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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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野外炊事と最後の味付け

そこからは怒涛だった。


瓦礫を集め、簡易かまどを大小8つ作り、魔女鍋を3つ、街の祭事で使う大きい鍋を2つ、中ぐらいの鍋を幾つか借りて調理開始。

魔法で火を起こして貰い、まず無限水筒で煮沸消毒用の湯を準備、手と調理具の消毒を行う。すぐさま材料を切り分ける裁断へ。 市場で仕入れていた大量の食材をアイテムBOXから取り出していく。玉ねぎに似たギネマは輪切りとくし切り、ニンジンに似たキャルは乱切り、トマトに似たケチャは角切りと細かく切った後すりつぶしてペースト、ブルガンジーの肉は角切りと4cm角に、ランフォーの肉も4cm角そして叩いて挽肉に、ブロッコリーに似たカタシンは房ごとに切り分け下茹で、ポガポガは4cm角とカツ用に切り分け、カツ用の肉にはにんにくに似たソムを塗り込み、果実酒に漬け込む。スネーターの肉は一口から二口サイズに切り分け、こちらも塩とソムを練り込んで袋に詰めておく。

そこにシキブ様から「うちの屋敷の食糧庫にあるものは幾らでも使って頂戴な!」とありがたい申し出。先に挙げた野菜の補充、塩、小麦粉のようなバクス粉、香草に使えそうな物がいくつか、名前は分からないがかぼちゃと待望のジャガイモを見つけた! カボチャは三日月の様に輪切り、ジャガイモは大量に茹でたら皮を剥いて巨大ボールでグニグニとひたすら潰す。‥‥どっかで聞いたフレーズだな?


各作業を担ってくれたのは手伝いに来てくれたハルエさんを筆頭に屋敷のメイドさんも6人。他は負傷者の救護などに当たっている。大量の下拵えの指示と裁断を終え、いよいよ火にかけていく。

ポガポガのカツは一度見たことのあるハルエさんが担当。バットと卵とバクス粉を渡してポガポガラードのツボ全部を油化し揚げていってもらう。カツを揚げ切った後はスネーターの肉にバクス粉をまぶして唐揚げを作っていく予定だ。

他の方の内4人にはひたすら昨晩の串焼きの串刺し作業、ポガポガ、ブルガンジー、ランフォーの3種の肉にバージョンアップ。塩もペッポの実もふんだんに使ってもらう。

残りの2人は茹でと蒸し係、ジャガイモやサーツを蒸し、カタシンの茹での担当だ。そして俺は祭事用の鍋を使わせて貰って汁物と炭水化物として麺を拵える事にした。

「気温や湿度は感覚で行くしかないな。」

イデアによって具現化した計量器で水、塩、バクス粉を量って大鍋にてそれを合わせていく。力強く練って練ってデカい密封ビニール袋も具現化し、そこに詰めてしばらく寝かすを繰り返す。二刀流で打ち合ってカチカチの腕にこれは堪えるねぇ。

寝かせている間に汁物へ。ここで市場で仕入れていたブルガンジーの乾酪、つまりデカいバターを使う。ブルガンジーの角切り肉、乱切りしたキャル、くし切りのギネマを大量に投入し塩とペッポの実をかけながら炒めていく。腹の減る香りに耐えながらペースト状にしたトマトことケチャを投入、果実酒とウスターソース、これも名前は知らないがローリエに似た香草を入れて風味と味付け、無限水筒から水を投入し煮込んでいく。

味が染みるまでは先程寝かせていたタネをまな板に乗せ、打ち粉にまたバクス粉をかけて棒で伸ばす。金物屋で手に入れていた菜切り包丁で麺に切り分けていく。蕎麦打ちしか経験はないがなんとか麺として形になった。茹でる時に崩れませんように。

 お次は違う鍋にランフォーの挽肉をバターと香草で炒めてトマトのペーストを混ぜる。塩と果実酒で味を調えるが全体的に味の方向性が汁物と似てるので不満が出ないかちょいと不安。バジルみたいな香草があったのでそちらを潰して混ぜ込む。

試しに小さい鍋で麺を茹でる。どうか崩れないでくれよ‥。2分ほど茹でてつまみ上げてみるとつるんとしたうどんが出来た!和風ではないがソフト麺ミートソースがけは給食の正義だったよね。

これで一応今回の飯が出揃った。


ポガポガのソースカツ、マッシュポテトのケチャ添え、ブルガンジーケチャシチュー、ぽがぶるらんの3種の肉の串焼き、なんちゃってソフト麺ミートソース掛け。


 スネーターの唐揚げはお酒のおつまみぐらいのタイミングで揚げていこう。何故なら鑑定で見たらすごい精力剤効果があると出たからね。お子ちゃまはサーツ蒸したのとカボチャに似たやつの揚げ物を食べてね。


「さぁ並んで下さ〜い!まずは負傷して取りに来ることが出来ない方に配ってもらえる方優先で!」

いよいよ調理より気を使う事もある配膳。

こういう時に利己主義に走って我先、他より多くをやる人は必ず出て来る。列の統制に目を配りながら均等且つ適量を渡さなければならない。 各鍋やボールのレードルは具現化で生み出し、均等にできる様に配ってある。

「はい串焼きとマッシュとミートソース掛けね!こちらカツも2人分!量は平等にやってますんで!受け取ったら左の方に進んで次の方を通してください!」

俺が言うことで一つ一つの言葉が神の御使の言葉になるからか、驚くほど順番を守り、時には拝まれながら「そんなに大した人物じゃないよ」と言い、配り続けて列は進んでいく。今回被害を受けた街の東区から中央近くにかけての住民はおよそ800名。米が無いので麺でと思っていたが、元々小鉢配りにしていても追加で打ち直しになった。カツは子供に分ける分は少なくしたりして対応し、後はご家族で調整してもらう他ない。その代わり串焼きは解体屋の方と御使様ばっかり働かせてられねぇと思った方が撃ち落としたランフォーを解体して持ってきてくれたのでランフォーのみの串焼きを追加した事で賄えた。


「ではこちらどうぞ!長く並んでもらってすみません!」

なんとか全員に配れたところで他のメイドさんにも交代で休んで食べてもらい、俺はスネーターを揚げていく。つまんでみたら、うーーんジュウシーで軟骨唐揚げみたい。生存自活訓練でマムシ捌いて塩振って軽く素揚げして食べた時と似た様な味だけど、バクス粉の相性が良いのかふんわりしててうまい。そして少しこれ強心剤効果あるな。少し動悸と血流が回復してきた。タウリン何mgだ?

揚げたてをつまめるように大人たちに配っていく。

「ずるーーい!大人たちはまだ食べてるー!」

当然のごとく子供達が自分たちも食べたいと申し出てきた。

「ああごめんね。これはまだ小さい身体の子達には、心臓がドックン!ドックン!ってなりすぎちゃって倒れちゃうんだ。大きな身体になったらね。」

「えーー。」

納得していない子供達に俺は屈んで視線を合わせ、さらに理由を伝える。

「それにこれは今日君たちを守った大人たちへのご褒美でもあるんだ。君達は頑張ったらご褒美貰いたくない?」

「欲しーい!」

「大人もそうなんだ。同じ人間なんだからね。そして今日はみんなの事を守ろうと必死で頑張った。だからこのご褒美は、君たちがこれを食べられるぐらいに大きくなるまで、これからも頑張ってくれるお父さん、お母さんたちがまた元気になるように!みんなからお礼として渡してあげよう!出来る人ーー!」

「「はーーーーい」」


一斉に手が上がり、二つずつ子供から親たち、兵隊たちにありがとう!って言って配って貰った。各地で笑顔と感涙の花が咲く。


「子供への配慮と諭し方。見事ですね。これもかの世界での経験からなのかしら?」

後ろで始終を見ていたのはシキブ様だった。

「お疲れ様ですシキブ様。ええ、隊に入る前に弟の行っていた保育園という寺子屋のような所に保育実習に行っていました。物心がついた子供は大人が羨ましくて自分も、となる事が多い。そこに危険がある事も時にはあります。7つになるまで子供は分からないものとよく言われますが、スネーターを食材にする為に鑑定した時にはこうしようと決めてました。」

「なんと、その時からここまで想定済みの調理だったのですか。ますます感服してしまいます。」

シキブ様が驚いた顔を見て、もう一つの理由も話す。


「そして大人たちに向けては、「自分が守り抜いた者からの贈り物」という『最後の味付け』を調理を担った者として加えさせて貰ったというだけの事ですよ!」


笑顔で俺が答えるとシキブはキュンとなった。

なんと爽快で粋な計らい。シキブはベルレ神にこの男をこの世界に呼んでくれた事を感謝する。


次の話と文を切り間違えていたので4・18に修正

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