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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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ツインテールの真意と願い

「何で皆さんは平然と聞いていられたのですか‥?」

カナリが出て行った後、ユノは涙を拭いながら問いかける。それに答えたのはイセ。


「別に平然とはしておりません。私達はチャルさんからカナリ様のあちらの世界で受けた不遇な出来事達を聞いていたからまだ我慢出来ただけです。ですが身を投げた話は聞いておりませんでしたので何か言い返すよりもその事実を知り、芽生えた自分の悲しみを抑える事の方が上回ったというだけですわ。」

「ご主人にしては言葉の並びもチグハグだった所を見ても、心の暗黒面が疲れて出ちゃったっすねぇ。これで何度もみんなに引かれてるっていうのにしょうがないご主人っすー。」


どうやったらあの人の悲しみを緩和出来るのだろう? そこにいる一同が考え込む。


一方屋上では


「あら?先程とは打って変わって疲れた顔をされておりますのね?何かあったのですか?」

先程廊下で会った時とは違う雰囲気と態度となっている、ツインテール縦ロールのお嬢様 シー・ザ・カイは問う。

「流石に疲れてたのか前の世界の事を話して部屋のみんなを暗い雰囲気にしちゃってね。気分転換だよ。」

「そうですの。先程泣かせる事の無いように!と念を押したにも関わらずその体たらくですか。御使様も大した事ありませんわね。これではお姉様が心配です。」

「すまないね。まあ御使といっても召喚されただけのただの人間だからね。疲れもするし毒気も抜きたい時もある。それが大体間が悪いんだ俺は。」

ふむ。と少しシーは考え込む。

「それを聞くとお姉様は能力をお持ちの方を好まれる傾向がありますが、あなたの話からも今回の功績の内容を見てもやはり能力を持つものはどこかしら心に深い闇を持たれている方が多いと再認識致します。自分の意思を問わず、既に与えられ、手に入れている物を捨てる、吐き出すのは善悪問わず難しい。そういう影を落とす人間を好むのがお姉様ということでしょうか。」

「‥やはり先程の君の態度は演技だったんだな。」

元演劇部副部長で演技指導担当兼キャストだった経験からかピンときていた。この子の態度はイセにだけ見せる演技だと。先程の印象を覆すこの分析力を見てもそれは間違いじゃなかったようだ。

「そうですよ。お姉様とは魔法学会で合宿する時の相部屋で級友でした。魔力は元々巫女の家系で強く、能力をその持ち前の向上心でどんどん上げて行きましたが、どこか孤独を感じておられるのを毎日見てましたの。産まれてすぐに母親を亡くされ、早く巫女にならなければと焦っておられたんでしょうね。」


そう、イセには母親がいない。ガルツ神官はイセへの心の負担を鑑みてハルエさんを付けたり、俺と即結婚させようとしていたのだろう。その事が感じられたから協力をしようと思ったのもあるのだ。


「そんなお姉様がふと、お部屋で申されたんです。『兄弟ってどんなものなのかしら‥』と。」


昨晩イセがホタ君との会話の後にメキとの関係を羨んでいたのと同じような事をこの子に漏らしていたのか。気を許したからなのか、疲れていたからなのか、いずれにせよ弱った時にこのシーさんに言ったのだろう。

「だから君が‥。」

「ええ。妹を演じる。というかお姉様の前では手の掛かる姉妹の様に振る舞うことを決めましたの。鬱陶しいと思われているでしょうがそれだけ近くにいると伝えている証でもあります。それが友としてのお姉様の支え方と思っていますわ。」

「格好いいね。」

「女性にはあまり相応しくない褒め言葉ですわよ。まぁ天下の御使様に言われるのは悪い気はしませんが。」

確かに。と言ってちょっと笑ってしまう。

「ようやく良い笑顔が出ましたわね。少なくとも私の目には先程の方々は私と同じく、大切な人を側で支えたい方達だと見えました。ハルエさんは前から知っていますし、あの猫人族の方はあなたの従者の1人なのでしょう?貴方の事を存分に受け入れてくれると思いますが?」

「どうだかね。」

「そこは素直に聞いてくださいまし。なによりお姉様がその大切な人の対象に貴方を選んでいるのです。私としてはその事が1番の項目です。どうかお姉様の気持ちを受け止めて上げてください。部外者の私にはこうお願いする事しか出来ません。」

ツインテール縦ロールの髪が地面に付くかもしれないほど頭を下げてシーは願い出る。

「頭を上げてください。イセ様の事は有り難い存在と思っていますし彼女の厚意を無碍にはするつもりはありません。しかしながら使命が優先である事。そこは譲れませんのでご理解下さい。」

「それでも頼みます。いっそ御子を授けて母親のいないお姉様を母親の気持ちだけでも味わえるようにして頂けると。」

君もそこに行き着くんかーい。

「産まれたとしてもただの子供が産まれるだけだ‥‥って言ってもこの世界と状況じゃ無理か。」

「そうですわよ。分かっているじゃないですか。」


子供ねぇ‥ 自分を嫌いな俺が受け入れられるものかな‥他人の子を弟子に取る方がまだ現実味がある気がする。


「考えてはみるけどあくまで使命優先で。」

「‥分かりました。一度ゴシマのイブースにもお越し下さい。お姉様の為ならなんでもご協力致しますわ。では私は任務へ戻ります。」

シーは魔法を唱え、自身を浮かせて街の方へ飛んで行った。魔法ならそんな事も可能なのか。


「はぁー 本当にイセと同い年くらいの子なのか‥? 10代女子ってもっと無邪気なもんじゃないか?  人の事言えねぇか‥。」


女性の二面性というかなんというか第一印象と違いすぎて凄い子だったなと思う他ない。表と裏の顔を一気に見させられた衝撃からか、とりあえず心の暗いものは少し晴れて落ち着いた。一息ついてその事に感謝する。部屋に戻ろう。


ユノさんにも皆にも謝らなきゃなと思いつつ控え室の扉を開けると


「あーーるーーじーー♪あっそびっましょ♪」


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