餞別とパーティ編成
出発の朝。街の南の外れにやってきた。見送りに来たのはガルツ神官、ギルドマスターのトウ、魔道具屋のリューコ、農家のミクニとケイブ、そしてイセとハルエコンビだ。
「ではカナリ様。ご帰還をお待ちしております。」
「ガルツ神官ありがとうございます。必ず戻ります。」
「昨日貰ったポガポガは処理して氷室に入れているからな。帰ってきたらまたカツサンドにでもするといい。」
「トウさん。分かりました。いざ使うとなれば遠慮なくどうぞ。」
「ちゃんと帰って来いってこったよ!」
バシバシと俺の背中を叩く。あーそういう事ね。
「私からはまずこれ、あんたの従者用の札を2枚。それと預かってた槍さ。」
魔道具屋のリューコさんからは通信機能付きの認識札とや‥槍?
「これは‥。」
確かに槍ではあるのだが先端部分が異常に装甲が為されている?
「槍の持ち手の所に触れて少し魔力を込めてみなよ。」
言われた通り、持ち手を握り気合いを込める要領で魔力を込めると、装甲の部分は外れ、勝手に手甲と指開き手袋になって装着された。
「おお!リアルア◯ドだ!」
「りある?あむど?あっちの世界ではそんな呼び方するのかい?よくわかんないけども‥‥でもそういうの男の子は好きだろ?」
「大好き。」
そこにいた全員が俺を見て驚く。多分この世界に来て1番の笑顔をしてたかも知れない。
「左の方には障壁、右の方には腕力強化の効果を載せてる。もし肉弾戦になってもこれなら相応に戦えるだろうさ。」
「そうならない事を願いますがこれは今後にも必要な物。ありがとうございます。」
十分過ぎる。マジで小学生からの夢でした。
「私が出来るとしちゃこれぐらいさ。‥‥例の件、よろしく頼むよ。」
「了解しました。」
頭を下げ、槍は一旦アイテムBOXへ。
「ご無沙汰してます。」
「ケイブさん!ご無沙汰しています。ソーアでもペッポの実は大活躍でした!持たせて貰えて本当に感謝です!この報告も出来ずにいて申し訳ありませんでした。」
「いえいえそんな!カナリ様が畑を守って下さったお陰で今年は豊作になりそうですし、支援もして頂ける算段を取り付けると会議で決まったと聞いております。そこまでして頂いているのにこれしか手渡せずにいる自分が情けない限りで‥‥。ですが役に立っていたのなら本当に良かったです。」
「ペッポの実で味付けした肉を頬張って笑顔になっているソーアの人たちの顔をお見せしたかった。またそのペッポの実で笑顔を増やして行きましょう。」
「はい!今回もお渡しする品は変わりませんが、餞別としてお受け取りください!」
ペッポの実と大人しい印象のケイブさんから強い口調のエールを受け取る。
「俺からは昨日言った通りだ。頑張ってやって来な。」
ミクニは腕組みしてどんと構えて行ってこいのスタイル。何か落ち着くな。と言いつつその隣には落ち着かない格好の御仁が。
「イセ様?その格好は?」
「勿論同行する為ですわ。」
「え?」
「え?」
なんとイセはこの交渉に同行する気だったのだ。
「いや!今度は戦ではないにしろ戦争を仕掛けて来た国の本丸に行くんですよ?国からの依頼ではないですし、交渉決裂になんてなったら危険が!」
「決裂にならなければ大丈夫ですわよね?あと向かうのは魔人族の国。魔法によって何か危害が加えられる可能性も大いにありますわ。そんな時に対抗できる優秀な魔法使いが必要ではありませんこと?」
「巫女としてのお務めもあるでしょう?そちらは大丈夫なのですか?」
「巫女としての大きな務めはしばらくはない。交渉が終わってイセだけ帰還することぐらいはあるかもだがな。」
代わりの返答をくれたのはガルツ神官だ。
「いや父親として止めないんですか?」
「戦に赴くのではなく交渉だ。いずれこの子の能力は人間国を代表するものになり、魔人国とのやりとりも増えることになろう。その社会勉強として今回は同行をお願いしたい。先の戦の延長と思ってどうか。」
予想するにそうイセから説得されたんですね。
「はあ‥ ではご同行をお願いします。イセ様が来るということは。」
「はい。私も今回の交渉の旅にご同行させていただきます。」
ですよねー。
結局ソーアから帰還した時と同じメンバーでガサへと向かうことになった。程なくして黒い影と1人の影が空に現れる。
「主!ただいま参りました!」
従者 元ガサ国軍隊長 ド・メキ とその召喚獣の黒龍ノクトちゃんだ。
ズズンと空き地に降り立った1人と一頭。見送りの皆さんは驚きのあまり声を失っている。
「あーお見送りの方々か?そう驚かないでくれって言う方が無理か。主の従者のド・メキとこっちは黒龍のノクト。以後お見知り置きをってことで。」
「(飯の時の話で聞いたけど本当にこいつに勝ったのか?)」
ミクニが耳打ちで聞いてきた。
「ああそうだよ。両手がパンパンになるぐらい二刀流同士で斬撃合戦。」
「おっかねぇなぁ‥。戦いもそれで勝っちまうお前さんもよ。」
「竜の攻撃は俺には無効だったからね。そこはありがたかったかな。」
ひえーとミクニは戦いの想像でもしたのか少し後ろに下がった。
「お迎えご苦労様メキ。あっちこっち巡ってもらって悪いね。ガサでもソーアでも大丈夫だったかい?」
「ソーアではシーちゃんがずっと付いていてくれて街の人間やゴシマの復興支援隊からは何もなかった。」
「シーちゃん?随分仲良くなったんだね?」
「本人がそう呼べって訊かなくてさ‥ シー様って言ったらシーちゃん!って怒るんだよ‥。」
「それはあの子なりの優しさなんだ。沈んだ心や関係性、蟠りを解く為に心の解放と親しみが生まれるようにそう仕向ける子なんだ。付き合ってやっておくれ。」
「え?なんでそんなこと分かるんだ?」
「この人はリューコさん。イセ様とシーさんの魔法学校の先輩なんだ。」
「へーそれで!アタイの為を思ってやってくれてるのなら全然大丈夫だ。あとガサではホタのやつが全力で国王を説得してくれていたおかげでアタイが行っても全然お咎めはなかった。他の軍隊長からは超ーー嫌味だらけだったけど!」
「どうなるかはこの交渉次第だね。なんとかして見せるから安心して。」
「その笑顔にはキュンとしちまうな‥。頼むぜ主。」
そう言ってメキは俺に顔を近づける。
「メッキー?そろそろ出発しませんこと?」
間に黒いオーラを放つイセが割って入る。
「うわぁ!イセ様! って一緒に行くんだっけ?」
「行くみたい。」
「はー‥。危険かもって言うのに‥。」
「俺もさっき同じ事言ってたよ‥。」
ではお乗りくださいとメキがノクトちゃんの背に促す。
「またよろしくね。ノクトちゃん。」
「グルぅ!」
みんなが乗ってノクトちゃんは翼を開き飛び上がる。
「では行ってきます!」
俺たちはガサの首都タケオに向かった。




