カナリの教室④ 仕事の本質と感情のコントロール
「休憩を挟んだは良いけど大丈夫?情報量が多いと思うけど。」
「正直頭はパンパンだけど今聞いとかないと次いつ聞けるか分からないから頑張る!」
そう言って元気あります!って感じに答えてくれたのはパン屋のヤチ。ティナもそれに続く。
「人生で1番興味持って聞いてる!もっと!もっとだ!」
「なら続けよう。次は仕事をする上で重要な事を話していこう。地域内乗数効果を上げる事を考えるのは分かって貰えたと思うけど、どの様に働く姿勢を取るのが良いか。これはあっちの世界の文字を使って説明した方が早い。」
俺はこの世界の文字を書いてしまう能力を強い意識を持って止め、『仕事』の字を書く。
「これがあちらの世界の仕事という文字。この1文字目をまず注目してみよう。左側の『イ』これが『自分』、右側の『士』は剣士とかの士これが『上位的存在』を意味しています。この2つが寄り添って事を為すから『仕事』となります。」
文字を書くのに補正が掛かるの結構しんどいな。
「どんな社長でも客に対しては下。お客が払う外貨で養って貰っている存在だからね。じゃあお客の立場になった時良い仕事をして貰おうと思ったら?ではギン君。」
「良い客である事?ですか?」
「正解。でもどちらも人間。大小問わずどこかで必ず失敗をする。その時上位的存在だった時どうする?」
「強く叱る、ですかね?」
「叱るは正解。強くは言っても良いけどまずは失敗した責任の所在確認と責任の果たし方の提案をするんだ。この失敗を繰り返させない事、それをここで被害者である自分の前で宣言させ、約束を守ると言えるなら失敗した本人は次は繰り返さず済む様に意識をするだろう。上位的存在側の方の威厳も守る事に繋がる。」
ちょいとポカンとされたけど少し分かりづらかったかな?
「この時に失敗された事への怒りをぶつけるのは自分の溜飲を下げるを優先しただけで何もその後続かない行為。その場しのぎで満足してる愚か者と一緒だ。継続を考える事で『失敗は自分の所で止める!連鎖させない!』その気持ちで受け止める事。」
マーカーで『士』の文字を指す。
「これは人の形から出来ている字で上の横棒が『腕』で、下の横棒は『足』を示している。上位的存在は足場をしっかり固めて腕を広げて寄り添い、下位的存在を受け止められる姿勢が求められる。一方『イ』の方は頭を下げてお願いする謙虚な姿勢を表している。だけど頭の部分は士より上に来ているね?これは上位的存在よりも上に行く向上心は忘れない様にする事を表してる。上位的存在はそれを後押しし、相互作用で事を為して伸ばして行く事が『仕事』なんだ。」
この形が崩れるとどうなるか。やるべき仕事量とやる気を表した棒グラフを描いて説明。2つの棒はいずれも100%の状態だ。
「もしこれが「あの上司腹立つー!」とか「あの部下使えねー!」とか言い出してこの上位的存在とか考えなくなって関係性が離れ、『士』が無くなって『他』に行っちゃうと『他人事』になっちゃう。他人事を全力でやるかな?ギン君。」
「やらないですね‥。」
「責任感があって7割って所でしょ?じゃあ残りの3割はどこに行くか?それは受け止める責任のある上位的存在の所に上乗せされる事になる。なんと13割仕事しなくちゃならない。」
130% 尖ったグラサンのおっさんでも120%中の120%だというのに、更に部下が多かったら‥‥気が遠くなる。
「こっち(上位的存在)もやる気が無くなっている7割の状態でほぼ倍の仕事をしなくちゃならなくなる。で、こう言うんだ。「俺は仕事してる。お前ら何だ。」ってね。悪循環の始まりだね。この仕事の関係性を築けてない事は先程から言っている客観視が出来てない場合が非常に多い。下位的存在のやる気を出させる。仕事をする上で非常に大事な事だと分かって貰えたかな?」
「「はい!!」」
良い返事だ。特に運送業の跡取りであろうサダムネ君は真摯に受け止めている様子が窺える。
この内容は自衛隊時代の『士気の重要性』を考えた時に分析したもの。上下関係の強い組織なので特に顕著に現れやすかった。下の者がそこで活躍するには階級が関係ないもので黙らせるか、仕事量と精度を上げて黙らせるか。実績ビンタするには数が必要だった。俺の出した答えは先程ダル君に言った『止まらなければいずれ追い抜く』 不器用な考え、不器用な自分、臆病な心だったが挑戦をやめない事でカバーして最終的には認めさせた。思い返せば、いやぁどこ行っても全力でやってたら幹部にたらい回しにされたよね。身体壊して、はいじゃあ免許に行かすのなし!とか士気を削ぐ上官もいた。 これを自衛隊用語 『バ幹部』 という。このネーミングセンスよ(笑) 強制マルチタスク生活で士気をそれでも維持出来たのはそれらをきちんと見て理解してくれた中間の階級の班長達の存在だった。この子達にはせめてバ幹部にはならずに班長達の様になって欲しい。
「士気。つまり精神や感情を自分で舵取りする必要も仕事をする上で出てくるだろう。ということで、ここでまたあちらの世界の文字で説明。」
書いたのは横に『喜怒哀楽』 感情の四字熟語。
「これは喜怒哀楽といって各感情の表現をしたもの。喜び、怒り、悲しみ、楽しみ、この四つ。あちらでは何故この順番なのか?というのは考えられていない。負の感情と正の感情とで分けて『怒哀喜楽』とかでも良いはずなのに。」
初めて見る字がまた来て戸惑っている面々。何とか付いてきてくれ。
①そのままの順で読み解く
「人間は喜ぼうが怒ろうが悲しもうが最期は思い出にして楽しむ事が出来る存在。まずは経験出来たと思って取り組む事で、後に怒ったり悲しんだりした時も心の復帰が早くなる。あちらの言葉で『若い内の苦労は買ってでもしろ』というのがあるが、それは実は間違いで、これは怠け者の前世代が自分達が楽する為に押し付けに使う無責任言葉。正確には『若い内の『経験』を買ってでもしろ』面白いと思った物を積極的に取り込みに行けという教え。それをする事で次の事に役立つ。」
次は2本縦線を喜怒と哀楽の間に書く。 喜 l 怒哀 l 楽
②内から外へ
「心の中に怒りと哀しみが芽生えた時はそれを外に出す時には喜びと楽しみに変えなければいけない。怒りと哀しみをそのまま外に出しちゃったら事件になっちゃうね。結果自分の立場を危うくしちゃう。これに若い内に買った『苦労』で対応したら乗り越えられたとしても余計に心が病んじゃう。」
荷物に更に過重積載するようなもんだ。その結果、さっきのダメ上司の士気のグラフと同じ、悪循環が始まる。
「そうならないためにさっきの『経験』で喜びと楽しみに変える必要が出てくる。それを『若い内に』と言うのは脳の成長過程に関係があって、個人差男女差はあるけども5歳から12歳が神経、12歳から骨格、16歳から筋力という形で成長して行く。この5歳から12歳に行った楽しい経験や遊びは大人になってからもその脳神経なわけだから楽しいと感じる。ところでギン君の木工製作所には、あちらの遊び道具のけん玉製造の話は来たかい?」
いきなり話が飛んできて面食らうギン君。
「はっはい。先生の生み出したけん玉の話が来ていますが‥‥あっ!」
「そう。この楽しい経験や遊びを促す為の事業の1つでもあるんだ。」
「あの事業にそんな意味もあったんですわね。」
その会議に出席していたイセは頷く。その隣から手が上がる。ヤチだ。
「今の内に楽しい事やっとけって事ですかー?」
「それも存分にやって欲しいけど次に言う事に繋がるから注意が必要だよ。」
③最初から楽を選ぶと後には何も残らない
「これを見ると最初から楽を選んだ場合、続く文字は無いね。その楽や楽しさが終わった時、その次には第5の感情『恨み』が発生する。「こんなはずじゃなかった。」って自分の基準からズレた事に恨み言を言い出すんだ。同じ負の感情である怒りと哀しみを外に出したらどうなるかな?」
「事件‥‥。」
「そう。悪循環の始まり。やって貰えて当たり前で楽して過ごして来てる人程これ言うから。特に災害時など苦難に直面した時、苦労して準備して備えていた人に対して貰えて当然の態度で物乞いする厚かましさを見せる。」
「では楽しんじゃダメって事になりませんか?」
聞いて来たのはマイ。
「いや。楽しむのはあくまで『何かが溜まった時』というだけ。喜びが溜まった時は他の人と共有して楽しむ、怒りや哀しみは楽しい事で解消する、やれる事をやって後は結果を待つという時に肩の力を抜いて楽になる、という具合に自分の状態の緩衝材や補助として楽しむがある。」
「あー楽しむは『手段』という考えなんですわね。」
「そういう事。無論何が楽しいのか?に関しては人によって違う。ただそれを定める時期は言葉や物を覚え身体も動くこの学生の時期が最も適しているという事。ならばどうせ溜めるなら、知識や体験を今の内にどんどん溜めて楽しみに行きましょうって感じだね。 これが人生の基本『よく遊び、よく学べ』だ。この手段を身につけて仕事や人生に役立てて下さい。」
「「はい!!」」
「次はこれらを行う為に必要な物の話をします。」
「必要な物?」
「それらを支える土台。『身体』の作り方です。」




