ギルドと心の闇
今でもこれはよくなります。
会議中は外で待っていたチャルと合流し、屋敷を後にする。
サウ車で市場へ向かって貰い、今回の物流で出た項目のチェックも兼ねて物色だ。
ソーア戦に行く前にも市場は見て回ったが流石に必要な物を見ていただけで全体は把握出来ていない。
「こう見るとやはり木造品の割合は食器や家具が主で、小物の割合は少ないなぁ。」
「会議でそんな事が出たんすか?」
「うん。あっちの世界での玩具を木で作って流通に乗せる事が決まったよ。」
「へー!玩具っすか!」
「もっと机の上で出来るものも普及したいところだけど、一昨日のトランプとかと一緒で賭博に発展する恐れがあるからね。法整備まではまだちょっと出来なさそうだから一旦保留して、体を動かす系の玩具の流通にしたんだ。」
「色々考えなきゃなんすねぇ‥お疲れ様っすご主人。」
「ありがとうチャル。」
現場確認が出来たところでそのまま少し買い出しをし、ギルドへ顔を出す。
「あ!御使様!帰って来られたんですね!お疲れ様です!」
受付嬢に頼み、ギルドマスターの所へ。
「おお!カナリ様!ご無事でなにより!」
「なんとか無事帰って来れました。こちらはお変わりありませんか?」
「たった数日でそこまで変わるもんじゃないが、ポガポガの買取りを始めて今4頭持って来られている所だ。早い所解体してウチの氷室に突っ込んでおかないとな。」
「ああ氷室があるんですね。」
「水と風の魔法使いを雇って定期的に冷やして貰っている。肉を捌く事はこれまでもあったからな。雇用にも金が掛かるからこう頻繁に肉が入るとその額もバカにならん。」
「そこは先程の会議で人手に対しての補助金をまずは4分の1ですが出す話で進めていますよ。また御触れが来ると思いますので申請をお願いしますね。」
「おお!流石分かっているな!こちらから持ちかける前に手を打っているとは!」
決まった事はすぐに伝える。実働派議員の名残りだ。取り扱う案件が多すぎて忘れてしまう前にというのが本音だが。
「ポガポガソースカツサンドは一定に提供出来そうですかね?」
「この数日の動きと情報ではなんとも言えないがな。食肉の量的には作れそうだ。」
「ふむ。需要と供給量の関係を見定める必要がありますが、今街の人から頂いた催し物の企画を投票で決める事業を始めます。どの催し物が開催になるかは分かりませんが、そこで宣伝も兼ねて売り、街に浸透させて行く事を提案します。」
「まずは知られてから‥か。うちはギルドであって商売屋じゃないからな。そこは別の者が担って貰えると助かる。」
「心得てます。いざとなれば私が売り子しますよ。」
「そんな事までやれるのか?」
「そりゃ学生の頃から売り子してましたからね。ウチの父親が売る時の倍の売り上げを叩き出してたんで問題ないと思いますよ。」
「それは凄いな!その客捌きを一度拝ませて貰うのも一興だ。その時になったらまた声を掛けてくれ。」
ギルドの状態確認と報告は済み、脳疲労も感じたのでその場を後にする。
歩いて家まで帰り、一息つく。
「腹減った〜‥。」
「もうすぐ晩御飯出してくれる時間になるっすからもう少しの辛抱っすよ。」
机に突っ伏した俺の頭を撫でて風呂の準備をし始める。だが‥
「‥‥すまない‥ちょっと地下室行って来る‥。」
「!!!‥‥分かったっす‥。」
コンコン
「はいっす‥。」
家の扉を開けるとミクニが立っていた。
「カナリ様ーいるかー?飯食いながら今日の会議の話を聞こうとアワラに来てないからこっちに見に来たんだが‥」
「うああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ミクニはその叫び声を聞いて腰を抜かしそうになる。
「なっ何だぁ!?カナリ様か!?」
「そうっす‥。」
中に入り、家の扉を閉める。地下室への扉越しではあるが大声で叫び散らすカナリの声には内容も伴ったものも聞こえて来た。
「人口減少を引き起こしておいてそれに伴う施策に反対出来ると思ってんのか!!根幹の原因に対処せずその原因にまでなってしまってる奴らが何を言えるんじゃ!!陳情書上げて来た代表2人の娘と同級生じゃ俺は!自分の娘は次世代じゃねえのか!その娘の同級生自殺に追いやっておきながら、その原因となった親世代の代表がこの議会の場で「その子の事知らんし。」とか無責任な発言する様な状況にするぐらい次世代に対してと対外事業をサボって来た結果をこの場で披露してる体たらくで、よくこの責任を問われる場にこんなもん堂々と持って来れたな!2年半街ぐるぐる回って署名集めてる時間で外の人間にどれだけ声掛けれて街に引っ張って来れる時間があったんじゃ!!「若いもんにやってもらわな。」とか他力本願でいて良しな勝手な事を何遍言った!?何遍同世代に言わせてお前らが詰まらせた泥さらい俺らにやらせとんじゃ!!本来の次世代に対してそんな事やれて当然とか寛容と無責任履き違えた上に次世代の責任おっ放しにしてるやつが!義務と権利の関係性を分かってねぇ行動してるやつが!どう今の学生に教えるんじゃ!この陳情書の代表に名を連ねてる元教育長は!?俺ら本来の次世代だけじゃなくさらに次の世代まで殺された!そんな街目指してたんか!40年前のお前ら世代共はよ!!!!!」
「これは‥。」
ミクニはおそらくカナリは教育関係と次世代の事で怒り散らしている事が分かった。
「これはご主人の議員時代の話っすね‥。根幹の人口減少問題に対処せずそこから発生した問題の対策案を反対してきた議員と教育関連の連中に対してキレた場面っす。」
「これがあのカナリ様だってのが信じられねぇな‥。優しそうな笑顔で強く明るい印象しかねえから‥。」
「今日の会議でこの頭にこびり付いた場面が甦っちゃったんす。そして連鎖的に他の出来事も‥。いつもは他の事に全力で対応する事で抑えてるみたいっすけど、知識や経験を活かすほどその負の心の澱は溜まって行き、ふとしたキッカケや体力の消耗で‥ こうやって呼び起こす事になるんす‥。」
チャルが説明している最中もこの怒りと悲しみの叫び声は止まない。
「だから‥ こんな状態を抱えて他の人、特に女性と深い関係になれば確実にこの状態が相手に向けられてしまう場面になる。そういう迷惑で数々の負の技術の歯止めが効かなくなればこの世界でも生きていけない。だからといって使命には人と関わらずやれる事はない。発展と継続の為に必要な関係は築くけど縁談や性的な接触は避ける事をどうやら選択したんすねご主人は。」
女がこれだけ周りにいても浮ついた話題が出て来ないのはそんな自制心からだったのか。
「ボクは‥‥前の世界でその悲しみの一つになってるからこの状態を回復することは出来ないっす‥。」
そう言って手に癒しの魔法の光を握りしめながらチャルは涙を流す‥。
「‥お前さんの苦悩は何となく分かったよ。俺たちは頼り過ぎず、むしろ助ける気持ちで日々の生活を送れってこったな。それぐらいしかまだ出来ねえけど協力は惜しまねぇ。街のためになることを任せきって自分たちでやらねぇわけにもいかねぇしな。」
チャルの頭に手を乗せ、今日の所は俺に任しときなと伝える。そのまま地下室の扉を開けカナリの下へ向かう。
「まずは裸の付き合いから始めるぜ。」




