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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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同衾と閨(ねや)論争

朝、目が覚めたらチャルが同衾(どうきん)していた。


「あー‥おはようございますっすご主人。昨日はお疲れ様っしたね。」

「うん。身体の上に丸くなって寝られてたら余計に疲れそうだからどいてもらえるかい?」

「名残り惜しいっすけど仕方ないっすね。」

俺の首筋に頭をスリスリ擦り付けてからチャルはベッドを降りる。この猫の習性には困ったものだ。着替えて体も拭き、身支度をさっさと済ませる。

「被災者の朝ごはん準備しないとな。メキさんは?」

「外で警戒してくれてるっす。」

「そっか、俺が眠っちゃってる間に親睦は深まった感じだね。じゃあ行こうか。」

部屋の扉を開けて廊下に出るとメキは跪いていた。

「おはようございます御使様!改めましてこのド・メキ、これよりは御使様の従者として仕えさせて頂きます!よろしくお願いします!」

「改めまして、加成剛志です。成り行き上、従者としてしまったけど普段はそう固くならず接してくれるとありがたいかな。あの街で会った時の喋り方が素だと思うけど、公の場以外ではそっちの喋りでお願い出来る?」

メキは目をパチクリとさせて主人からの最初の命令に驚きを示す。

「えっ?そう言われましても‥えっと‥ じゃあそっちの方向で良いのか?御使様。」

「砕けた感じで良いよ。御使様も呼びにくかったら好きに呼んでくれて構わないし。」

「えぇ!? うーん じゃあ主。アタイの命を救ってくれてありがとう!この恩に報いる為に精一杯やらせてもらう!雑事でも戦でも(ねや)の誘いでもドンと来いだ!」

おいおい閨って。というかそこの所で一番目輝いてない?


「朝っぱらから閨の誘いとは、新しい従者さんは随分とお盛んな方みたいですわね?」


黒いオーラを纏って仁王立ち笑顔の少女が後ろから話しかける。

「イッイセ様!?すみません!出過ぎた事を!」

「カナリ様〜?この不埒者を私考案の風と闇の融合魔法の実験台にしてもよろしいですか?」

先が思いやられるなぁ。

「おはようございます。とりあえず可愛いイセ様からそんなお願いは聞きたく無いかな。」

「!失礼しました!おはようございますカナリ様!昨日は至福の時でしたわ!(可愛いって!今可愛いって!)」

「至福の時?」

「ボソッ(ご主人が気を失ったあと膝枕で寝顔を堪能しまくってたんすよ)」

ああそういう事か。って膝枕とかあかんでしょー?

「昨夜は力尽きてイセ様の魔法無しでも意識が飛んでしまいまして、手数をかけて申し訳ありません。お恥ずかしい。」

「いえ!あれだけの戦闘や作業をこなしたんです!むしろ当然です!意識を無くされても仕方ありません!その癒しに私の太ももが役に立って光栄ですわ!」

バシバシと太ももを叩いてアピール。またいつでもお使いくださいと言わんばかりだ。

いや、こっちとしては15歳の少女の太ももで癒されてたオジサンなわけで普通に案件だからね?

「なはは(汗) では被災者の朝食の用意に行きたいと思います。」

「主。その点は大丈夫みたい。昨夜到着したゴシマの援軍がその任を担ってくれると主が起きられる少し前に伝令が来た。『英雄はゆっくりと中天の式典に来られたし。』とシキブ様からの伝言だ。」

あらまそうなの? じゃあ部屋でもっとゆっくりとしても良かったのか。ホテルでチェックアウトの時間間違えて後悔した気分だ。

「じゃあ部屋で朝食にしよう。アイテムBOXに入れてたパンとミートソースぐらいだけど。」

一同がぱぁっと明るくなる。

「では私がお茶の準備をして参ります。皆様はお部屋へ。」

後ろで黙っていたハルエさんが申し出てくれた。流石メイド。部屋に戻ろうと振り返った瞬間、痛たたた!割れる割れる!と聞こえてきたけど気のせいだよね?(笑)


テーブルにアイテムBOXから出した朝食一式を並べ、改めて今回の戦の労いをする。

「改めてお疲れ様。今回の任務これで果たされました。新たな仲間も増えましたが今後とも皆んな仲良くよろしくお願いします。いただきます。」

「「いただきます」」

俺以外皆んな女性の朝食が始まった。


「食べながらで構わないんだけど、まず今後どう呼べばいいかな?」

「そこは主の好きなように。名前でもなんでも。」

「じゃあメキちゃん。」

「メメ メキちゃん!?」

あら?少しは親しみやすいかと思ったんだがミスったな。

「ちゃん付けは‥ちょっとアタイには可愛すぎるというか‥?主がそうしたいって言うならあれだけど‥。」

「ちゃん付けはダメだったか‥なんかあだ名でも考えるか‥。」


ふむ。じゃあ


「メッキー。」


「へっ?」


「メッキーって呼ぶ事にするよ。決定。」

「えぇぇぇ!?」

「よろしくメッキーw」

「可愛いじゃありませんのメッキー♪」

「良いと思いますよメッキー。」

口元ニヤニヤしながら呼んでくんじゃねー!!

「メキ!メキの呼び捨てで結構です!」

「じゃあメキ。今回侵略があったわけだけどその理由は何か知ってるかな?」


あっさりと一転和やかな空気から緊迫した空気へ。勿論こちらが本題だ。

「はい‥アタイ達はここの西に広がってる『ある物』を手に入れる為に戦を仕掛けた。」

「資源を奪う為に土地ごと。侵略の定型だね。確かに西には主要道路とその周りは何かの畑だったね。空から見たよ。」

「空から?!あの時は空から来てたのか?!」

「ランフォーを片付けた後に元の世界のパラグライダーという物を使って空を渡って向こうの山から飛んできたんだよ。」

メキは唖然とした。あんな谷の向こうの山からランフォーを倒して更に空を飛んできたというこの男の事実。自分が負けても仕方ないと改めて思った。

「そのある物とは?」

「ズイだ。」

「ズイ?」

「大きめの豆ですわ。ここクマポン国北側とガサ国の西南側でのみ採れる穀物で、主に茹でて塩をかけて食べるおつまみとして人気ですの。しかしそれの為に戦を仕掛けるとは思えませんけどね‥。」

「いや‥。」

それが俺が想定する物ならば是非とも手に入れたい。おそらくガサはその可能性に気付き、または単純に作物として疫病にかかって収穫出来なかったのだろう。よって侵略の運びとなったという事か。

「想定の物であれば狙われてもおかしくないかな。メキはズイについては何か知ってるのかな?」

「いや、これといってさっきイセ様の言ってた食べ方しか知らない。作物的にはなんか利用価値があるみたいなのを小耳に挟んだぐらいだね。」

「それだ。今回の侵略理由は。」

みんなが驚き、俺に目を向ける。

「たったこれだけの情報で分かったのか?!」

「俺の想定通りの物だったらね。ガサへの交渉をする時の交渉材料も目星が付いた。あとはその段取りだけど昨夜メキの従姉弟のホタ君が来てたんだ。」

「ホタが!?‥‥あいつ、アタイが負けて、代わりに責任取らされる事になるよな‥。」

「その点は大丈夫。俺が直接今回の侵略理由の問題に携わる為にそちらに出向くって言っておいたから。少なくとも出向いて結果が出るまでは何もないと思うよ。」

「そうなのか!何から何まで(あるじ)に世話になっちゃってるな‥今後の仕事でそれは返させてもらうぜ。」

「ホタ君からも伝言を預かってる。ガサ周辺の一族は私がそちらに向かわせる。今後は自分の為に力を使って欲しい。メキお姉ちゃんへ ってね。」

「ホタ‥‥ ありがとうよ メキお姉ちゃんなんて久しく言われてなかったぜ。」

「ごめんそれは俺が付け足した。」

「んなぁ!?主!アタイをからかったのかよ!?」

「あの時のホタ君をね。同じ反応してたよ。でも兄弟を思う者同士これぐらい軽い感じで話そうと思ってるって伝えたら納得してくれた。兵として規律を守り自分を律するのは尊い事だけど締める場面だけで良いよメキ。」

「‥‥なんだかよく分からないけど納得しておく。」

表情がコロコロ変わって面白いね。ホタ君もこういう可愛らしさを見てほしかったんだろうな。

「私達2人にも彼は代わりに謝罪して容赦を求めてきました。カナリ様に仇なす、私たちに再び手を出さない限り問題ないと伝えています。」

サーサのお茶を啜りながらあくまで優雅な態度だが目線は厳しいお嬢様。


「もはや仇なすなんて理由もなく、頑張るだけさ。そして主の御子を産む!」

「ぶふぅぅぅ!!!」

イセは啜っていたお茶を全て吹き出す。丁寧にハルエさんがその始末に入るがイセはそれどころじゃない。

「貴女!何言ってるのか分かってらっしゃるの!?」

「勿論!アタイ達竜人族は族長筋の女は子孫を強くする為自分を打ち負かした相手と結婚する事になってるんだ!崇拝するベルレ神の御使の子供!その母親になれるとあっちゃ戦い以上に燃える!」


あーだからさっき閨とかそういうワードが出てきたわけね。 御使とかこっちではそう思われるかもだけど、実際ただのオジサンですからね。

「カナリ様の未来の妻は私イセですわ!貴女じゃありません!」

「それは主が決める事だ!それにガサなら少子化で女性あまりの国情を鑑みて一夫多妻制になったからここの全員と結婚したって問題ない!」

「結婚自体に問題がなくても御子が多いと他の神を信仰し、ベルレ神の御使を快く思わない者達の標的を増やす事になります!カナリ様が優れていようとも手が回らねば要らぬ不幸を招く事になります!」

あらあら2人ともそこまで頭が回っているのは感心だけどそれ、俺の意思全く反映されてないよね?


「色々考えてくれてるのは分かったけど話を進めて良いかな?」

議会の委員会で話をまとめない奴等用に使っていた怒りのオーラを少し込めた口調で言う。

2人は硬直し、自らの欲を全面に出して話を止めていた事を反省した。


「では今後の段取りを示そう。この後の式典後、ノクト君を工事に充てる前に俺たちを国境まで送って欲しい。ベルレ・ガルアに一度戻り今回の任務完遂と顛末の報告。メキはそのまま復興の手伝いとガサへの訪問の連絡を改めてしてもらう。訪問期日は移動を含み10日後。イセ様は俺と一度ベルレ・ガルアに戻り休息と渡してきた事業書類の内容の進捗状況を確認。その後、俺は交渉材料になる物の実験を行い、想定される問題の解決策を実現可能な物に幾つか昇華させ、ガサに殴り込みます。こんな流れでよろしく。」


「「了解」」


「じゃあ片付けて式典に向かうとしようか。」

各々が片付けをしていき、荷物をまとめにイセ・ハルエコンビは部屋に戻る。

その隙にメキは俺に耳打ちしてきた。


「(ボソッ)アタイにいつでも主の欲望、ぶつけて良いぜ♪」


にっこりと笑ってデコピンをお見舞いする。


「何でぇっ!?」


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