顕現と神託
突如イセの目の前が光に包まれ、和装の女性が現れる。
「我がそのカナリの世界の神の1人、「天照大御神」じゃ。」
かっ神様?! その場にいた全員が驚き、生徒達は腰を抜かす。
「カナリの事を少し見兼ねての。ベッちゃん‥‥もとい、ベルレのやつに頼んで少しの間顕現させて貰った。少しカナリと話をしたい。チャルよ、連れて参れ。」
「分かりましたっす。」
いきなり神が顕現してもチャル様は冷静だ。一同はえぇ‥‥?と、それにも竦み上がり目を見開く。
「はぁ‥はぁ‥ チャル、一体何が‥‥って誰ぇ?!」
カナリの他では見せない驚き顔にイセ達も驚く。
「そういう反応をされると仕方ないとはいえ寂しいのう。石段を駆け上がっていたあの小僧がここまでよく育ったもんじゃ。」
「何かベルレ神と対話した時の様な感覚が‥‥。」
あの独特の包まれる優しさのある威圧感。神々しいと言うべきか‥。
「カナリ、お主が拝んでおった天照大御神。それが我じゃ。」
「えええええええええええ!!??」
世界の奇妙なお祭りを巡っている芸人さん並みに声出た。えっ何?俺泰◯様とおんなじ体験してんの?!1300年越しに!?
「カナリ様‥‥。」
そうこれが普通の反応。チャル様はどこかおかしい‥‥?
「お主の状態が気がかりでの。送り出した手前、詫びにはならんが、神託と1つ能力を付与しようと思う。ベルレにも許可を得ておる故、気兼ね無く受け取るが良い。」
「貴女が‥‥本当に‥‥。」
俺は膝から崩れ落ち、先程までの叫び散らしとで頭がボヤける。
「こんな状態になるまでお主が頑張ってしまうのは一番分かっておるつもりじゃ。負けず嫌いで自分の不運は他で繰り返させない優しいお主じゃからな。それ故に矢面に立つ場面が多く、あの世界での澱を受ける立場になってしまった。神社とは人の厄や澱を投げ掛けられる事も多い場所じゃから純粋な者が来ればそれに侵されやすい。我の竜神タツも心配しておる。」
「澱を吸って汚れた雑巾を捨てる様にあの世界からは見捨てられたという事‥‥。」
「そんな訳があるか!‥‥‥だがその様に考えてしまう程の人生を歩ませてしまったのは我の責任じゃ。」
そう言って天照大御神はカナリを抱きしめる。
「よう耐えた。我の世界での働きはもう充分じゃ。どうかこちらの世界では幸せを掴んでおくれ。幸い、惚れてくれておる女もいる様じゃしの。」
カナリの頭を撫で、天照大御神は周りの面子を見渡し安堵の微笑みを浮かべる。自分の授けた女運は機能している様だ。それともカナリ自身の人徳か?
カナリを抱きしめながら女性陣に向き直る。
「イセ・シマ・スズカよ。先程我に光球10連発ぶち込みたいと言っておったな?そこまで怒れるとは若い限りじゃがその魔力を放てばお主が保たないであろう。特性を見るにお主の身体は魔力を抑え込まれて内外からの圧力で悲鳴を上げておる。その状態では子は宿せぬぞ。」
「なっ!そうなのですか?!」
「子はその圧に耐えられぬ。我はベルレの世界の者には手は加えられぬ故情報だけ与えよう。何か方法を模索せい。」
「分かりましたわ。他ならぬ神の言葉を信じましょう。」
「うむ。それと子作り自体が出来るのか?と悩んでおった様じゃがそれは問題無い。我の世界と一緒の行いで宿す事は出来る。だが、種が違えば産まれる者も産まれ方も違う。ド・メキよ。その配慮は忘れぬ様にな。」
「了解だ。アタイもあんたに1発ぶちかましたい思いだったけどその情報でチャラにするよ。」
「おお怖。サウラとやらや他の従者にも共有を頼むぞ。」
「承った。」
「今日、カナリから教えを受けた子らよ。」
「「はっはい!!」」
皆シャキーンと姿勢を正して返事をする。
「今日得た学びを存分に活かし、励め。その働きがカナリの心を救う。もし‥‥悪用しようものならば‥‥‥我が神罰を下すと心得よ。」
「「わっ分かりましたーーー!!」」
ど緊張丸出しの子供達は即座に頭を下げる。
「まあ大丈夫そうじゃがの。そして‥‥チャル・メラよ。」
「はい‥。」
憐れみを感じる表情で天照大御神はチャルを見る。
「ベルレに預けておったお主がカナリの為にのう‥‥。ようやく叶ったと言うべきか‥‥。しっかり自分の役目を果たせ。それだけじゃ。」
「勿論っす。」
天照大御神は腰に手を当て「ふむ。」と口元を緩ませ、本題に入る。
「さて、カナリにまずは神託から行こうかの。クオカーフの島に向かうと言っていたな?ズク・リューコの婚約者の件で。」
「はい。クマポン、ガサと行ってから向かう予定でしたが‥?」
俺も立ち上がり、姿勢を正す。
「そこでとある者と会うじゃろう。苦しいかもじゃが『我の世界の事を思い出せ。』それが道を開く。」
「分かりましたが‥何を思い出せば‥‥。」
「それはお主がそこで気づくと思うぞ。そして能力じゃが、我の加護もお主に付ける。これを渡して置こう。」
「これは‥‥トランプ?」
渡されたのはカードの裏面が龍を纏った天照大御神の柄のトランプ。光を纏って如何にも神の力が宿っていそうだ。
「名前は 『女神の切り札』 カードマジシャンのお主はそれの扱いにも長けているじゃろう。窮地の時にでも山から引き、『その時必要な物事が起こる』ようになっておる。そして我の加護が上乗せになった事でお主の能力である具現化能力も強化される。よりイメージに近い物が生み出せるじゃろう。肉体と精神の強化でお主の症状も緩和されるはずじゃ。」
なんという大盤振る舞い。あちらの世界では出来なかったのか?と思わんばかりだ。
「何故‥‥ここまで‥‥。」
「理由はある。 言い訳になるがあちらで他の神と30年ほど対峙しておっての。その戦いの余波を受け、我の下で不運が重なる者を出してしまった。その1人がお主だ。純粋であればある程影響を受けやすく今回苦肉の策でベルレに託したのだ。 最初にも言ったがこれで詫びになるとは思わん。だが見守ってはいるぞ。我が世界の子カナリ。」
俺は姿勢を正し自衛隊の10度の敬礼で返す。
「分かりました。この能力でこちらでの使命を果たします。」
「うむ。あとチャルよ。」
「はいっす。」
「お主にもこれを。」
チリン♪と鈴の音が鳴る。 渡されたのは小太刀。柄の所に猫に付ける様な鈴が付いている。
「神刀 『澪』 敵の襲来や悪意ある心に反応し鈴が鳴る。闇を浄化する御手洗の水で清めた一振りじゃ。これでカナリを助けてやってくれ。」
「ありがたく使わせて頂くっす。」
「ではそろそろ時間じゃ。皆驚かせて悪かったの。カナリを頼むぞ。」
天照大御神は宙に浮き上がり光り輝く。
「頑張れ。カナリ。」




