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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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チャルの献身とイセの秘密

「あにゃ?お帰りなさいっすご主人。早かったすね?」


夕飯とか朝帰りとかまで考えていたのかチャルは不思議そうにしている。


「いやぁ‥何だろう‥疲れたというか考えさせられたというか‥。」

「何かあったんすね。聞くっすよ。」

今日一日の出来事を話す。チャルはあー‥と同情の顔をして言う。

「そこまで積極的になっちゃったっすかぁ‥。実はイセ様にご主人の好きな物や趣向を聞き出せない人には任せられないって前に言っちゃったんすよー。話の流れで。」

それはソーアに向かう馬車で眠らされた時に話した内容だったらしい。イセが上等ですわーー!!と叫んで俺が飛び起きた時そんな事話してたのか。それを素直に行動に移してきたって事ね。

「まぁそれで対応と欲望と使命と倫理観で頭ごっちゃになっちゃってね。事業考えるより疲労感出てるよ。」

「あちゃーお疲れ様っす。だから性的、そっちの言葉でエロい体臭出てるんすねー。」

「マジか!?そんなの出てる!?」

慌てて腕や服の匂いを嗅ぐ。だが俺には分からない。

「はいっす。フェロモンでしたっけ?それが出てて、多分その腕輪も効果を倍増してるっすね。それに当てられてイセ様も大胆になったのかもしれないっす。」

「何てこったい‥。」

せっかく選んで貰ったからと着けてたらそんな事に‥。


「そこで‥‥ご主人が良ければ‥。」

少し目を逸らして指をいじり、恥ずかしながらチャルは

「昨日温泉でミクニさんに言われてたこと‥‥‥するっすか?」

「!!」

耳を伏せて上目遣いに言われると‥‥ いやダメだ!

「ごめん‥多分一度すると歯止めが効かなくなる自信しかない。従者として見られなくなっちゃうよ‥。」

「それはそれで嬉しい気がするっすけど‥ご主人の使命に影響があるといけないっすね‥。」

大分勇気を出して言ってくれたんだろう。昨晩から色々と考えてくれていたのも伝わってきた。イセとのデートで解放してこなかった場合は自分がと覚悟を決めてくれていたのかもしれない。

でも流石に今の関係で見れない状態になるのは事業が覚束なくなる未来が待っているとはっきり分かる。それではこの世界での存在意義が無い。それでもチャルは優しい。

「ボクはいつでも良いっすからね?ご主人が無理して苦しんだりする事の方がイヤっすからね?そこは分かって欲しいっすよ?」

本当優しい子だよ‥。


「大丈夫。あとチャルに魅力が無いとかではないからそこは安心してね?」

にゃーと頭を撫でるとチャルの顔は綻び、落ち着いてゴロゴロ言っている。


「とりあえずこれから例の研究に入るよ。フェロモンの匂いも分からなくなるくらい『臭く』なるからそのつもりで。」

「うぇ臭くなるんすか‥。まぁ必要な事っすもんね 了解っす。」


しばらくしてフルイチさんに頼んでいたものが到着し、受け取る時からすでにヤバかった。アイテムBOXに即入れて研究の為の地下室にて再度取り出しながらイデアで研究に必要な物を生み出し、ズイの研究を開始する。



それから3日引き篭もった。



食事は扉の前に置いて貰い、地下室の臭いを出さぬ様に努めて研究に打ち込んだ。そして各種実験も行い、見事成功し今度の交渉に持って行ける状態にして、ようやく天の岩戸から出られる事に。

地下室から出てきてすぐに風呂に直行。入念に身体を洗ってから温泉で3日間の疲れを癒す。


「ふいーーさっぱりしたー。」

「お疲れ様っす!あんなに引き篭もるなんて思わなかったっすけど体調は大丈夫っすか?」

「ああなんとか。これで交渉に臨めるし、2日で消耗を戻してガサに向かうとするよ。メキから連絡は来てるかい?」

「はいっす。国王からは歓迎するとの事らしいっす。ノクトちゃんに乗って迎えに来るって事でホタさんとメキさん共に処罰とかは今は無いみたいっす。」

「今は‥ね。処罰に関しては俺の交渉次第だろうな。頑張ろう。破談になっても戦える様に準備もしておこうかな。」

「その方が良さそうっすね。」

「事によっては数日から数週間あちらで作業する事になるからこの家もフルイチさんに管理を頼もう。地下室の洗浄は行く前に済ませないと。」

「それは明日考えるとしてご飯にするっすよ。たっぷり食べて元気になるっす。」

いつもの1.5倍の量を注文して晩御飯を平らげる。冷えたサーサの茶を飲み干し、落ち着くといつもはミクニが来るタイミングだが違う人が声をかけてきた。

「御使様じゃないか。晩御飯は終わっちゃったのかい?」

イセの魔法学校の先輩で魔道具店の店主リューコさんだ。


「今日は買ってくれた腕輪は着けてくれて無いんだね。ちょいと寂しいな。」

「先程まで研究に没頭していましたのでね。臭いが出るような作業でしたので外してました。」

「なんだそういうことかい。てっきり効果が出過ぎたからかと思ったよw」

性欲上昇の効果とかずっと着けてられませんて。


「では研究お疲れ様。乾杯。」

酒を注文してコップとジョッキで乾杯。

「かーやっぱり酒は美味いもんだ。久々に飲んだよ。」

「それにしては良い飲みっぷりですね。」

「前にガッツリと飲んでた事はあったからねー。そこで慣れちゃったかな?」

それはおそらく婚約者の件の頃の話だろうな。あまり深掘りはしない方が無難かも。

「この美味い酒の肴にイセの学生時代の話を少し聞きたくないかい?」

どうやら酒よりもこちらが目的の様だ。イセの事を可愛がっていた様だし伝えたい事があるんだろう。

「そうですね。お願いします。」

俺は即答し、その何かを聞く事にした。流石察しが良いとリューコさんは語り出す。


「今でこそあんな積極的だが、昔は大人しくてね。母親が亡くなって自分が巫女になる為無理してる気概があった。私は開発局の設立の為、卒業する年の後も学校に残る事になっていたのと同郷という事で寮で同室に、三カ国の学会でシーも同室になり、2人まとめて相手をしてた。」

ふむ。この人が後の各国のトップ魔法使いを育てた方なのは一昨日のデートでイセに聞いた通り。あの2人を抑えて指導出来るとはこの人も相当な実力者なんだと思われる。

「シーもそこそこ魔力は魔人族並みにあるがイセの魔力は魔人族の最上位と比べても遜色ない位の量を内包している事に検査で気づいた。計測が不能だったんだ。」

イセ様ではなくイセと呼び捨てか。魔法学校の先輩として話しているんだな。

「シーさんから教師達が光魔法で目をやられたり、シーさんを沼化して沈めたりしていた事は聞いてました。やはり魔力消費は大きい魔法なんですかね?」

「その2つ以外も事件になったのは幾つもあるし、地面全部を沼化に一瞬で出来るなんて魔人族でも難しい事さ。最終的には属性別12個同時無詠唱魔法だよ?とんでもないよ。」


そのまま一口酒を煽り、はーあと何か思い出したのか、ため息を1つ吐く。


「私は開発局の立ち上がりと共に真っ先にイセの魔力抑制の為の魔道具を作った。あの子の身体が出来上がっても自らの魔法や魔力量で己自身を傷付けちまうのが目に見えてたからね。だが抑止力も強過ぎれば同じ事になっちゃうわけで、『強い魔力か肉体を持つ』者が側にいる必要が出てきたんだ。ここまで言えば御使様なら分かるだろう?」


「ハルエさんに持たせているという事ですか‥。」


抑止力の道具を持っていられる肉体の持ち主でイセの側にいる者とくれば他にない。


「そうさ。学生時代はシーと私、こちらに来てからはハルエさんがそれを所持してイセを守っているんだよ。イセ自身の魔力から。」

「それを‥イセ自身は知っているのですか?」

「伝えてある。だから一昨日2人で来た時は内心少し焦った。でもせっかくの逢引きだ。従者なんて連れる訳はないわな。イセ自身がどこかに身に着けて耐えていたんだろうが耐えようと思うと人は焦る。どこかせっかちだと感じなかったかい?」

「唇を奪って来たり、速さがある強引な話し方、夜までついて来そうな勢いだったけど夕方解散‥色々思い当たりますね。」

「速攻で唇に行くとはよっぽど焦ってたんだろうね‥焚き付けたの私だけど。」

そうですよ貴女ですよ。彼女は話を続ける。


「本来ならそれを付けていても、恋の力で根性出して耐えていても、何らかの症状や現象が見られるんだが店で見ていてそれは無かった。つまり御使様の何かで守られていると考えられるのさ。」


守られていると聞いて思いつくのは一つ。



「ベルレ神の加護‥‥。」


「それだ。御使様は生きる『神器』なんだよ。イセにとってさ。」


俺と一緒にいることで魔力の暴走は抑えられるというわけか‥ そんな気が高まるぅ溢れるぅ状態の人間を抑える役目は戦闘民族の宿命なのかね。


「先輩の私としては後輩の暴走の危機を止められる力がある人と添い遂げて欲しい。当の本人も乗り気だ。それにどう贔屓目に見てもイセは可愛いし娶らない理由がないと思うんだけどね。」

「私の蟠り(わだかまり)としては年齢と使命ともう一つですがこちらでは15で成人なんですもんね。使命にも理解と関わってくれる事は間違いないですし。最後のもう一つが払拭出来ていない段階ではまだそれを考えていないという事で。」

「じゅうしゃさーーん こんなこと言ってるーーー。 なんとかならないのーーー?」

急にキャラ変わんないで。

「ボクはーーご主人の意向をーー尊重するっすよーー?」

チャルも合わせてこっち見んな。


「まぁ考えてはくれているって事は分かったよ。よく考えたら御使様はこの世界に来て短いし、少しずつイセを知って決めてくれれば良い。御子が出来ればその子が能力を継いでいてイセを守れて御使様は自由に動けるかもしれないしね。」

周りの皆は御子に期待し過ぎだな。だがそういう事は未確認だし確認しようが今の所ない。

「私みたいに添い遂げる時期を逃す事が無いように早めにお願いするよ。」

今度は急にテンションが下がってそんな一言を口にする。

「‥‥婚約者の件はイセ様から聞いてます。オタイオとクオカーフの2つに赴いた時に行方を当たりますよ。」

目を見開いて少し涙ぐむリューコさん。ずっと待っている婚約者を愛している証拠が顔に出た。


「イセ‥ おしゃべりなんだから‥ 御使様は武器を持ってるのかい?」

唐突な質問に一瞬たじろぐ。今武器の話?

「基本武器は自分で生み出しますが魔力切れを想定し、槍を一本だけ持っています。」

「じゃあそれに効果を上乗せするよ。明後日にはガサに行くんだっけ?それまでに何か付けておく。」

アイテムBOXからアイテムBOXへ、食堂の皆が一瞬ギョッとするのを宥めながら槍を渡す。

「依頼料としちゃ安いかもだけど‥良いの付けるから、彼とイセの事‥頼むね。」


そう言ってリューコさんは席を立った。  



酒代と食事代を俺にツケて。

ちょいと本業が忙しく次回以降は2日1話ペースの更新が遅れる時が出るかも知れません。ご了承下さい。

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