大臣の苦悩とサウラの過去
耕運や堆肥が来た後の事や水路の工事内容等の段取りをして、現地を後にする。数々の作業段取りをしていたら半日以上過ぎてしまっていたので、サウ車の中でポガポガサンドを人数分配り腹ごしらえ。
「こっこれがポガポガですか!?」
大臣もびっくりして平らげる。
「こんな美味い物をあちらでは食べられるようになっているんですか?」
「いえ、まだ作れるのが私や他数名ぐらいなので普及というところまでは行っていません。この後行く所のジャー油でさらに美味い物を作れそうなので、ドーレルさんと研究してみる所存です。」
「ポガポガがこんな物に変わるとは‥ 彼奴らの悪行にはほとほと参っておりまして‥。」
あーそうだろうなぁ鳥獣害は何処でも悩みの種ですよね。農業担当大臣なら尚のこと‥。
「ベルレ・ガルアではギルドと連携して肉の確保をして頂いています。買い取りの行程に補助金を付け、関係者の負担を減らしつつ鳥獣害対策と名物創作事業に充てられるようにしました。こちらでも検討してみて下さい。」
「はい!是非に。 しかし本当にこちらの世界にいらっしゃって2週間なのですか?と疑いたくなるほどの行動力と成果ですな‥。昨夜の事は聞いておりますが今後の活動に向けてどうか御自愛も考慮に入れて下さい。」
「御配慮に感謝致します。何分止まっていられない性質なものでご心配をお掛けいたしますが、降って湧いた物と思ってご容赦下さい。」
「そこまでこちらの世界に尽くして下さるのには何か理由がお有りなのでしょうか?」
「国民の負託とは笑顔の継続。それに応えると誓った人間が、あちらの世界で出来なかった事を再びこちらでさせて頂いているというだけの事ですよ。拾った命を使って。」
そうただただ俺自身のリベンジなのだ。良くなる様に動き、良くなってくれれば良い。それをさせて貰えている。一度死を選んでこちらに来た俺にはそれだけで過ぎた幸運なのだ。
「サウラ様が気に入る訳ですね‥。少しよろしいですか?」
大臣は目を伏せ、思いを受け止めるようにある事を語り始めた。
「‥‥カナリ様を見ているとサウラ様が即位された頃を思い出します。私はサウラ様を幼少期から知っておりまして、苦しんでいる者を放っておけない優しい方だと思っています。私は当時王の姉で摂政の立場にあったパラサ様の圧政に1人の政治家として立ち向かえず、それを横行させてしまっていた。」
「サウラ女王から聞いている部分ですね。」
どうやら昔のサウラの話。是非聞いておきたい。
「私はある事案においてお二人の反感を買い、左遷されられる事になりました。その時に政治を学ぼうと私を師事してくれていたサウラ様は抗議をしてくれました。『国民の笑顔に尽くしている者を追いやるのは何故か!』と。そう言ってくれるだけで私の心は満たされましたが、その結果サウラ様も2年ばかり軟禁される事になり、その後国が疲弊したのです。私が北のヒラドに送られる時、
『先生、妾が女王になる。それまで力を蓄え備えていて下さい。民を笑顔にする先生の信念と矜持をその時また発揮して貰いますのじゃ!』
と、宣言されました。当時は18歳となられたばかり、縁談も数多く来てご自身の女性としての幸せを求める選択もあったはず。それを投げ打って女王になって人々を笑顔にすると申してくれたのです。私は涙を堪えて約束しました。必ず力になりますと。その軟禁されていた2年の間にサウラ様のお世話を担っていた者達が今の大臣達なのです。」
魔人族の加齢が分からないからスルーしていたが、最初の謁見で周りにいた人達が若く感じたのはそういう理由だったのか。
「先程の畑でのご指摘の通り、前王が亡くなり、サウラ様が即位された頃に不作が続き疲弊は加速しました。私も解決策が見出せぬまま、他の大臣達も経験が浅い中で奮闘している最中にクオカーフ王の求婚がありました。サウラ様は国を思って一度求婚を受けるか私に相談に来られました。私は、
『貴女が笑顔になれる道を進んで下さい』
と助言し、結果的にサウラ様は断り、戦を仕掛けられ応戦し、民の疲弊と不満は行政へと向かってしまったのです。」
「サウラ女王も一度は民の為に求婚を受ける事を考えたと聞きました。ただ捧げるには値しない男だったので断ったのだと。」
「そうです。そしてその戦には勝ちましたが疲弊不満は増し、城の周りに抗議の一団が集まりました。その中にこう焚きつける者があったのです。
『ここに無いなら他から奪えば良いだろう!戦に勝てたのだから出来るはずだ!』
昨夜の出来事を思えば、あれはパラサ様の勢力が煽る為に抗議の現場に潜ませていたのでしょう。それを民の声と受け止め、ジャー油の発見と必要性を受け、人間族軽視の風潮も手伝い、民を笑顔にする道と言い聞かせてサウラ様はソーアを攻めて作物を奪う道を選ばれました。 私も疲弊の状態を知る者である以上、止める事が叶いませんでした‥‥。」
それは言い訳。だが代替案の提出が出来ない以上反対は出来ない。議論の基本を忠実に守る政治家の鑑的な行動ではあるのだが‥ それよりも守るべき基本が疲弊により疎かになっているのが分かる。
「私は‥あの助言で‥サウラ様の手を汚させてしまった‥!あの純粋で優しいお方の心に戦の責任という物を背負わせてしまった!それが情けなくて申し訳が立たない!カナリ様!私はどうなっても良い!この愚か者が今回のソーアで発生した数々の恨みを引き受けます!どうかサウラ様に非はなく部下である私の責としてソーアやクマポンの方々にお伝え願いたい!」
涙を流しながら大臣は訴える。他の面子も黙って聞いている。
「‥‥貴方は今3つの間違いを犯そうとしている。」




