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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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フラグ建築士と真の功労者

屋敷に伺うと昨夜調理を手伝ってくれたメイドさんが出迎えてくれた。

「カナリ様。昨日はお疲れ様でした。お越し下さり誠にありがとうございます。私、副メイド長のユノ・マチが御一行の案内を務めさせて頂きます。開会には少し時間がございますので別室にてお寛ぎ下さいませ。ではご案内致します。こちらへ。」


ミディアムヘアーでハーフアップの髪型のこのメイドさんはユノ・マチさんっていうのか、ずっと肉の串打ちを担当してくれていた人だ。調理が忙しくて指示を出してはいたが、全員の名前を把握までは出来ていなかったな。


案内されたのは2階のデカいソファーのある洋室。ここに来たのは4人、メキはまだ昨日の今日で人目につくと式典に影を落としかねないという事で別室待機だ。


「時間まで、何かお飲み物でもご用意致しますか?」

「いえ、街がこの状況ですし、今回は控えたいかと思います。お気持ちだけ頂いておきます。」

「かしこまりました。ではこの場をお借りいたしまして私事で恐縮ですが、私の兄も魔法兵として此度の戦に参戦しておりました。魔法兵の活躍の場とあのような料理でこれからの活力を与えて下さり、息子も守れた事を感謝しておりました。御使様にお会いするのなら是非伝えて欲しいと。私からも重ねて御礼を申し上げたく思います。」

丁寧なお辞儀をして今回の礼を俺に伝えてくる。それに対し、俺は手のひらを相手に向けて自分の考えを話す。

「私は助っ人としてやるべきと判断したことをやったまでです。皆さんがそれで笑顔になれたのなら、次はその笑顔が継続するように努めて下さい。それが何よりの私への礼と思って頂けたら幸いです。」

笑顔でユノ・マチさんに俺の思いを伝える。彼女は一瞬ドキッと固まり、慌てて頭を下げて「かしこまりました!」と、一旦退室した。


「あれは‥心の中の何かが立ったっすねー‥。」


チャルは目を細め、しーらないと心の中で思った。



程なくして式典の刻限となり、俺たちは屋敷の謁見の間に通された。


「信仰するベルレ神の御使であるカナリツヨシ様、三国協定により来られた特級魔法使いイセ・シマ・スズカ様、お二人の此度の件でのご活躍によりこの街は侵略の魔の手から逃れる事が叶いました。この街を治める神官として深く御礼を申し上げます。」

神官をはじめ、その場に参列した者たちが頭を下げてこちらに感謝を示す。

「そしてゴシマからの援軍も心からの感謝を。これからの復旧に御助力頂けるとの事でどうかよろしくお願い致します。」

ゴシマからの援軍の代表とその横に付くイセと同じぐらいの少女が頭を下げて応じる。

「このソーアは今後復旧に邁進する事になりますが、どうか皆様のお力と見守りを。現在の状況では大した褒賞が出せませんがミヤーザのお二人には先立って何かお出ししたいが何か希望はありますかな?」

「では容易な物を2つほどよろしいですか?」

俺は指でVサインを作り要求内容を申し上げた。

「1つはここソーアのズイの畑の一部を土ごと、交渉の為の研究材料として持ち帰らせて頂きたい。」

「交渉材料という話ならそれはこちらから願いたい事。是非お願いしたいのでどうかそれは数に含まずに他の申し出を。御使様。」

「そうですか?では今回の復旧に際し、私の専用の泊まれる場所、駐屯場所をどこかの一室にでも設けて頂きたく思います。今後立ち寄る際に利用させて下さい。」

「承知致しました。良き物を作らせて頂きます。」

「いえいえお構いなく。簡易的なもので結構ですよ。」

「どうかそれは我々の感謝の気持ちの大きさとしてお受け取り下さい。御使様。」

パープル神官は再び頭を下げる。自分としては街の様子が分かればそれで良かったのだがそう言われては無碍にも出来ない。分かりましたと受ける他なかった。

「では最初の願いの代わりなのですが‥‥何か金品や謝礼をというお考えがあったのならそれはエバッサ兵長に渡して頂きたい。」

「わっ私にですか!?御使様!?」

突如自分の名前が出た事に驚いたエバッサと同様に周りの一同もざわめく。

「理由をお聞かせ願えますか?御使様。」

それを聞いてきたのはパープル神官ではなくお隣のシキブ様だった。この人だけ周りと違い、動揺を見せていない。

「イセ様から戦況を少し聞きましたが、今回の戦の1番の功労者はエバッサ兵長です。私自身も自衛隊という組織に所属して国防に務めておりましたが、その経験から見ても援軍到着までの手腕は見事でした。あれは普段から兵の調練の際に部下からの信頼を得ていないと出来ない動きです。悪態、無想定、不信感のある上官の命令には命をかけて臨めません。逆に良識、親愛、実践を普段から行なっている上官の命には命をかけられます。私もそうでした。だからこそ、良識ある機転の利かせた戦術に即座に兵は対応して魔法を封じられた中、戦線を保たせる事が適った。兵の士気、負傷兵の復帰の早さを見ても、後方で癒し手か補給も担っていたのでは?」

「その通りです。エバッサは夜、戦線が落ち着いた所で後方の癒し手の任もこなしておりました。」

「それはシキブ様もでございます!」

「私は昼間は守られる立場で夜に手伝ったに過ぎません。あなたは数日、昼夜問わずだったのですよ?労力を見ればその差は歴然ですわ。」

そっそれは‥とエバッサ兵長は口籠る。その隙に解説を進めた。

「私は後方支援の経験もあります。戦略、戦術、兵站の内、最も重要な兵站と兵の士気の維持ほど、1番狙われて阻害される事が多く、維持が難しい事も知っている。それをやってのけた手腕を持った者が評価される前に私が評価される事は、私の矜持としても許される事ではない。」

少し眉間に皺を寄せ言い切った。

「例えるなら、私は料理でいう所の『締めの一品』を出したに過ぎません。それよりは、料理全体をやってきた者の方が労われるべきでしょう?それはエバッサ兵長であるとここにいる誰もが思っている事と考えますが?」

「そうです!」「その通りです!」「流石です御使様!」「分かっていらっしゃる!」

兵達の中から次々と声が上がった。

「こっコラ!!式典の最中だぞ!」

「エバッサ。」

止めたのはシキブ様だ。

「はっはいシキブ様。」

「この声が上がるのが貴方のこれまでと今回の功績です。報酬は貴方が受け取り、それを元に引き続き鍛錬に励み、この街を守ってください。分かりましたね?」

「はっ!御意のままに!」

エバッサ兵長はその場に跪き、頭を垂れる。

「それとエバッサ兵長、報酬の代わりと言ってはなんですが、今後私の従者が竜を使ってこちらの復旧作業に当たります。遺恨があり、快く思わない者が兵にも街の民にも多いと思います。よからぬ事態へと発展しないよう、期間中、『私の従者』を守って頂けませんか?」

私の従者である事を敢えて強調し、皆の集中がエバッサ兵長にある今、ここに居る皆にだけでも意識調整を図る。

「委細承知の上、事に当たり、兵にも徹底し、迅速の対応と復旧に支障がない様に守らせて頂きます!ご安心を!」

「その言葉が聞けたので安心です。イセ様は何かありますか?」

「私としても国からの要請で来たとはいえ、親族の街を守ったという当然の事をしたまでだと思っております。敢えて上げるなら私にも先程の駐屯場所の使用を認めて頂きたい、ぐらいですわ。」

それを聞いてパープル神官は少し困った様な顔をして答える。

「なんと欲のない。それでは今回の功績に礼を失するのに等しい。ズイの畑の準備もある故、時間がしばし掛かるので、今宵はささやかな会食を開く。そこに参列して頂き、明日の朝立たれるという段取りでは如何だろうか?せめてそれぐらいはさせて欲しい。」

「分かりました。その様に。」

本日中に出発したかったがそれならば仕方ないともう一泊する事になった。その後ゴシマの援軍にも訓示がなされ、式典は滞りなく終了し、俺たちは控え室に戻ろうと廊下に出る。


「イセお姉様! お久しぶりでございます!」

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