カナリの教室③ 地域内乗数効果と付加価値
「地域内乗数効果?」
サダムネ君が読み上げるも何かは分からない様子。皆も同様だ。
「地域内乗数効果、これは仕事で何かを得た後の流れになります。」
ホワイトボードに書くのは『自分』『お店』『問屋』 アイテムBOXから金貨を出す。
「①お店から商品を買いました。②そのお金でお店は問屋から銀貨8枚の価格で物を仕入れました。」
取り出した金貨を①②の順で移動させていく。
「実際に物質的には金貨一枚が移動しているだけなのに1枚と銀貨8枚のやり取りが出来ているのが分かるかな?」
「あー!」
理解の声を上げたのはパン屋のヤチ。
「これが移動する毎に上乗せされて行く『乗数』という物の正体。『効果』はこれらの『自分』『お店』『問屋』は皆これで収入を得て税金を納めているね。その税が潤い、皆の活動の補助や生活の補助に充てられて更なる外貨を稼いで行く。これを業種、街、国単位の範囲や枠組みで効果を上げていく事が、『地域内乗数効果』 これに皆のやりたい事や仕事を乗せたり合わせたりして行く事を考えて欲しい。もう一つ図を描こう。」
描いたのは滝とその水を受けるバケツの図。
「この滝が皆で稼いだ『外貨』 桶が街や国というさっき言った『枠組み』 外貨を稼げれば枠組みを担う人は外に漏れ溢れない様に大きくしたり強固にして、中の水がその桶の中でぐるぐる巡って行く様にする。事業内容と期待される効果の時にサダムネ君に例を出した支援の話はこの桶の強化に当たるね。」
「民は外貨を稼ぎ、その税でより大きく稼ぐ枠組みを作るのが為政者ということですか。」
そう聞いてきたのはマイ。
「飲み込みが早いね。為政者に限らずお店の店長、家族間という枠組みの中でもこの現象は起こる。規模が違うだけ。」
「では剣士は‥‥必要無い職と思われているのでしょうか‥‥。」
あー稼ぐ事に与してない職業を目指しているんじゃないかと不安なのか。
「必要だよ。実はこの桶は所々穴が開いているんだ。つまり、稼いだ外貨は必ず外に漏れ出ている部分がある。他の店や街で物を買ったり、あるいは盗賊に奪われたりすれば他の桶にその外貨が溜まることになる。またはその桶ごと破壊されるかも知れない。それらを防ぐ為には何が必要か分かるかな?」
「取り締まる者‥と思います。」
「そうつまり『秩序』だ。その秩序で民とこの地域内乗数効果を守る為に剣士という道が1つあると思うよ。枠組みを守る番人、その役割を補助するものの1つが『剣』さ。番人がいる事で安心して活動が出来て民がイキイキと稼ぐことが出来る事に繋がる。命の保障が無かったら金を稼いでらんないよね。まず安全を確保しなきゃ。」
自衛官になって初めて銃を持たされた時に俺も考えたなー。結論は『病気に対しての免疫力と同じ物』 国の有事の際にその有事を打破する為の手段の1つに銃があり、即応出来る身体や精神や技術と同じ。ただ使うのは有事が発生した時のみである事を忘れないこと。専守防衛や災害という必ず後手になる理不尽をぶつけられてもこの『心の秩序』を保ち、任務を果たす。その為の訓練に日々邁進しているのだ。
「枠組みの守り手としての剣‥‥。」
「一度剣とはどういう存在か、使うべき時はどういう時か見つめてみる事だね。元国の守り手でもあった者として言えるのは‥。」
マイは見開いた瞳をこちらに向けて聞き入る。
「守る者の為に使う力が最強!守り切った者の笑顔は最高!だ。」
笑顔でマイさんに言い切る。
「!!!!\\\\\\\」
マイの顔は驚いた様な表情で真っ赤に頬を染める。
「(マイの心の旗が上がってしまった様ですわね‥‥何してますのカナリ様‥‥!)」
イセの表情が険しい。何か変な事言ったか?
俺は更に図を足す、穴から漏れた滝の下に大きな桶の絵を描いた。
「少し逸れたけど、この桶に開いた穴から漏れた先、この1番下の大きく広い桶を作る事を考えて欲しい。色々な所から溜まって行く最終的な桶を作り上げれば勝手に潤う事になる。各業種で考えるも良し、街で一丸となって作り上げるも良しだ。」
この最後の桶を元の世界で作り上げたのがAm◯zonだ。利便性を追求し、この仕組みを理解して作り上げた一大コンテンツ。社長は下積みを日本で行なっていたというから驚きだ。「仕組みやルールを作った者が勝ち組だ。」と大阪の社長の元で仕事させて貰った時に習ったなぁ
「街一丸‥‥ああ!!それで僕たちに催し物を企画する案を出させたんですね!」
ダル君が閃いた様に笑顔になる。君が案を出してくれた1人だったのね。
「その通り。街一丸となってやる事を示す為に良い練習にもなるし、皆に意識付けにもなると思ってね。」
「なるほどなぁー!」
歳は1番若いダル君。15歳成人のこの世界では子供の知能指数や地頭は案外良いのだと思わされる。正直最初は不安があったが授業をしていても進め易い。
「これからも案はどんどん出していってね。コツとしては『特異点』を持たせる事。『利便性』『意外性』『恒久性』『娯楽性』『必需性』から考えたり、それらを掛け合わせたりすると意外とすんなり案が出るよ。」
「利便性‥、意外性‥、こうきゅう性?」
「ずっと続くものって意味だね。」
「はい!」
ダル君はめちゃくちゃやる気になってメモを取っている。その素直さマジ大事よ。
「これらを全てひっくるめて『付加価値』となります。どこに情報が転がっているか分かりませんので常に意識をしておく事をお勧めします。」
「「はい!!」」
「注意点としては為政者の中には街や国という桶でお金が集まる為に、これを税として補助に回さねば行けないのに、自分の功績と勘違いして占有する奴が出てくる事がある。」
「私腹を肥やすというやつですわね。」
「そう。上に立つ者は自戒をし、補助や躍動や守護に徹する事でその懸命な姿に民は従いてくるものと思う事が大事だね。本来全ての業種に目を向けて外敵からも守らなきゃいけないからそんな暇あるわけはないんだけどね。それに疲れて逃げて見苦しく地位にしがみつく奴も多いけど、そういう人を『終わってる人』って言うんだ。そいつは『だって』『でも』から続く言い訳ばっかり言うぞ〜。見苦しいぞ〜。皆は普段言ってないかー?大丈夫かー?」
皆「うわぁ‥嫌だなー。」って顔した後に他を見回すけどここにはどうやらいなさそうで安心した。
「自衛隊での決まり文句の1つだけど『言い訳は、良いわけねぇ!』って皆覚えといてね。」
言い訳で人が救えるなら世話はない。出来ない理由を外に吐いたところで納得する可能性があるのは自分の心だけ。他人は絶対納得しないし出来ない物事が解決もしない。平和ボケした人間ほどこれに陥りやすく身勝手で無責任な行動を取る。
「ではここでもう一度休憩を挟もう。情報量も多かっただろうし私も厠へ行きたい。」
「了解しましたわ。」
次は実際に仕事に移った時の事を話そう。 その前にトイレトイレ。




