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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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後輩従者とよだれ

「ハッ!!アタイは‥。」

メキはベッドにから飛び起き、どうなったのか記憶を辿る。

「あっ起きたっすね。ド・メキさんは色んな感情が交差して気を失っちゃってたっす。あの場にいても被災者の目の敵にされて危害が及ぶと判断してご主人がボクに託してここに連れてきたっす。」


自分は助かったのだ。 夢じゃないんだ。 メキは再び安堵のため息をついた。


「礼を言います。この度の措置に感謝を。」

「ボクよりもそれはご主人に言って欲しいっす。でも今は被災者全員の夕食をあの場で作る為に動いてるっすからまた後にしましょう。」

「あの場所で!?もはや瓦礫だらけの所じゃないか!」

「そういう活動をする部隊にいた経験がご主人にはあるっす。あの状況を見て何もしないのは元いた部隊の連中にドヤされるって言いながら使命感燃やしまくりだったっす。」


あれだけの戦果を上げながらまだ更に動く。止まる事はないのかあの男は。


「大衆の目の敵のアタイでは‥あそこにいても邪魔になるだけか‥。」

「今はそういう事っすね。事が済んできたらこっちに来るはずっすからそれまでに話しておかなきゃならない事があるっす。」

「話しておかなきゃならない?」

チャルは椅子の背を前に座ってそこに腕を置いてメキに向き合う。

「その前に確認っす。ド・メキ、貴方は本当にご主人の従者になる事に覚悟を決めてくれたっすね?」

「ああ、勿論だ。」

「ならこれから話す事は他の2人には話した事っす。それを踏まえて彼女たちはご主人に協力してくれている事を前提に聞いて欲しい。良いっすか?」

「はっはい。」

チャルのギラリとした猫人族の瞳にドキリとしながらメキは耳を傾けた。


その内容とは勿論ここに来るまでの車内であの2人に話したカナリの過去と動機について。


3つの理由まで語り終える頃にはメキは今日何度目かの涙を落とし、握り込んだ拳を濡らしていた。

「そんな‥どれだけこんな思いにさせられて今も動き続けているんだ‥。」

「ボクが、いやボク達がご主人を支えたい理由、分かってもらえたっすね?」

「ああ充分に。それと御使様の自分でやらなきゃって思いが強すぎるのも分かった。それを背負って戦ってきてあれだけのモノになったのは納得がいったけど、それは同時に危うさも秘めている。」


アタイも族長筋として一族を思い兵になったが、やらなきゃ行けない事と思い、自分がなりたくない状態に敵をしていく度、心の中の何かが壊れる感覚がある事は身に覚えがありすぎる。これで良いのか?と自問自答を繰り返し、後々心がすり減っている事にも目を背けて気付かなくなってくるんだ。その後は自滅。アタイは復讐の対象が明確でその目的も果たせたから落ち着いていられた分僥倖だったのだろう。


「その通りっす。でもそこは悲しみは自分までで止めたいのがご主人っすから本人はそれを望んでる部分がある。だから支える人間が側に必要なんす。ご主人が必要としていなくても。」

「‥‥先輩従者であるチャルさんも覚悟が据わり過ぎてちょいと心配になるけどな。」

「ニャハハ。まあご主人を長く知る者っすからね。その分重く感じる事もあると思うっすけどボクがご主人に受けた恩を考えたらまだまだっす。」

そこん所は話してくれないんだな。まぁ後々それは読めてくるだろう。


「こんなアタイを解放してくれた主の恩に報いますよ。よろしくチャル先輩。」


ベッドに正座しながらメキは頭を下げる。

「先輩って呼ばれるのは、なんかむず痒いっすね。」

「まぁ先輩は先輩なんで。」

あーそこは軍人の縦社会出身が出てくるっすねー まあ仕方ないかー。

「あと‥その‥。」

メキにしては歯切れが悪い?何っすかね?


「族長筋としてのしきたりがあって‥‥その‥族長筋の女性は自分を打ち負かした相手と結婚するっていう強い子孫を残すための風習が‥。」


めっちゃ急に女の子っすねー!?顔を真っ赤にして頭から湯気出そうな勢いっす!


「あー‥まぁ、イセ様のお父様であるガルツ神官からの縁組を持ちかけられた時も言ってたんすけど、ご主人はこれから色々な事業に携わって行くっす。結婚して子を成して落ち着くというのは現段階では考えてないみたいっす。イセ様本人も乗り気だったのに18歳からしか結婚出来ない法の下で生きて来たからその年まで保留にってなってるっす。」

「うへぇ面倒くさいですね。アタイは兵として負けない様に努めて来たけど打ち負かされたら即って考えだったもんで。出来れば早めに‥夜の伽ってやつを‥‥。」

兵士と耳年増女子の合体した姿が目の前に。どんな掛け合わせっすか‥。

「信仰してるベルレ神の御使であれだけの強さ、結婚を考えてた恋人がいたのならきっと女性の扱いも、夜の伽の知識もあるんでしょう?あー‥。」

ぽわわーんと今までの兵役生活で溜まってた乙女が妄想癖となって周り見えなくなってるっすー。怖。

「まあそれはボクもまだお手付きとかはないからなんとも言えないっす。ご主人もそろそろ大分『男』が溜まってるとは思うんすけどねー。」

「‥‥はっ!? まさか男色家って事はないよな?」

「それはないっす。」

前の世界のカナリを知るチャルがキッパリ言い切る。

「先輩が言うなら間違いない!安心しました!」

「‥ボクは心配が増えたっす。」


でもメキもなんとか心も落ち着き、ボクとは意思疎通が可能になったっぽいっすけどあの2人とはちょいと因縁が出来てるっすからねぇ‥。ご主人に任せるしかないか‥。


コンコンっと部屋がノックされる。


「チャル様。今よろしいでしょうか?」

早速その1人のご登場だ。

「ハルエさんっすか?何かあったっすか?」

「いえ、被災者への配膳は済んだのですが、カナリ様が力尽きて眠られてしまい、今はお嬢様が見ておられます。食事は別にお持ちしましたので済みましたらカナリ様を運ぶのを手伝って頂けないかと。」

「あーやっぱり倒れちゃったっすかー。そこまでしないと止まらないんだからご主人は。分かったっすー。」

食事を受け取る為扉を開ける。

「あら。お目覚めでしたか。」

「はい先程。今日の献立も精がつきそうっすね!美味しそうっす!」

「この度はご迷惑をお掛けしました。今後、このド・メキは御使様の従者として仕えさせていただきます。」

「私個人はいずれまた相見えたいと思っていますが、最早私の範疇を超えてしまっています。カナリ様やお嬢様に危害や不快な行動をしなければ私に気を使う必要はありません。ですが‥。」


ガシィッッ!!!!


ずいっとハルエは顔を近づけ、持ち前の握力でおでこを鷲掴みにする。

「痛ぇえええ!!割れる割れる割れる!!」

「何かあればこの頭、遠慮無く潰すからな?」


ひゃー!久々に見た笑顔なのに吐いてる言葉が違いすぎて怖いっすー!


晩御飯を頂き、3人でご主人を運びに戻る。膝枕でご主人の寝顔を眺めながらグヘヘと悦に入っているイセ様の姿が目に入る。なるほど、ご飯を食べてからっていうのはこの時間の為っすか。

イセは人が来ると慌てて顔を整えて一つ咳払いをして応じる。

「起きましたのね。」

「はい。これよりは御使様の従者として仕えさせていただきます。この度はご迷惑をお掛けいたしました。私もチャル先輩からお話を聞き、全身全霊を持って協力させて頂くことを決めました。よろしくお願い致します。」

「そうですか。私からは貴方が気を失う前に言った通りです。精々カナリ様によく仕えて、この世界に尽くす事業に励んでくださいな。」

「その所存です。‥‥‥しかし可愛い寝顔ですねー。」

グヘヘーと口元からうっすら涎が見えてるっすよ。

「でしょう?こんな時でもなくば見ることは叶いません。」

こちらも顔が緩みすぎっす。ていうか結構見てるっすよね?

「弟様の事も聞きましたが、女装の王者?という事は当然血縁の主も可愛い訳だよなーと。」

「ですね。何故こんな人を苦しめる者達がいたのだろうと思っています。かの世界には怒りしか覚えませんわ。」

「斬り合った私が言うのもなんですが、共感します。ベルレ神様の良き計らいに更なる敬意を覚えました。」

「その通りです。これからはみんなで、この人がこの世界に来て良かったと思える様に努めるのですわ。こうやってまた安心して眠れる様に。」

「はい!」

イセはカナリの頭を軽く撫でてまた恍惚の表情に変わる。メキも同様だ。よだれよだれ。


「じゃあそろそろご主人を運ぶっすよー。」

このままいたらご主人が襲われかねないっすからね。従者2人で肩を貸して寝室に運ぶ。


部屋に着いてあてがわれたベッドにご主人を寝かせる。

「もう危険は無いと思うっすけどイセ様の部屋との間ぐらいで警戒を頼むっす。」

「了解ですチャル先輩。さっきまで寝てたアタイが寝ずの番をやりますので先輩も休んで下さい。気づいてないかもですが疲労が顔に出てますよ。」

部屋の鏡を見てそれが本当だと気付く。ボクもご主人ほどでは無いにしろ徒歩移動に回復役、戦闘と監視をこなし流石に疲労困憊の状態だった。

「じゃあお言葉に甘えるっす。何かあったら起こしてっす。」

「はい。おやすみなさい先輩。」


そうしてドアを閉める。装備品を外し、ご主人が寝ているベッドの横の椅子に座る。

チャルはベッドの端に突っ伏して主人の寝顔を間近で観察しながら眠りに落ちていく。


「やっぱり寝顔‥可愛いっすねー‥。」


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