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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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二つの戦いと使わない訳

「『聖瞳流 術式』‥ですか‥見たことも聞いたこともない流派ですな。そちら様のご主人が開祖、ということでしょうか? それに格闘の構えをされているのに『術式』というのも気になります。魔法と併用するという事ですか?」


「ご主人が13歳の頃、復讐の為に一年掛けて組み上げた技術っす。格闘のみならず、あちらの隠密集団『忍者』の技術、毒物や武器の製造、医療知識、育児法、農学、芸事、山での生存術などをまとめた物っす。だから術式と呼ぶんすよ。復讐を成し得る力が身に付いてからは人を活かす技術のみを伸ばして他の人の役に立つ物に昇華して行ったっす。」

パチパチと拍手をするガーディ。

「それは御立派な事ですな。貴女のご主人はとても良い人なんでしょう。だが大変に損をする生き方を為さる。命を遂行し得ることのみが世の常と考える私には理解の外だ。ましてや復讐の権利を放棄してなどあり得ません。」

「そうっすか。まあ理解してもらう気もないっすけどね。今からその身体にたっぷり味わって貰うっすから。とりあえずはお互いの主君の為とでもしとくっすか。」

「そうですな。では‥。」

ガーディは剣を抜き、チャルと同じく半身に構えて細身の剣を向ける。


「イヤァァァァァァ!!」


フェンシングの様な動きで刺突を繰り出すガーディ。


チャルは後ろに跳び退き、その攻撃を躱す。

「良い反応ですな!」

フェイントを入れて横に範囲の広がった刺突が繰り出される。

それも難なく躱し、もう一度半身に構える。


聖瞳流 『指進』


後ろに引いた足の親指一本に瞬発的に力を込めて敵の懐に潜り込む技。


猫独特の脚力と相手の刃が伸び切った瞬間を狙い、入り込んだチャルはその伸び切った腕に何回か掴み掛かり、離すを繰り返した。


「? 折角の好機に腕を掴んだだけです‥くぁあ!???」

「これで、武器はしばらく持てないっすね。」

ガーディの腕が得物を握れなくなり剣を床に落とす。

「なんだ? なぜ痺れる様に腕が‥!?」


聖瞳流 『落腕』


経渠、精霊、内関といった腕のツボを順に絞め、痛みと共に武器を握れなくする技。


チャルはあの速さで服の上から正確にツボを絞めてその動きを封じる事に成功したのだ。

ガーディは咄嗟に剣を持ち替えて逆半身になって構える。右腕は下がったままで重心が定まっていない。

「腕の次は足を貰うっす。」


素早い動きでガーディの周りをぐるぐる回るチャル。ガーディがいくら突こうと空を切る。

「(はっ速い!)」

でも宣言では狙いは足。どこかで足の狙いを定める瞬間がある!そこを見逃さなければ!

「意識しちゃったっすね。」

「は!?」


聖瞳流 「破腕」


足に意識を集中したのに合わせて、ガーディの垂れ下がった右腕の脇に自分の右腕を差し込み、そのまま肩に手をやり、腰の回転力を加えて、外す。

「がぁぁぁぁぁあぁぁ!」


ビリヤードで背中側にキューを通して撞く時の様な姿勢で、同時に肘関節も極まる様に左手で相手の手首も持っているので肘と肩を同時に外し、腕回りの筋肉も一部断裂させる技。足に意識が行き、踏ん張った瞬間を狙い、踏ん張った事で余計に関節が極まる様にしたのだ。

余りの痛さに右腕を押さえるガーディ。自分の剣も床に落としてしまっている。


「じゃあ次は宣言通り足っす。」


聖瞳流 「瞳止」


間近にいたサウラも感じていた強い殺気をガーディと瞳を合わせてその一点に叩き込む。

「う‥あ‥足‥が。」

「おっ流石っすね。まだ口が利けるとは。」

所謂居竦みの術。殺気を叩き込み相手を金縛りにする術だ。あっちの世界でご主人が大量の蛇と遭遇した時に固まってしまった出来事から感覚を掴み、優しさの方が上回ってうまく使えなくなった技。一度ある出来事で暴走した時に使ったのが最後だ。


聖瞳流 「蓋挟」


立てた両拳を膝蓋骨の左右から叩きこみ、膝の皿を引っぺがす技。左足に決め、ガーディは後ろに倒れ込む。


「次は内臓の痛みっすね。」


聖瞳流 「肝蹴」 


チャルは左足を大きく振りかぶり、つま先を立ててガーディの脇腹に叩き込む。


「45度がよく言われる角度っすけど63度で下から蹴り上げると腎臓から肝臓、心臓まで衝撃が届きやすいって話っす。」


「がはぁ‥あっ‥あっうぇあ‥。」

「嗚咽がうるさいっすよ。」


腕、足、腹、最後に残るは‥


聖瞳流 「断頭」


ガーディの体を蹴り上げ、浮いた所で首裏に膝を当て、喉仏には肘を当ててそのまま挟み込みながら地面に叩きつける!




「もう良い。十分じゃチャル殿。」

最後の一撃を止めたのはサウラだった。

「それ以上やってしまっては‥チャル殿の心が変わる。カナリが悲しむ事はさせられん。」

魔法の縄でチャルの足と腕を捕まえて寸前の所で最後の攻撃を止めさせる。



「‥‥使って見て分かったっす。 厨二病くさいから封印とか言ってたのは方便で、これは『自分の心を守るために』使っては行けないと思ったものなんすね‥ご主人‥。」




ガーディは既に気絶している。最早遮るものはこの扉だけ。

「ここからは妾の敵じゃ。参ろう。」


「おや、激しい物音を立てていた割には静かに入ってきたのねサウラ。」

「これからは妾がうるさくなろうがのう。 伯母よ。貴女を刑に処す。」

「何の罪?」

「国家反逆罪じゃ。国賓への度重なる襲撃、国内に密入国の他国の兵団。裁かれぬ道理がない。」

「そうかしら?私は国を憂いて居るだけよ。貴女には任せられないから。」

「妾の力が足りておらんのは今日散々思い知った。だがそれらを補ってくれる信頼する者達と共に国を守って行くことが妾には出来ると信じている。そちらの言い分には言葉の頭に『私達が優雅に暮らすための』が付くのであろう?我の事だけを考えている連中を野放し、国の荒廃に繋げた事実を見て見ぬ振りし、我らの世代に丸投げじゃ。だから妾が国民から国王に選ばれたのじゃ。いい加減理解して貰いたいものじゃの。」

「我々の生活を維持してくれればそれでいいのだけれどね。」

「その生活基準に足る働きをなされるのならそれも叶いましょうが、女王の伯母というだけで何も継続をなされぬ上にこちらの邪魔をされ、更に敵国と密かに手を結ぶなど言語道断。それを売国奴というのじゃ!!!」

「私の手に残らない物がどうなろうと知った事ではないわ!私の望むものを与えてくれる者に就くだけよ!」

「なら個人で亡命でも何でもなされよ!それをせず民を巻き込み、謀を画策した罪を今ここで!妾が‥裁く!!」

「私より魔力も頭も劣るあなたには無理よ!さっさとこの国を渡しなさい!!」


大きい部屋が氷と炎で一瞬で包まれる。


その戦いをチャルはガーディを治しつつ見守ることになった。

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