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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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求婚とカナリの性質

突然の求婚。薮からスティック過ぎて訳わからない状況になっている。どこぞの大魔王が勇者を口説くシーンが頭をよぎった。


「えーっと‥唐突過ぎて頭が回っていないのですが‥?」

「言葉通りの意味じゃ。ソーアでの話を聞いてから今この時までで、勿論支える者はあろうが基本単身でありながら武力と知力で戦を止め、民を強く惹きつける献身と求心力、経験を持って使命を全うしようとする責任感、それを感じさせない柔和な態度。そして神の御使としての現在の立場。妾の夫として相応しいどころか妾の方が霞んでしまうくらいじゃ。」


先程までの冷静な表情はどこへやら。外に設けた簡易的な玉座からニコニコしながらこちらを誘う。周りもうずうずと興味津々だ。一方うちの仲間は呆気に取られている。安心してください俺もです。


「クオカーフは分かるかの?」

「ええ、ド・メキ元軍隊長にお聞きして‥求婚を蹴って戦をされたとか。」

「その通りじゃ、クオカーフ王は妾を取り込み国ごと奪おうとしたのじゃ。国の為になるのならとも一度考えたが、あやつには妾の守るべき祖国と貞操を捧げるに値せなんだ。その上戦を仕掛けてきたのだからの。こちらも全力で応戦したまでじゃ。」

サウラ女王の発言にうんうんと皆が頷く。クオカーフ王何しとん?


「カナリ殿となら添い遂げるのもありだと妾は感じておるのじゃ。カナリ殿は御使。といえど普通の人間族に見受けられる。其方の先程掲げた『魔人族と人間族の友好』の証にもなれると思わぬか?」


確かに言う通りにはなるだろうが、ウチの一同がワナワナと震えている。相手は一国の王。自分の今の感情を出して国家間に問題が生じても困るという思いと葛藤しながらも堪えてくれているのはありがたい。俺はその姿に後押しされ、返答する。

「この世界に来て2週間程度の人間には決めかねます。今回はソーアからの使者という立場で赴いているのでそれ以外の交渉はする気もありません。」

「固いのう。というかカナリ殿はこの世界に顕現してからそれ程しか経っておらぬのか!?それでこれだけの事業を成し遂げて、メキの奴も倒すとは‥ 末恐ろしいのじゃ。益々欲しくなる。」

「女王陛下の今し方仰られた通り、私は御使といえど人間族です。その血が国に入った所で大した益も無く、御使の肩書きが邪魔し、争いの元となるだけでしょう。僭越ながらとてもお美しい方でありますので惜しむ気持ちはないと言えば嘘になりますが、調和が使命の私としては丁重にお断りせざるを得ません。ご了承下さい。」

サウラ女王は目を一度見開いた後1つため息を吐いて

「はぁ‥振られてしもうたのじゃ。しかし使命感もカナリ殿の魅力の1つ。それに準ずるも良いが、しかしまぁ損な性格よの。周りの女子達も気が気でないじゃろうな?」

女子達からは全肯定の頷きで返される。背を向けている俺からは見えないけどそんな気がした。

「相分かった。その使命感と此度の仲介役と助力の功を讃え!ガサ国はベルレ神の御使カナリ殿の活動を全面的に支援する!元軍隊長ド・メキ!」

「ハッ!!」

「其方はガサ国代表の支援者としてカナリ殿に仕え、各種事業の後押しをせよ!」

「ハッ!全力を持って事に当たります!」

メキは再び跪き、頭を垂れて受諾する。これで今回の敗戦の咎は無くなり、正式に俺の支援者となった。大いに活躍して貰おう。

「妾は今回の一件を受諾し、正式に協定を結ぶ事をここに宣言する。皆も忙しくなるがよろしく頼むぞ!」

オー!!!っと歓声が上がり、今回の任務はこれで落着。あとは土壌改良を行なっていく事だ。これは運搬と耕運、拌種と合わせて3週間を見ておこう。


「ではカナリ殿。其方ら一行は本日は迎賓館に泊まって頂くのじゃ。先程の事業は3週間程度かかる話じゃったから一度ソーアやベルレ・ガルアに戻ってまたこちらに来る時、拠点となる住まいを用意しておこう。本日は迎賓館の温泉にでも浸かり、身体を休めて夜の宴で歓談と行こうではないか。」

「承知しました。流石にこの臭いを纏ったまま宴と行くわけにも参りませぬので有り難い限りです。」

「うむ。ではまた迎賓館で落ち合おう。ホタ。案内を頼む。」

「かしこまりました。では迎賓館へご案内致します。」

「頼むねホタ君。」

一行はホタの案内で迎賓館に向かう。



「何とか仲介役を全う出来そうでよかったよ。みんなもご苦労様。」

サウ車の車内で皆を労う。

「いやー何もしてないっすよ。ご主人の説明力と度胸の成果っす。」

「そうですわ。女王陛下も感心なさっていた様ですし、倍の金額の取引を成立させたんですもの。もっと誇るべきです。」

「アタイも正式な従者となって首の皮一枚繋がったしな。一安心さ。」

「実際の所今になって足に震えが来ているよ。緊張してる所にいきなり求婚だったから頭が追いつかなくなりそうだったんだ。みんなが国の事を思って黙って我慢してくれてるのを感じて冷静に返せた。ありがとう。」

「少しでも支えになれたなら良かったですわ。でもいきなりの求婚とは何を考えているのやらです。」

「イセ様がそれ言うっすか?w」

「恋路故に一目惚れという事もあります。ですが相手は一国の王。立場を考えるならああいう場ではなく相応の所作が必要になると思われるという事ですわ。」

「巫女のイセ様もそうだと思うけどなぁ‥。」

メキは顔を顰める。ここでハルエさんは別の見解を示す。

「でもメッキーから話は聞いていたにせよ、カナリ様の良い所を的確に示す眼力は流石一国の王といった感じでしたね。私は好感が持てました。」

「褒められて嬉しいって感覚は俺はあまりないですけどね。どこまでやっても足りないと思う事ばかりなので。」

「そう難しく考えずに素直に受け取ろうぜ主。」

「いや、嬉しくないというわけじゃなくて経験上、浮かれてしまうと一気に落っこちるような目にあってしまうってのが相次いで起こるから、その戒めというか予防策みたいなもんさ。」

「あー確かに最前線にいる時は気の緩みで致命傷を負うこともあるかーその癖が身についちゃってるんだな。」

流石軍人上がりのメキ。共感してもらえるとは思わなかった。

「常在戦場の構えでいるってなるとそういう考えや対策にも行き着くか。根っから戦闘民族なんだな主は。」

「ご理解いただけて嬉しいよ。確かに10歳から色々な分野の最前線にしかいないと思っているし、自衛隊にいた時の新隊員の戦闘訓練錬度判定会で班員で誓い合った「俺たちは戦闘民族サ◯ヤ人だ!」をずっと守っている所はある。」

「そんな民族がかの世界にいるのですか‥。」

「いや、あっちで人気の物語の世界の話です。俺たち世代の愛読書の登場人物の種族がそれなんですよ。」

「ああ架空の種族なんですのね。」

ここで漫画の話をしても長くなるんで代わりに一つ願い出る。

「戦いも色々な種類がありますからね。そのどれでも戦える様にはしておきたいという考えです。でも少し疲れたので迎賓館に着くまで数分寝てもよろしいですかね?」

どうぞどうぞと女性陣がダチョ◯倶楽部さんみたいに手を出して了承してくれた。お言葉に甘えて腕を組んで背をもたれ、意識を落とす。


「数分寝る‥またカナリ様の新しい技ですわね。」

「戦場じゃ割とこういう場面は多いぜイセ様。たとえ数分でも安全が確保できなきゃ睡眠は取れない。これも主がアタイ達を信頼してくれてる証なのさ。」

「軍人として通ずる所があるみたいですね。」

「そこら辺の部分じゃこの中で1番理解があるだろうね。でも今はこの可愛い寝顔を堪能していたい気がしてる。皆もそうだろ?」

「意義なしですわ。」


こうして数分の睡眠で女性陣の結束を深めながらサウ車は迎賓館に到着。


「ようこそ迎賓館へ。夜の宴にはまだ間がありますのでお部屋にご案内の後は当館自慢の温泉をご堪能ください。」


メイドさんの案内のまま部屋へ行き、用意されていた着替えを頂いてからその自慢の温泉へ向かう。


「おお。これは。」


浴場に入るとそこには屋根付きの露天風呂。温泉は2種類あり、一つは茶色味がかっていて、もう一つは乳白色という何とも珍しいというか異世界らしい温泉だ。身体を洗い、早速浸からせてもらう。


「ふあぁあぁ‥‥。」


乳白色の温泉に入るなり体から毒素が抜け出る様にスッキリしていく。白いものを摂取すると解毒作用があるのは食品関係だとあるあるだけど、この湯にもそういう作用があるのかな?

気持ちがどんどん癒されていく‥。




「堪能してくれておる様じゃな?」


「ワッヒャい!?」


湯煙で気づかなかった。 もう一種の温泉の奥からこちらに向かって来るのは、タオルで胸を押さえただけのこの国の王だった。

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