゃんもこちらに目で訴えて圧を掛けている。ダブルドラゴンアイは迫力が違った。イセは少したじろいでいる。

少し圧が強すぎるかとイラついたのでこちらも殺気というか俺に何かぶつけるならこうなるぞというイメージをしてそれを眼力に乗せて返す。漫画で見たやつをマジで出来るのかどうなのかちょいと試してみる。


結果、モニーさんもモネザちゃんも何かしら察してはくれたようだ。


「では失礼します。」


と、その場を後にしようとした時。


「メキぃぃぃぃぃ!!!!」


突如メキに突進して来る兵士が1人。



聖瞳流術式  『暗巻』


咄嗟に外套で襲撃者の視界を塞ぎ、絡めて相手の獲物を無効化し、足払いを掛けて倒す。山で1人、想定で練習してた割には上手く出来たな。


「咄嗟に止めちゃったけど、この方は知り合いって事で良いかな?」

「%#@¥!!(離せぇ!?)」

「ああ、ウチの隊員だ‥。」


つまり、あの戦の敗残兵か。その負けを確定させた隊長に向かって刃物を向けるとは相当恨みを持っている様子。左目がやられているのはあの時受けた傷なのだろう。その痛みからかその戦の勝者と敗者両方が仲睦まじくしてたら良い気分はしないか。


「大体事情は察したけども、こうする事で君の溜飲は下がるだろうがその後はどうする?」


外套から顔を出し、彼は叫ぶ。


「うるせぇ!お前が言うな!俺たちが落ち目になってこちらでどんな思いでいるか!」


大臣に引き続きこいつもか。相手の事を考えてるふりして我だけの餓鬼。ただ未来ある世代だ。ここは一つ指南が必要かな。


「情けねぇ事に君は2つ分かっていない事がある。」

俺は外套を踏みつけこの男が逃げられないように止めた後、指をピースサインにして男の前に置く。


「1つは『戦』とは何かだ。」

「そんなもの知ってる!自分達の利益を獲得する為の手段だ!」

「違う。それは戦ではない。」

「!?!?!?」


その場の人間達全てが驚いて目を見開く。その状態にこちらの方が驚く。ただあの時あの行動を取ったメキだけは分かっているようだった。


「それは『侵略』の理由でしかない。仕掛ける側の我だけの事情だ。両者揃わないと成立しない『戦』とは違う。」

「両者‥揃う‥。」


「最初に『侵略』があり、その侵略の為『虐殺』が起こる。その虐殺を自国でさせない為に『抵抗』し、自国民の命やその財産を守る行動を取った結果が『戦争』だ。」


これが日本でも混同されて覚えられている『戦争とは』の答え。


『結果』である戦争が悪ではなく『侵略が悪』なのだ。戦争を仕掛ける事は無く、仕掛けるのは侵略による『虐殺』、『虐殺を仕掛ける』が正しい定義なのだ。そしてそれに抵抗して『戦争』にしなければそのまま蹂躙されるのみ。免疫と一緒でいつ舞い込んでも良いように抵抗力は持っていなければならない。

日本で戦争だ軍拡だと叫ぶ中枢の人間がいるが、言っている内容はこの『抵抗』の力を無くしましょうと言っているのと同義。自衛隊時代に党のデモ隊が駐屯地の前に来てギャーギャーテンプレの言葉投げかけられたが、ついこないだまで高校生だったやつにこいつら何言ってんだ?こんな奴らも守らないといけないのか?と考えたものだ。新隊員教育の一番最初の座学でそれでも命懸けで守るという教育を受けて、その晩トイレでそんな教育しなきゃならん国の状況を考え、カルチャーショックを受けたのか泣いた事がある。


「かの世界では先手必勝という言葉があるが、『先手必悪』が正しい言葉。つまり今回は自国の衰退という理由とそれを埋める為とはいえ、利益欲しさに仕掛けたガサ国が悪い訳だ。悪いやつが成敗されて傷ついても誰も至極当然としか思わない。今君がした行動は、命令されただけの自分達は悪くないと思って責任転嫁し、率いていたメキに押し付けようとした『逃避』だ。戦の実態を分かっていないまま、その矛先を何処に向けて良いか分からなくなった君の心を防衛する為の行動だとは理解しているから罪に問う気はない。」


耳を傾ける他の皆のこの男に送る目線は、メキを襲われた憤りから憐れむものに変わる。


「だが2つ目。君が分かっていない『あの時から今までのメキの気持ち』だけは分かって欲しい。」


その言葉にメキがピクリと反応する。

朝投稿できずすみません。

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