御礼と自衛太鼓
「ふぅ‥‥。まさか天照大御神がわざわざ見に来てくれるとは思わなかった。皆も驚いたでしょ。特に教室の皆は今日の授業に俺の醜態に最後は神の顕現と頭パンパンじゃないかい?大丈夫?」
な訳がなかった。皆緊張で頭真っ白で燃え尽きている。
「あちゃー‥‥こりゃ今日の授業は忘れられちゃうかもな。」
「それは先程まで復習をあいておりましたから大丈夫だと思いますわ。それよりもカナリ様!カナリ様の方が大丈夫ですの!?」
「いやはや俺の方も色々頭がスッ飛んでしまう出来事だったので。とりあえずあの世界には弾かれても神には裏切られていない事が分かったので心は落ち着いていますね。これもこの神具のおかげでしょうか?」
天照大御神から賜った「女神の切り札」 どんな使い方や効果があるのかは後日検証だが、持っているだけで心が落ち着く効果はあるのが分かる。
「それは何よりです。私もあの情報は貴重でした。それでも1発ぐらいはぶち込みたい所でしたが、方法を模索する方に専念したいと思います。」
「それが殊勝だと思うぜ。アタイも種が違うって事失念してた。他の皆にも言わなきゃ。」
かの世界の神への恨みが落ち着いた2人。だが問題は‥‥。
「この子達固まっちまったけどどうする主?」
「そうだなぁ。おーい皆!目覚ませ!!!」
「はっ!!?」
とりあえず自衛隊の起床時ぐらいの大声で呼びかけたら皆意識を取り戻した。
「すみません!あまりの出来事で‥‥。」
代表してマイが謝る。
「だろうね。俺も色々スッ飛んだから謝る事はないよ。しかし皆に見せたくないものも見せてしまったようだね。それはこちらが謝る。」
「いや。先生は悪くないよ。私が確認したいって言ったから。」
ヤチはまさかこんな事になろうとはといった表情で頭を下げる。
「それも恐らくはイセ様を幼馴染として心配しての事だろう?友の為に動く事を咎める理由は無いよ。」
「‥‥先生は優しすぎる‥。」
ヤチは横を向いて口を尖らせる。
「ですが、改めて先生が御使様だという事を確認出来ました。我々も神の啓示を受けた者として励みたいと思います。」
礼儀正しく話すのはサダムネ。冷静さを取り戻した様だ。
「よろしく頼むよ。出来る限りの事はするから。」
「はい!」
「では今日は頭使って疲れたと思うしもう帰りなさい。ゆっくり休んで明日に備えよう。」
締めようと思ったがここでイセが手を挙げる。
「すみませんカナリ様。今回の御礼となるか分かりませんがこちらをお持ち致しましたの。」
「??」
外の御者、久しぶりのナンジョー君とハルエさんが抱えてきたのは‥‥
「太鼓?」
「ええ。以前芸事を嗜まれるとお聞きした中に太鼓があると伺っていたものですから。思いっきり叩けば多少の発散にはなるかと思いまして、祭りで使用している物をお持ちしました。不必要でしたら持ち帰ります。」
そんな事言ったっけ?まあ間違いではないのだが。
見てみると寸胴型ではなく腹に丸みのある太鼓で和太鼓に近い。ちっちゃい太鼓もあり、これでリズムを取り、それに合わせて演奏するスタイルはこちらも同じ様だ。
「ではお言葉に甘えて叩かせて貰おうかと思います。あっでも地方がいないか。」
「ジカタ?」
「拍子を取る打ち手の事です。タタタタタタとかタッタカタッタカとか。」
「ああボク多分出来るっすよ。こっちの小さい方で叩けば良いっすか?」
「チャルは何でも出来るなぁ。」
「ご主人程じゃ無いっす。」
そこにいた全員がおま言う?って顔でこっちを見る。
「じゃあせっかくなんで皆最後に聞いて行って貰おうか。ちょいと外で演奏するよ。」
皆で家の前に出て俺はイデアで和太鼓を2つ生み出す。横に三基並べ、赤白のテープを巻いた当時使っていたバチも生み出してチャルにはタッタカタッタカの地方を頼む。
「何だぁ?何か始まるのか?」
晩飯に誘いに来たミクニとリューコが合流する。
「ありゃ太鼓かい?御使様はそんな事もやるのかい?」
「どうやらその様だな。芸事を嗜むって言ってたけどコレか。」
「おや、観衆が増えたな。では始めて行こう。行くよチャル!」
「はいっす!」
自衛太鼓 北海流 「流れ打ち」!!!!
「セイ!!」 ダダン!
タッタカタッタカタッタカタッタカタッタカタッタカタッタカタッタカタッタカタッタカ‥‥!
2発打ち込んだのを合図にチャルの地が始まる。
左手を前に構えてバチは真一文字、右手は右側面に斜めにバチを挙げて左足は前に折り右足を後ろに引いて構える。
「うおっ!ピシッとしてすげぇ気迫。」
この構えで200人全員がバチと頭の高さが揃わないと終わらない。日本武道館で全自衛隊音楽祭りの和太鼓演奏参加者は皆が通る道。統制の美を追求して手に血豆を作りながら練習し、更に全チームの整体に回って身体のケアに走り回っていた頃を思い出す。
ダダンダダンダン!ダンダンダダン!ドドダダドドダダドドダダドドダダ!ダダンダダンダン!ダンダンダダン!
「太鼓から太鼓へ移ってく!?」
そう。自衛太鼓の主流派「北海流」は太鼓から太鼓へ移っていく「渡り」という打ち方が特徴。この『流れ打ち』というのはその特徴を活かした曲で、『山彦』という曲と並ぶ代表曲だ。練習の時は広い体育館の端から端まで『2列』の太鼓を並べて全員で往復して帰ってくる練習をする。腕を交差させて行く動きを『捲り』という所から通称『捲りだワッショイ』 終わったら体重は1.5キロぐらい落ちてる。(計量した。)チャルにやって貰っている地方の人なんか全員の往復が終わるまで止まらないから前腕部が死ぬ。整体で拳が開かなくなったり、ばね指になってたり太腿の乳酸溜まりまくってたり肩イワしてたりした人を診てる最中に「痛え!!俺は何もやってねぇ!!」と拷問を掛けられてるかの様に叫び散らされた物だ。(そうやって少しでもボケて声出して笑いに変えてないと痛みに耐えられないらしい。)
「セイ!」 ダダン!!
と締めの2発を打ち込み演奏終了。 ギャラリーに礼をする。街の人間がなんだかんだ30人程集まっていた。皆笑顔で声を上げて拍手を送ってくれる。
「(カナリ様はやはり楽しませている時の笑顔が1番ですわ!)」
イセも盛大に拍手を贈った。




