女達の本音と提案②
「常に次世代の育成に責任と重きを置いていらっしゃるカナリ様らしい意見ですね。ですが子がなされなければその育成も出来ませんよ?」
「それもそうなんだけどね。必ずしも俺である必要がない。」
会長時代、青年団体連絡会で婚活交流イベントを開いた理由はそこだった。
「いっそのことあっちの世界であった『大奥』でも敷いてみるかとも思ったけども使命の足が鈍るから候補から外した。」
「何ですの?その制度は?」
「こっちでは後宮制度とかないのかな?拠点の奥に王の子孫を残す女性だけを集めて子孫の継続を図る制度さ。女性は外に出る事は禁じられ確実に王の子だけを孕む状態にするってやつ。」
「クオカーフとキサガナルでは行われておる制度じゃの。」
「あれを行うかも考えたけどどうしても使命に動く為の身軽さの足枷になる。」
「確かに。カナリに協力したい者を囲ってしまうとその者の能力を外で発揮して貰えなくなるのう。使命の遂行を遅滞させてしまうというわけじゃな。」
「その通りです。」
「御使という立場はそれほど難儀なものか‥。単純な恋の問題として片付けられるものではないのだな‥。」
「女王という立場ならご理解しやすいかと。」
立場と政治は切り離せないもの。そこら辺はサウラは充分弁えているだろう。
「期間を設定したけど、現状半月で二つの都市、1つの国と友好を結べた。そう遠い未来ではないと思ってるよ。」
「確かに。この早さで考えると異常と言って差し支えない成果っす。」
「異常って酷い褒め言葉だな。」
イセがおずおずと手を挙げて
「‥‥カナリ様のその間の雄の発散はどういたしますの?」
と、問うて来た。
まあそこの問題もある。
「自分で処理するしかないかな。1人になる時が少ないから難しいけど。」
チャルを苦しめる訳にはいかないからね。
「結局そうなるっすか‥。何も解決してない気がするっすよご主人。」
「そうかねぇ‥時期は示したから進捗とはなったと思うけど。」
「ご主人の状態が、っすよ。」
「ああ。」
1人になると雄の発散以上に困難なものがある。
「ご主人は1人になったらアレが発動しちゃうっす。アレはボクらでは止められないっす。」
「アレ?アレとは何じゃ?」
「うーんまぁ説明するとあちらの言葉で『フラッシュバック』と言いまして、過去に見た物の記憶が蘇りそれに精神を苛まれる状態の事を言います。私の場合は議員時代の無責任な発言だらけの会議や学生時代の苦しみなどですね。体力が減り気を抜いたり、自分の知識や関連する言葉が出たりする事で引き起こされ、激しく怒鳴り、喚き散らします。 深い関係になればそれらを見続ける事になるので結婚に踏み切らない理由の一つですね。」
チャルとミクニしかこの世界では知らない事が女性陣に知られる事となった。
「何と‥。」
サウラは手をおでこに当てて顔を顰める。イセはそこである事に気付く。
「カナリ様はベルレ•ガルアの会議の後や今回の説明で沢山の知識を披露していました。つまり‥。」
「そうです。ベルレ•ガルアの会議の後、家の地下室で1人それに耐えてました。ミクニが来て気を利かせてくれたので落ち着きましたがね。」
「く‥!」
イセはその様な状態の後と知らずに逢引きによって自分は楽しみ、不意打ちの口づけにより更にカナリを悩ませたのだと分かった。自分の不甲斐なさを恥じる。
「この国で知識をこれから幾度となく披露してもらう事になるが‥カナリが苦しむのなら気が引けるのう‥。」
サウラも頭を抱える。
「そこは使命と調和の為ですから。私にとっては必要な行動です。」
「それで愛するカナリが苦しむのが嫌だという妾達の共通見解じゃよ。公人であらんとするカナリには侮辱に値するかも知れんがな‥。」
この中で政治で戦ってきたのはサウラのみ。『公人』の在り方への理解と自身の思いとの葛藤はこの中で1番強いだろうな。
「なぁアタイからも聞いていいかな主?」
「何?」
「アタイ達が雄の発散に今現在は協力出来ない事は分かったよ。でもそのフラッシュバック?だっけ?それの苦しみを取り除く事には何か協力出来ないのか?主は何で発散出来るんだ?」
1番はここでは出来ないRPGとかコンシューマゲームなんだけどね。その他色々とやる事で抑えてる部分があるけどもその色々の中で言うなら‥。
「うーん麻雀とか頭使う遊びかなぁ。 面白いし、頭使う事でその負の記憶を抑えてる感じ。ただ4人でやる遊びでやり方が難しかったり、初心者でも運があれば上級者に勝てる要素があるけども頭脳戦にならなくて勝負がつまらなくなる懸念があるね。」
「人数はいるけどやり方が難しいのかー。主達の頭に頭脳戦挑んでもキツいだろうし、主の練度に達してないと互角の相手との鎬合いの楽しさは味わって貰えないだろうしなー。」
「勝負事はそこが醍醐味なところがあるからね。さすが戦経験者。そこに着眼点が真っ先に行くのいいね。」
「ギュッてしてくれても良いぜ?」
「さっきの宣言通りにしようか?」
「無しで。」
慌てて離れるメキ。そこに妙に納得した表情のサウラが割って入る。
「でも最初にその麻雀とやらを挙げた以上、カナリの楽しい事の上位はそれなんじゃな。ではどうじゃ?伯母の城が今回空いた。そこをカナリが滞在中の拠点にし、その麻雀を快適に出来る様に改装しよう。」
「えぇ!?本当に!?」
『城雀荘』とか何そのパワーワード!? 部屋の名前は麻雀用語に因んだものに出来たりする!?
「ああ。麻雀以外にも何かあれば申せ。可能な限り作らせよう。」
「トキメキますね。ですが広まれば賭博行為に繋がる可能性が‥。」
「使用人は厳選し、それら遊戯を行えるのは我らのみというのはどうじゃ?これなら広まらんじゃろう。調理場も広めのものがあるからジャー油の料理の手解きや研究も出来よう。」
めちゃくちゃに魅力的な提案をポンと出せるとはさすが女王。ドーレルさんもめっちゃ嬉しそうに頷いてる。
「そこまでして貰うのはこっちが気が引ける思いですが‥。」
「カナリがこれからこの国や世界にもたらしてくれる各項目の成果に比べれば安いものじゃ。だがそうカナリが思うなら1つ、妾から要望したいのじゃ。」
人差し指を立て、少し悲しい表情になりながらサウラは申し出る。
「先程の『自害』の項目は取り消してくれ‥‥。妾達のカナリに対しての行動の結果、愛するカナリが自ら命を絶つかもしれんなど常に考えておったら、カナリへの協力体制にも妾達の精神へも悪影響じゃからな‥‥。カナリもそれは本意ではないじゃろう?」
「‥‥そうですね。使命の重さを理解して頂こうと提案しましたが‥些か過ぎた提案をしたと思います。取り消します。」
「ありがとうカナリ。だが其方の覚悟と抱えている物の重さもまた少し理解出来た。今後は妾達の魅力を知る事にも目を向けて貰いたい所じゃ。」
「はい。それは今この時も色々と感じて考え、先程の皆の話も踏まえて頭の中でまとめている所です。」
女性陣がどよめくがサウラはそれを制する。
「今すぐ聞きたい所じゃが、それは今度まとまったら聞く事にしよう。話が長くなってしまったの。ドーレルの馳走を平らげてしまうのじゃ。」
スープを啜り、食事の再開の合図。ドーレルさんもホッとして他のメニューの配膳に動き出す。他の皆も一息ついて食事を平らげていった。
「今日は色々とあって皆思う所があったであろう。どうじゃ?女性陣は皆戦いの後じゃ。風呂場で疲れを癒しながら会議と行かぬか?」
「良いですわね。」
「了解っす。」
「承知しました。」
皆続いて了承しているが‥‥ ちょっとだけ目がマジじゃない?
俺の護衛はホタ君が担当し、ハルエさん含め、女性陣は温泉へと向かう。
女性陣が退室した後、ホタ君はこちらに向き直り頭を下げる。
「‥改めて私からも謝罪申し上げます。国賓に深傷を負わせてしまうなど何とお詫びして良いか‥‥。」
ホタ君はサウラの命令で一緒に入浴する予定が浴場の外に待機する事になった。命令とはいえ責任を一番感じている所だろう。
「ホタ君は命令に従っていただけだし、迅速に処置をしてくれたから俺も助かったんだ。責任は命令したサウラが取ってくれるさ。そのサウラも席を外した。前に言った通り気軽に話そうよ。」
ホタ君は頭を上げ、ソーアで交わした約束を思い出して表情が明るくなる。
「そうでしたね。カナリ殿の懐は深いというか見えないというか不思議な感じです。ですが不手際は不手際。何か返せるものが思い付けば良いのですが‥。」
それでもやはり負い目を感じるか‥なら‥
「そうだな‥じゃあ麻雀をこの中で誰よりも早く覚えてくれる?」
一瞬ホタ君はポカンとするがすぐに冷静になって問う。
「麻雀‥とは先程話が出ていたあちらの世界の遊戯でしたね。それを誰よりも早くとは?」
「麻雀を行う時は『打つ』というんだけど、女性の打つ麻雀の多くは突如感覚で打ち出す所が多くてね。頭脳戦でなくなる事が経験上多いんだ。男性は頭で、女性は子宮で麻雀を打つとも言われていて、説明や理解が出来ない打ち方をされるのを嫌う人も多い。俺もその1人。なるべくなら男の打ち手と打ちたいのさ。」
「ああ成程。それが先程のメキ姉が言っていた『互角の人間との鎬合いの楽しさ』を求める事に繋がるんですね!」
「そういう事。」
メキと同様にその手の話に理解が早くて助かる。竜人族の好感度UP。
「これから世間にも幾つかの遊戯を広めて国交に繋げる事を考えているから、それらも覚えて相手をしてくれると助かる。」
「世界に広める為の検証役を兼ねるという事ですね!了解しました!しっかりと覚えてお相手をさせて頂きます!」
これでホタ君も今回の罪悪感も感じる事なく、遊戯を一緒に楽しめる相手になってくれるだろう。Win-Winな条件を提示出来たようで良かった。
「それと‥気軽に話すついでですが‥1つ質問をしてもよろしいですか?」
「内容によるけど‥何だろう?」
「実際の所カナリ殿はメキ姉さんを抱けますか?」
ブフォ!!と吹き出してしまう。片付けをしていたドーレルさんも驚きながらもこれは私が聞いちゃダメなやつっぽいと察したのか全速力で食器を片して退出する。
「ぶっ込んだ質問してくるねホタ君‥正直油断してた。」
「すみません。やはり一族の事にも関わって来ますのでお聞きしたくなりました。」
以前はメキの為に決着がついたとはいえ敵地であるソーアに単身戻り、従姉であるメキの事を俺にお願いしに来るほど一族とメキを大事にしているホタ君。その思いをあの時汲んだ以上、答えるのが筋だろう。
「そうだな。答えは‥‥。」




