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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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キングサイズと祝杯

「イセ!カナリ様!よくぞ無事で戻られた!」

ガルツ神官は両手を広げて愛娘を抱きしめ、帰還を祝う。

「これにて、イセ様の護衛の任務は完了です。新たな任務も増えて恐縮ですが、ひとまず無事イセ様をここに5体満足で帰還させる事が出来たので良かったです。」

「ありがとうございます。私の願いを聞いてくださった事、カナリ様とベルレ神に感謝致します。先に来た連絡で研究に使って頂く部屋は用意させました。思う存分使ってガサとの取引にお役立て下さい。詳細はフルイチから。」

ガルツ神官の執事フルイチさんが前に出て説明を始める。


「ハッ。カナリ様の泊まっておられた宿『アワラ』の2つ隣に一軒家がございます。そちらは現在、借家となっておりまして、今回の件をお聞きし、手配致しました。内装、家具、調理器具、水場も問題なくお使い頂けます。研究に必要なものは御用命あればすぐにご用意させて頂く所存です。」

「ありがとうございます。対国が相手でありますので念入りに行える環境があるのは心強い。」

部屋ではなく家であった事は驚きだが、期日までに済ませるにはそれぐらい集中出来る環境は必須。これで心置きなく事に臨めそうだ。

「では私とチャルはそちらの方に向かいます。各種事業の進捗具合は明日の朝会議を、イセ様との件は明後日に。それでよろしいでしょうか?」

「イセとの件?とは?」

「ソーアでの式典から会食までのちょっとした間に開催された、カナリ様のいた世界のトランプなる遊びの優勝のご褒美にカナリ様との1日逢引きの権利を獲得したのです。お父様。」

「おお!そうか!今回の功績のご褒美にもなっているわけだな!楽しんできなさい!」

「勿論です!」

ガシッと少年漫画のような握手を交わし親子は結束を見せる。


「えーでは今日は私がお送り致します。」

親子で何やら話し始めた2人をよそに、フルイチさんは俺たち2人を送り出す。

サウ車の車内でフルイチさんはこちらでの出来事を少し話してくれた。戦況報告がまだないかまだないかとずっとガルツ神官は言っていたようだ。無事に戦が終わった報告を聞けばイセ無事か無事かの大騒ぎ。相変わらずの親バカぶりだったそうでその愛の深さを感じるばかりだったとのこと。

「ガルツ神官らしいですね。」

「ええ。しかし提出されていた事業案には目を輝かせておりました。明日は有意義な会議となると思います。」

「フルイチさんのお墨付きなら安心ですね。」

あははと笑いながらフルイチさんの笑顔を見たのは初かもしれない。そんなこんなで数日ぶりのアワラの前に到着。目的の家は二階建ての地下室あり、台所やトイレも綺麗にされている。目には入っていたがこの家が今回使えるのか。

「宿には話を通しております。温泉や食堂の利用はいつでもご利用可能です。」

「それはありがたい。」

「中は意外に広いっすね。2階は寝室っすか?」

「ええ、従者が1人増えたとお聞きしましたので大きめの寝具を用意いたしました。」

大きめの寝具‥何やら気になるワードだが‥


「確かに‥大きめっすねー‥。」


2階に上がって確認すると大きめは大きめでもこれはキングサイズというやつでは?

「従者の方を愛でられる時にも役に立つかと思いこのサイズに‥。」

「いやぁそういうのは考えていなかったので‥。」

フルイチさんもそっち系に明るい方だったのか‥‥あの2人を支えて来たなら‥確かに納得するほかなさそうだが‥。

「お嬢様からも広い寝具で体を伸ばし、休まるように。と賜っておりまして‥。」

「あはは‥何かありそうですが‥。でも今からでは運び出すのも苦労でしょうからこのままで大丈夫です。」

「かしこまりました。」


寝具のデカさは驚いたが一通り内見が終わり、アワラへ晩御飯と風呂へ赴く事に。

「フルイチさん。1つ頼み事があります。ガサへ行く前にある物を1つご用意頂きたい。」

「はい。あるものとは‥?」

「それは‥」

俺は自分の考えが正しければ必要になる物をフルイチさんにお願いした。ここベルレ・ガルアではおそらく『簡単』『大量に』手に入る物だ。

「そっそんな物が必要なのですか!わかりました。『出来るだけ時間の経った物』をご用意致します。」

よろしくお願いしますと言ってフルイチさんとはお別れまた明日。


数日振りの温泉はこれまでの汚れを落とし、心身を癒してくれた。やはり身体を拭くだけでは限界がある。演習や災害派遣で入れず苦労した後、デカい、深い、熱いの三拍子揃った駐屯地の風呂に入った時の格別さを思い出す。いや、マジで気持ちいいんよあの時の風呂は。擦り傷とかあるとめっちゃ沁みるけど。ボイラー技士さん演習に合わせて入浴時間を調整してくれてありがとうと何度も感謝したものだ。

「やっぱりお背中流すっすかー?」

と塀の向こうからチャルが問うが平気だと応えてやり過ごす。少し長湯をしたいが筋肉のほぐしを終えたら出よう。


「いやーさっぱりしたっすねぇー。」

「本当にな。温泉に感謝だよ。」

「おっ約束通り帰って来たな!たった数日で戦を鎮めてくるなんて流石御使様だぜ!お疲れさん!」

晩御飯を注文して待っている間に酒のジョッキを持ってミクニの登場だ。

「ありがとう。何とか止める事が出来たよ。その敵国との交渉はこれからだけどね。それにも数日後行ってくる。」

「かー身体の休まる日がねぇな。それがカナリ様の使命なんだから仕方ねぇんだろうけど、せめて飲み食いで栄養は確保して身体は壊さねぇようにしないとな!」

「その通りさ!お待ちどうさま!」

どかっと目の前に肉やスープとサラダが乗る。女将さんが気を利かせたのか注文した量より多い。

「それじゃあ任務の完遂と無事の帰還を祝って‥乾杯!」

「カンパーイ!」


その後はケイブさんのペッポがとても役に立った事、ミクニから買ったサーツを子供達がとても喜んで食べていた事など報告し、明日の事業計画会議で楽しい催しを出来るようにする事を話ながら食事は進んで行った。


「というかカナリ様は何か遊びはやらないのかい?酒もやらないし女も行かないみたいだし。」

「ミクニさんもそれを心配するか。あちらでも息抜きが必要!とみんなに言われてあっちの世界でやってた遊びをやってたよ。」

「へー!みんなで出来る遊びか!どんななんだ?」

俺はイデアでトランプを生み出し、ミクニに見せる。

「数字を書いた紙の札?これで遊べるのか?」

「これの色々な遊び方を記しただけで本が一冊出来るくらいにはね。」

「えぇ!?そんなにか!」

「だがここでは人目に付くし、今はやらない。これは賭け事とかにも使える代物だからね。普及はその法整備を終えた後という事で考えてる。」

「楽しくやれるが所詮勝負事って事か。法整備されるのを待つしかないかー。」

「それが出来れば子供から大人までみんなが出来る物だからちょいと待っててな。」

「はいよ。カナリ様と勝負出来る日を楽しみにしてるぜ。」

「その時にはこれを使った手品も披露するよ。」

「そんな事までやるのかよ!一体幾つ技を持ってんだ?」

「1000ちょい。」

「あっさり言うね?!」

ミクニは感心と驚きの混じった表情をしているが、ヨーヨーやマジックなどの芸事、格闘技やら自衛隊戦技やら何やら細かく諸々合わせればそれぐらい行ってしまうのだ。


トランプや他の盤上遊戯系の物を今後どうするか。皆に楽しんでもらえる日を心待ちにして夜は更けて行った。

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