共闘と門番
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メイド ハルエ
54話
「止まれーー!」
一行の乗ったサウ車は城の手前の門で衛兵に止められる。鉄条網のようなものが敷かれサウ車は通れそうもない。
「おっとこれはサウラ女王陛下。迎賓館にて御会食のはずでは?」
「国賓が襲撃されての。昼の事もあり伯母へ話を聞きに行くところじゃ。」
「なんと!それは一大事! ですが今は誰も通すなと云われております故に小官の判断では‥。」
「良い。其方ら無実の衛兵は下がっておれ。 すまんが皆ここから徒歩じゃが良いか?」
車内の全員が了承する。
「では参ろう。」
サウ車を降りて4人は突き進む。 たどり着いた大きめの城。流石国王を争った勢力の権威が見て取れる。夜で城の跳ね橋が上がり、城内へのルートは塞がれている。
「陛下?ノクトで渡りますか?」
「いや、妾は高い所が苦手じゃ。そのまま渡ろう。」
サウラは手をかざし、魔力を込め
「フリーザ・ブリッゾ。」
一瞬で堀を凍らせ、城門への道を作る。
「ヒュー!流石。」
氷の道を渡り、跳ね橋で塞がれた門まで着く。イセが女王に問いかける。
「この跳ね橋の厚さはどれくらいかしら?」
「厚さは丸太3本分、妾達の通れる大きさの穴じゃ。どれくらいで行けるかの?」
「1回ですわ。」
ボボボボボボボボボボボボ!!
1度に12個の魔法を同時に発動し円を描く様に火弾を穿つ。
跳ね橋の根元を焼き尽くし丸い入り口を作り出した。
「無詠唱で12発とは。ウチの魔法兵が歯が立たんかった理由が飲み込めたのじゃ。」
「この状況の元凶でカナリ様にも手を出した貴女にもぶち込みたい所ですわ。」
「カナリが目覚めてそれを望むなら、幾らでも受けよう。」
「それは絶対にありえませんからこうしてるんですの。」
「であろうの。すまぬ。」
難なく城内に入り、4人の登場に衛兵達は恐怖する。
「ヒェ!陛下!!」
「理由を知らぬ者は去ね!!妾達は伯母へ用がある!」
一斉に衛兵が引く。
大きな城をさらに進むと見知らぬ鎧の兵団が現れ、4人を取り囲んだ。
「!?こいつらは!」
「どうした?何かあるのか?」
「陛下。こいつらクオカーフの兵です。この鎧にこの剣の構え、クオカーフ戦で見覚えがあります。間違いない。」
「ほう。通じておったか。」
成程。伯母はクオカーフと繋がっておる事が表に出なければ、下手人が捕まってもクオカーフの間者扱いに出来る、責任や陰謀を隠し逃れる事が可能。最悪自分から下手人を差し出せば間者を捕まえた功績に出来ると踏んだか。どこまでも狡い女じゃの。昔から変わらぬ。
「『双翼の竜姫』!久しぶりだな!」
団の中の一際大柄な兵が声をかけてくる。
「‥‥あー‥誰だっけ? クオカーフとの戦で見たことあんだけど‥えーとシャネル・エルメス・ルイヴィトンだっけ?」
「シャーネ・ルメールス・ビートだ!!あの戦でもこの件りやっただろうが!」
「ノクトの黒炎で最後は尻尾巻いて逃げた事ぐらいしか覚えてねーよ! 陛下、コイツらアタイを御指名みたいなんで先をお急ぎ下さい。」
「うむ。任せたぞ。」
「チャル様もどうぞ先へ。私もここでメッキーと一緒に戦いますわ。」
「お願いするっす。」
2人を先に行かせ、残った2人で背中を合わせる。
「さーて鬱憤を晴らすとしましょうか?イセ様。」
「ええ。でも屋内でノクトちゃんは出せないでしょう?大丈夫ですの?『双翼の竜姫』さん。」
「それあいつらが勝手に付けただけで姫って柄じゃないから気に入って無いんだよなー。ノクトがいなくてもこれくらいは大丈夫。一応元軍隊長なんで。」
「頼もしいですわね。私の方も大丈夫ですわ。貴女の強さはこの身をもって経験済みですし、雑魚は私のこの怒りと新しい術式の餌食になって頂きますのでどうぞ遠慮なくあの大男をお仕留めなさって下さい。」
「おー怖。じゃあ遠慮無く。」
2人は身構えた。
「作戦会議は済んだか?ではやっちまえ!!」
号令と共に兵団数百人が一斉に襲い掛かる。
「フローリン・トランサ・ダー・サワンプ」
「なっなんだこりゃ!?」
イセが城の床を闇の沼地に変え、一気に足場を奪う。以前魔法学校でシーを沈めてしまってから使わないようにしていた術式だ。それに闇の力が加わり、抜け出そうとする者を闇の手が引き摺り込む。もがいている間に光弾で頭を撃ちぬいて気絶させていくという1:多数での有効な戦い方だ。
「ヒュー!多勢に無勢でどんな魔法を使うかと思ったけどやっぱスゲェな。」
メキは翼で飛び上がり、大男の方に向かっていく。大男は意外だったのか驚愕の表情をして状況を見ていた。
「こっこんな小娘が!?」
「侮らない方がいいぜ?ああ見えて人間族の一国の一級魔法使い様で巫女だからな。激情家だけど冷静さも持ってる。その証拠にほら、あんたの周りには沼を広げてないだろ?」
確かに男の周りには闇の沼は届いていない。メキに対するイセのお膳立てだ。
「ぬぅ‥!?」
「さああっちは気にせず、あの時の‥クオカーフ戦の続きと行こうや!!」
「舐めるなぁ!!」
お互いの刃が交差する音が高々と城内に響いた。
「始まった様じゃの。」
奥の階段を上がりながら2人は女王の伯母の部屋を目指す。
「サウラ女王。お聞きしたい事があるっす。」
「何じゃ?チャル殿。」
「ボクはご主人の過酷な過去を全て知る者っす。ご主人を好きになっちゃったのなら女王にも平等にお話しして置こうと思うっすけどどうするっすか?」
「それには及ばぬ。風呂で本人から全て聞いたからの。同志として付き合おうと思っておったが話を聞いてやはり愛おしくなってしまい、そのまま裸身で婚姻を迫ってしまった。今回の事は浮かれておった妾の失態じゃ。」
「無理もない事かもっすね。でも本人からは言えない事もあるっすからまた話がしたいっす。」
「約束しよう。それと平等に、ということは他の女子達もすでに知っておるということじゃな?」
「はいっす。ソーアの戦の時にお伝えしてるっす。」
「そうか。では皆も同じ気持ちなのじゃな。あの話を聞いて心揺れぬ者はおらぬ。チャル殿も怒り心頭の胸中じゃろう? 事の後に我を断罪して構わぬ。しかし今はこの怒りを憎き伯母へぶつけるまで辛抱して貰えぬか?」
「ボクはご主人の意向に従うっす。従者っすから。ただ‥もうこれ以上傷つくべき人じゃない人を、『自分達の都合優先で』傷つけた奴らには容赦しないってだけっす。」
「間違いないの。カナリはそれでも前線に立つんじゃろうが客観的に見ても正しい事をする人間を傷つけて良い訳がない。」
「だからボクが守るんす。」
その優しくも強い意思の込められた瞳にサウラは感動を覚える。
「チャル殿の様な強さが妾にも欲しいものじゃ。」
2人は伯母の部屋の前に辿り着いた。
扉の前には1人の門番が立っていた。姿勢と体格を見るにこの男も戦士経験者だろう。
「これは女王陛下。夜分にどうされましたかな?」
「白々しい事じゃのガーディ。伯母の側近のお主が知らぬわけあるまい?今朝の襲撃は伯母の影武者じゃった、カナリに矢を放った下手人の逃げ込みはこちらの城、城の中のクオカーフ兵達。どうあっても国を傾けさせる謀略の意図しか考えられぬわ。」
「いやはやそれは一大事ですな。ですが私は所詮雇われの身、命令に準じたまで。そして今はこの扉を守る事を命じられています。」
「側にいて、悪行と分かっていても止めもせず命令に為されるがままか‥。お主の忠義の形に興味は無いが最早範疇を超えておる。退かぬなら押して通るが良いな?」
「自分はただの部下。命令に従うまででございます。」
「国王の命でも従わぬと?」
「自分の主人は貴女の伯母のパラサ・ディーノ・ロロ様ですので。」
「分かった。」
それを合図にチャルが一歩前に踏み出す。
「おや、こちらの猫人族のお嬢さんが相手ですか。てっきり女王陛下が相手かと。」
「妾は妾の敵を相手にする。ガーディ、貴様には主人を手に掛けられた者の怒りを受けて貰おう。」
「ふむ。見た所無手の様ですが‥まあ命令に準じる事に変わりありません。どうぞ。」
敢えて武器を使わずに戦いを挑むチャル。
「ご主人の無念をこの身に乗せて‥ご主人が編み出し、構築した流派‥‥。」
ダアァァァァァァァン!!!
左足を床がめり込む程踏み込み、半身に構えるチャル。
「『聖瞳流 術式』で倒させて頂くっす。」




