ガサと倍の女王
祝!50話・3000PV達成! 今回は説明回になるので長めです。 ご了承下さい。
大きな跳ね橋が降りてきて城への道が繋がる。跳ね橋の下には排水溝と思われる穴が空いていたので、ライ◯ハット?とか勝手に思っていた。
城内に入り、ホタ君の案内で王の間の謁見会場へ。
「立派なお城っすねぇ。」
「俺もこういうお城には入った事がないから少し緊張してるよ。でも構造を見るによく考えられて作られている。季節に応じて通気性や室温の管理がしやすく施工されてるね。」
「そのような事も知っておられて見ただけで分かるとは流石ですね。この城の者としても嬉しい限りです。」
「まあ城の知識もそれなりにね。」
先程の出来事の不安を隠すように、且つ狙われないか確認しつつ話をする。無作法だがキョロキョロしながら謁見の間に着いた。観音開きの扉が開かれ、貴族と衛兵が左右に並び、その中央に王は堂々と鎮座している。
前へ進み、声の聞こえる程度の距離に跪き、一同頭を下げて挨拶。
「お初にお目に掛かります。私はベルレ神によりこの世界に送られた御使、名を加成剛志といいます。どうぞカナリとお呼び下さい。」
「遠路はるばるお越し下さり、更に丁寧なご挨拶に痛み入る。妾がガサ国の王、サウラ・ディーノ・エンシスじゃ。」
銀髪の長い髪、妖艶な身体、赤い瞳が特徴的な美しいご婦人だ。クオカーフの王が娶りたくなるのも分かる気がする。
全員起立した所でサウラ女王は詫びの言葉を入れる。
「今し方事件の報告を聞いた。来て早々に大変なるご迷惑を掛けたようで申し訳ないな。迎えを装い、誘拐を企てたのはどうやら妾の伯母であったようじゃ。政治的にこの玉座を争ったのもあって今回事に及んだ様じゃな。部下達も妾の伯母故「私が迎えに行く。」と言われてサウ車を渡したようじゃ。身内と部下の非礼は妾の非礼。どうかお許し下され。」
一国の王が頭を下げる。ソーアに戦を仕掛けた当人とは思えない程に腰が低い。
「頭をお上げ下さい。私も前の世界では政治に携わっておりましたので心中をお察し致します。主権があやふやであれば国家観を持たずに己の利だけを追求する有象無象のバカどもが問題を放置し、国を荒廃させる。荒らされた部分の補填に外に手を伸ばす事になる。今回のソーアの件もそこからではないかと先程の事件で思い至る次第です。」
頭を上げたサウラ女王は目を見開いて驚いている。どうやらビンゴかな?
「カナリ殿の言葉、察しが良すぎて国の王として耳が痛いがまったくもってその通りじゃ。少子高齢化に合わせて今回の作物の問題、それらを放置しておきながら妾達の世代に丸投げされておってな。その状態を嘆き、この地位を獲得に動いたが王になった時には色々と手遅れであった。特に先に挙げた2つはな。今回ソーアに侵攻を決めたのも苦渋の決断じゃった‥。」
この人を見ていると以前の俺と同じ様に思える。誰かがやってくれる他力本願、私がやらなくてもの諦観で放置、放置からは悪化、悪化からは事故、それすら放置すれば悪化した状態を次世代に丸投げ、よって前世代の無責任行動となるのだ。それを食い止める為に俺は議員になり、この人は王になったということなのだ。責任感の強さが相まって切羽詰まり戦へ。地球の歴史から見ても枚挙にいとまがない。
「魔人族が人間族を軽視評価している者が多い事も聞いていますし、国の分けられ方から見てもそれは明白。政治の場で前の世代方が色々言った果て、国内の落とし所として戦に踏切る事になったという所でしょう。長というのは多種多様な意見をまとめて皆が納得する落とし所に落とし込み、そこに責任を持つ者ですから。」
だが今回の落とし所は落命と破壊の戦だった。許されることではない。容赦なく図星を突く俺の言葉に聞き入っているのか右手で目を覆ったままサウラ女王は口を開いた。
「カナリ殿の精通ぶりと察しの良さに心を痛めつけられる思いじゃ。反論の余地も無い。一体どれだけの物を経験すればその境地に至れるか伺いたいのじゃがそれは夜のもてなしの場でお聞きしたいと思う。今回の本題に入ろう。」
手招きされ、奥から出てきたのは『畑の土』 事前に用意して貰う手筈になっていた物で、これである『検査』をする必要があるのだ。
「言われていた通り、やられたズイとジャガンの畑の一部を今朝取ってここに運ばせた物だ。検査が必要との事じゃったがこれで良いのかの?」
ジャガンとはじゃがいもの事だ。考えが正しければこっちにも『似た様な奴』がいる筈なので用意して貰った。
「はい。では‥イデア!」
生み出したのは「顕微鏡」 これで見つけられる筈だ。枯れた根ごと土の一部を取り、顕微鏡で覗く。
「居ましたね。枯らせた原因が。」
こちらをご覧下さいとサウラ女王を手招きし、そいつの正体を見せる。
「これは‥!?何かの幼虫か?!」
そこにいたのは『シストセンチュウ』
根についたズイの発芽前の様に見えるのはそいつらの卵や嚢と呼ばれる物だ。
「こいつらが居着くと根から栄養分を摂られ、本体が枯れてしまうんです。寄生されて初年度はそれ程被害はありませんが、その状態のまま同じ場所で連作を続けた結果、ここまで被害が及んだと思われます。」
周りの貴族達も検分して貰い、現状を理解して頂く。各々虫の姿を見て気分を悪くし、退室する者も出た。
「ここにいる皆、よく理解した様じゃ。して、これの解決法を御教授願えるという話であったな?」
「はい。その前に非常に臭う事になりますので中庭などあればそこで実演をさせて頂きたく思います。よろしくお願いします。」
そう一同に促し、城内部の庭園で実演を行う。
「鼻と口に布を当てて置いてください。」
ここで取り出すのは大きめの透明なアクリルケースとその中にはシストセンチュウにやられたズイの入った土を入れている。アイテムBOXから角型スコップを取り出し、同時にある物を取り出し、アクリルケースに放り込んだ。入れた途端に異臭が辺りを漂い、一同はウッとなる。
入れたのはブルガンジーの糞から作った『乾燥堆肥』
臭いに慣れていないとこれはキツイと思い、外での実演とした。拡大鏡をイデアで生み出し、皆さんが見れる様にしてから更に説明を続ける。
「これでこの土の中から上の乾燥堆肥にシストセンチュウが移動します。シストセンチュウ・ハスティード!」
シストセンチュウの動きを早め、移動していく様子を見てもらう。
「おお。」
「シストセンチュウのメスが温かい乾燥堆肥に移動し、堆肥の作用で孵化が早まり、産まれた先ではズイの根が無い為、幼虫は餓死します。 その頃合いを見計らって種を蒔けばシストセンチュウにやられずにズイが育つという事です。」
「その頃合いというのはどれくらいなのじゃ?」
「堆肥を撒いて2〜3週間という所です。その間は風魔法などを用いて街内に臭いが寄って来ない対策を施すと良いでしょう。魔法が使える方々は有り余っているでしょうし(笑)」
一同が笑ってしまって臭いを吸い込んでしまい、咽せる人も出る中サウラ女王は冷静に質問を続ける。
「堆肥の素を生み出すブルガンジーをこちらで飼おうにもブルガンジーの餌になる草が育たぬのじゃ。」
「それも考慮済みで、先程から土をこちらに用意しておりました。」
ビーカーに用意された土と水を入れて混ぜ、しばらく置いていた。すっかり上澄み液が出来ている。そこに投入するのは水を調べる際に用いるリトマス試験紙の土壌版『ph試験紙』だ。これを2秒ほど上澄み液に浸す。
「‥‥やはり酸性が強すぎる土の様ですね。無知で恐縮ですがガサ国には海はございますか?」
「北に海があるのじゃ。」
「では貝殻があると思うのですがそれを大量にこちらにお持ち頂けますか?」
「了解したのじゃ。 ヒラドに向けて伝令!貝殻を大量に収集し、こちらに届けさせよ!」
「この貝殻を砕いて粉に近い状態にして土壌に蒔き酸性を中和し、こちらではなんと呼ぶか分かりませんがブルガンジーの餌となるクローバーを栽培、ブルガンジーから乾燥堆肥を作り、シストセンチュウを減滅。ズイと‥ジャガンでしたか?を栽培し国家の事情改善に充てる。こちらを実行しましょう。出来る限りお手伝い致します。」
一同は大盛り上がり。改善の兆しが見えたからか臭さもそっちのけで喜んでいる。
そんな中でもサウラ女王は冷静だ。
「作物の改善策は分かったのじゃ。これに関係して此度の戦への『賠償』もここに掛かってくるのであろう?その案を聞かせてもらえるか?」
賠償という言葉で一同は盛り上がりから一気に冷静になった。
「はい。今回この改善策に必要な物、健康なズイの種苗、ブルガンジー、堆肥、餌のクローバーの種苗、貝殻だけではおそらく土壌の中和が種播きに間に合わないのでソーアの谷にあったドロマイトという苦灰岩を使い、中和とその早さの調節を行います。これらの運搬、作業費用を含めた額をソーア及び所属国クマポンから標準額の5割り増しで担って頂きたい。」
「5割り増し‥!?」「人間族から‥」
やはりここで人間族軽視の頭が働いてくるか‥ 心に緊張が走るが言葉を続ける。
「これは今回の被害項目の補填に充てられる金額です。算出根拠は復旧までを1〜2年と定めた場合に必要になる各項目、及びこちらに物資を送るソーア側の生産力に支障をきたさずに行う為の必要経費。そして期間はこちらの国力回復目処と合わせて3年とし、両方の国家運営を妨げてしまわぬ様、期間限定の協定を結んで頂きたい。」
期間限定なら‥いやしかし人間と‥と言った参列者の思惑の声が耳に入る。長年の固定観念である人間族軽視はなかなかに厄介なようだ。やはり最後はこの名前に頼る他ないか‥。
「ベルレ神よりこの世界の調和を使命として送られた者として、此度の一件を魔人族と人間族の友好への第一歩として落とし込む事をお願いしたい。」
ベルレ神の名前を出した事で一同の声が止んだ。そしてその視線はサウラ女王1人に注がれる。
それを確認した所で女王は口を開いた。
「‥‥倍じゃ。」
最初の発言がそれだった。参列者はざわめく。
「今のカナリ殿の説明ではソーア復旧の為の必要経費分しか提示されていない。それでは詫びを入れた事にはならないじゃろう。『元に戻す』のではなく、詫びを入れ『友好』を考えるのなら必要以上にこちらが負担すべきであろうな。」
実際の所その通り。必要経費分を負担して『元に戻す』が最低ラインと思っていて提示した。
「協定の内容の詳細は後日何らかの場を設けてクマポンとソーアの代表を招いて決めようと思うが良いか?」
「最初からそのつもりです。ご随意に。」
「フフフw カナリ殿がどこまで計算尽くしておったのかは分からんが、『倍』でその各種費用を負担し、その協定を結び、此度の一件の落着とする!」
一同はそれに拍手で賛同した。
ここにいるのはおそらく王位に就かれた頃からの支援者達なのだろう。女王の決定に従う者達で周りを固めているとなると今朝の事件の発生も頷けるな。
「ここでもう1つ提案じゃ。」
その一言で拍手が止む。
「妾の夫にならぬか?」
そろそろ誰かにキャラデザでも頼んでみようかなーとか ないか




