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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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求めた物と質問

まどろみながら目を開けると‥ 見知らぬ天井‥


「カナリ様!目覚められましたか!」


「ハルエ‥さん? アダダダダダダダダ!!?」


手を握られ痛みが走る。


「あぁ!すみません!大丈夫ですか!?」

「ひっ左手以外は‥。」

さすが最強握力。心配して手を添えてくれていたんだろう。すみませんすみません!と謝っている姿は普段は見せない顔だし可愛いんだけどね。

「いやぁ 良い目覚ましでした。自衛隊の起床ラッパ以上に効果ありますね。」

にっこりと笑って体を起こす。起こした拍子に圧迫が掛かったのかめちゃくちゃデカい腹の音が鳴った。

「すいません。 聞いての通り腹が‥血が足りないので何かあればジャンジャン持ってきて貰っていいですか?食物事情がある国にお願いするのは恐縮ですが‥。」

怪我をして血が足りねぇ‥ 何でも良いジャンジャン持って来いって、一度は言ってみたかったセリフなんです。

「勿論です!お願いして来ます!」


ドタバタとハルエさんは使用人達に掛け合い、食事を用意してくれた。

ベッドの横に用意されたのは元々は今夜の宴で出されるはずだった料理だという話。少しでも無駄にならなくて済むよう頂くことにする。


「いただきます!」


スープから頂く事で体温を上げる。内臓達の準備が整ったところでタンパク源と野菜を摂る。料理の主体はあちらの世界の鶏ことモミージ。そして照り焼きモミージに使われている調味料は確実に

「醤油だ!」

食いながらやはりこれがあったかと予想が当たり嬉しくなる。

「このモミージの照り焼きに使われているタレは名前は何と言うんですか?」

「ジャー油と呼んでいます。ズイをある桶の中に入れていた所、このような黒と茶の混ざった様な液体になりまして、良い香りがするので火を通してみようと使ってみたらこれまた美味でしたので今回御使様にご賞味頂こうとご用意致しました。無駄にならず良かったです。」

そう答えるのは迎賓館の総料理長ドーレルさん。魔人族の加齢がどの位なのか分からないが恐らくサウラと同じくらいの歳の女性。

「腕によりをかけて頂き感謝します。そしてこのジャー油は私の考えが実ればこの国を救う事になると思います。これが出来たのは最近ですか?」

「そうなのですか!?えーと確か4ヶ月ほど前かと。なにせこの国のズイが不作でしたので王族の調理場でのみ使用を許可されておりました。」

「では国外へなどの流通はしていないんですね。それは好都合です。そしてズイをソーアで見て、これが戦の狙いだったと聞いてこのジャー油がここにあると踏んだ予想が当たりました。是非このジャー油を作る仕込み場の見学をさせて下さい。元いた世界でのこのジャー油を使った調理法もこちらにお伝えしたく思います。」

ドーレルさんがめちゃくちゃにパァーッと笑顔になる。

「料理人にとって調理の幅が広がり食する者が笑顔になる事は至上の喜び!ぜひ御教授をよろしくお願いします!」

「国民の笑顔の継続の為に頑張りましょう!でも今は私が食べさせて頂きますね?」

「どうぞ!引き続きお楽しみを!足りなければ幾らでもご用意します!」

俺は次の茹でシャキットに手を伸ばし、ドーレルさんはルンルンだ。

「(ボソッ)カナリ様は本当に人たらしですね‥。」

「どうかしました?ハルエさん。」

「いえ、どうか私にも御教授願います。」

「勿論です。」

屈託のない笑顔にハルエはカナリが起きる前に自分がした事を思い出し、動揺してしまう。


「(先程起きる直前に頰に口づけしようとしてしまった‥。私は何を‥。)」




「カナリが目覚めたと!?」

サウラ達が足早に部屋に入ってくる。

「サウラ女王。どうも、そちらもご無事で何よりです。」

「カナリぃぃぃ!すまん!すまんかったぁぁぁぁぁぁ!」

女王は全力で俺の足元に縋り付き必死になって許しを乞う。一国の王がその姿を家臣に晒すのはちょっとまずいんでない?

「サウラ女王。お互い無事だったんですし、どうやら決着も着いたのでしょう?一緒に食事でも食べながらお話しを聞かせて貰えますか?」

ここに来たメンツは晩御飯を食べ損ねているはずだ。まずはそれを満たしてあげたい。

「そっそうじゃの!ここに用意を頼めるか?ドーレル。」

「はっ!幾らでもすぐに!」


その間に左手をチャルに治してもらおう。

「ごめんチャル。左手をちょっと治してくれないかな?」

「はにゃ?左手っすか?肩じゃなくて?」

「すみませんチャル様‥カナリ様が目覚めた拍子に私が強く手を握ってしまいまして‥。」

「あー流石のご主人の握力でもハルエさんの握力には敵わなかったっすか。了解っす。」

「ハルエ‥傷病者に何をしているの‥。」

「すみませんお嬢様‥。目覚められたのが嬉しくてつい‥面目次第もございません。」

まぁまぁとその場を宥めて治療してもらう。再びドタバタとこの部屋に料理とテーブルが用意された。良い匂いが充満する。


「いただきまーす。」

ジャー油の料理たちが彼女達の口に運ばれる。


「美味しいーーー!」

「これが私がズイを見た時に、ここにあると踏んだあちらの世界では醤油と呼ばれる調味料『ジャー油』。私はこれを使う料理が散々頭に入っているし、流通に乗せれば国交と国益に繋げられると確信しています。」

「カナリ様があの時にズイを切望していた理由がこの調味料なのですね。」

「これを作っている所を見させて貰って、あわよくばもうひとつの調味料や食材も作ってやると思ってるよ。」

「あーご主人の自衛隊糧食班と酪農家の血が騒いじゃってるっす。でも元気そうで良かったっす。」

「本当に。肩から血を流されているのを見た時は肝を冷やしました。」

「まあ咄嗟に急所避けたし、解毒のツボも押せてたからね。神経毒で一気に心臓やられてたらヤバかったけど、究極に脇の筋肉を絞めてなるべく流れない様にしてたのが良かったのかもね。」

「矢を刺されて良い事などありません!もっとご自分の命を大事にして下さいませ!この女王に何か賠償を請求するべきです!」

「この様な事態じゃ、何でも言うてくれカナリ‥。」

あー俺が気絶してる間に色々と話進んじゃってる感じかなこりゃ。

「要求を何かする前に聞きたい事が幾つか。例の伯母とは決着が着いたと捉えて良いのですかね?」

「ああそれは直々に刑を執行した。まあその後この女子達のカナリへの献身の為に生かしてソーアでこき使って貰う話となった。身内を自ら葬る様な者はカナリの協力者に相応しくない、とな。」

「成程。気持ちを汲んで頂けてたんですね。危うく使命をまっとう出来なくなる所でした。ありがとう皆。」

「当然の事ですわ。」

「そうだな。主の嫌な事は従者としてやらせられないしな先輩?」

「そういうことっす。ボクはちょっとやり過ぎちゃいましたけど。」

「やり過ぎ?」

「あーいやご主人が気にする事じゃないっす。もう解決したっすから。」

チャルは慌てて取り繕う。

「矢を放った下手人は伯母様の差金だったという事ですかね?」

「いや、伯母の差金ではあったがやったのはクオカーフの兵じゃ。伯母は内通しておったのじゃよ、クオカーフの大臣とのう。」

「城の中にも200人ほどクオカーフ兵がいて全部アタイとお嬢様の2人で倒して捕まえたんだ。そいつらはクオカーフへ強制送還さ。」

「なるほどね。殺気の消し具合といい兵だと思ったんだ。にしてもやっぱり2人とも凄いな。」

エヘヘーwと2人してニコニコだ。褒められて伸びるタイプみたい。

「つまりその伯母とクオカーフのせいってことでサウラ女王は悪くないわけだな。そこでもう一つ。クオカーフに魚を食べる文化はありますか?」

皆がここで首を傾げる。今する質問なのか?と顔に書かれているようだ。

「あるもなにも、クオカーフは陸と海両方の産物を食べる国で海産物の方が消費が多いくらいじゃの。」

「じゃあ今回の件の賠償はこのガサと同じく『相手にも利が無いわけではない』形で行えますね。その交渉も私にさせて頂きたく思います。それを担う人事権の行使をサウラ女王に請求します。」

それで私の負傷については咎め無し。ちょっと勿体無いかもだけど。

「お優しい事ですわね‥やはり裸身を見た女性には甘くなるのでしょうか?」

ブフゥ!!!と口に含んだ水を噴き出す。

「ゲッホッ!ゲホゲホ‥。イセ様‥それは。」

「それは?裸同士で語り合っていたのでしょう?色仕掛けに負けたという事ではありませんの?」

いやあ目にハイライトが消えてらっしゃる。

「それは私も不意打ちでした。私の事を聞きたいと仰ったので長く話をしたまでです。他に聞かれて広まるのも嫌だったのでその場で。それを聞いてあそこまでになるとは思ってもいませんでした。」

「自身が死にかける様な目に遭ってもですか?」

「聞いて貰えた事はありがたかったです。その当時を思い出して少し心に闇が掛かりましたが、それすら吹っ飛ぶ出来事でしたので。死にかけたのは俺の注意不足な面も大きいと思っています。」

「それほど魅力的な裸だったと。」

「まあそうでないと言ったら嘘になりますね。アレを向けられて正気でいられる奴は男じゃない。だからといってそれの見返りに先程の要求で終わらせるに繋げたのかという点には関係は否です。勿体無いかな?とは思うけど。」

サウラは自分の事を咎められたり、肉体を褒められたりで心が落ち着かなくなってオロオロしている。いっその事突飛な要求をしてくれた方が気が楽かも知れない。

「女王の色仕掛けと先程の要求の内容に関係はありません。ただ、本来護衛としてつけていたホタ君を浴場に寄越すべき所を女王の命令で浴場入り口に控えさせた。その点は些か迂闊で私情が挟まれ、そちらのお家事情に巻き込まれた形ですので落とし前を付ける事と使命とを兼ね合わせて要求したまでです。」

「ご主人‥その点は理解したっすけど多分イセ様が聞きたい事はそこじゃない気がするっすよ‥?」

「ん?そう?」

「唇許しちゃう程抱きたくなったのかー?って話だと思うぜ?」

あーそういう。女の面子に関わる問題か‥。

「そりゃああれだけお嬢様やアタイがいつでもどうぞって構えしてても手を出して来ないのに、今日会ったばかりのサウラ様には許しちゃうってのには納得が行かないぜ?」

「メッキーの言う通りですわ。我々に魅力が無いと言われている様なものですもの。」

そりゃそうか。

「決して2人に魅力が無いわけじゃないと言いたいのがまず一点。言い訳になるけどもこちらに来て半月弱、所謂『雄』が溜まりまくっている状態での出来事。理性的な判断が若干揺らいだのは確かだ。」

「抱きたくなったわけですわね。」

「それはアレに触れたサウラ女王が1番分かると思うよ。」

アレはアレよ。サウラは恥ずかしくなったのか皆の視線を受けぬ様に顔を隠す。その視線が再び俺に戻って来たタイミングで問う。


「そこで皆に聞きたい。使命の弊害となっても俺と肉体関係を持ちたいかどうか。」


その戻った視線は全て固まった。

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