夢見と宣言
ゴシマとミヤーザの国境付近の街 ツヅキ
ミヤーザへの帰路、中間点のここツヅキで一泊。
「おはようチャル。」
「にゃ!!?おっおはようございますっすご主人!」
「今日は添い寝になってなかったんだな?」
「そっそうっすねー!ボクもそんな日もあるっすよー!」
明らかに挙動不審。何か俺の身体にされたのかな?と思ったがそんな形跡は無い。取り越し苦労か? 階段を降りて食堂へ。皆集まってる。
「おはよう皆。」
「あっ‥!おはよう主‥。」
「おはようございますカナリ様‥‥。」
「おはようございます‥‥。」
「ご主人様‥‥おはようございます‥。」
何だろう?なんだか皆よそよそしい?というか照れてる?
「皆様子おかしいけど何かあった?」
「いやあちょっと夢見が‥。」
メキがそう答えると皆私もと答える。
「皆が皆同時に気になる夢見るってこの宿に何かあるのかな?」
「いえ。多分そうじゃないと思いますわ。私達だけの様ですし。」
確かにリューコさんや他の宿泊客はすっきりした顔で朝食を食べている。ここの所、緊張が続いたからそれが今のタイミングで揺り戻しみたいに夢に現れたのかもしれない。皆に対してのケアが必要かな。
「「「(あんな夢見た後じゃまともに顔見れないーーーー!!)」」」
そんなみんなの様子を置いて話を進める。
「今日はロームに寄ってツバサの里帰りを済ませた後、ベルレ・ガルアに戻り帰還の報告と事業の確認と補充と休息に充てようと思う。イセ様には例のイセ様と同世代への授業を組みたいので呼びかけをお願い致します。」
「分かりました。数人になるかと思いますが来て頂きますわ。」
「ありがとうございます。メキはノクトちゃんを休ませてあげて欲しい。ずっと移動に戦闘だったからね。」
「了解だぞ主。」
「リューコさんはお店に戻って頂いて、またベルレ・ガルアを立つ時にご同行願います。駆けつけるのが遅くなりますがご容赦ください。」
「なぁに私はこの時を3年近く待ったんだ。数日伸びるぐらい誤差だよぉ。」
「感謝します。何かしらの理由があると思うので婚約者と無事会える様に物心両面の準備を行う期間としてお考え下さい。」
「分かったよぉ。」
「チャルとツバサはギルドに保管して貰っているポガポガの肉等、補充の手伝いをお願いするよ。なんとか今日中に終わらせたいからよろしくね。」
「了解っす!」
「承知致しました。」
「では朝食後直ちに出発します。」
朝食後身なりを整え俺達は郊外でノクトちゃんに乗り、ロームへ向かう。
「そういえば夢はどんな夢を見たんだい?」
「へっ!?そっそれは‥‥。」
そんなに動揺するくらい嫌な夢だったのかな?
「いやぁちょっと苦しい夢だっただけで何でもないっすよ。」
「苦しかったのかー、やっぱり戦の揺り戻しが今来たのかも知れない。休息を考えた方が良いな。」
「大丈夫ですわ。キサガナルの事もありますし、カナリ様の立てた計画で行きましょう。」
「そうですか?ではそれで‥。」
目が合うとイセは顔を逸らす。何か息遣いも心なしか荒い?
疑問を残しながらほどなくしてロームの街に到着した。
郊外に着陸し、みんなで街に向かう。
宿場町といった様子で丘に沿って家が立ち並ぶのを見るとどことなくジ◯リ感がある。
「あっ‥‥。」
街の西側の家の前で布団を干している女性を見てツバサは立ち止まる。
「えっ‥‥? ツバサ!?ツバサかい!!?」
「母さん、ただいま‥‥。」
母親らしき人はそのままツバサに駆け寄り涙を流す。
「あんた!味方を助けるためにクオカーフに捕虜になったって聞いてどれほど心配した事か!このバカ娘が!!」
ドンドンとツバサを叩きツバサはそれを受け止め続ける。
「ごめん母さん。でもこの方に解放して貰えたの。紹介するね。こちらベルレ神の御使のカナリツヨシ様。今はこの方の従者になるという事で解放して貰ったの。」
「あっあらあらすみません!娘が無事に帰って来た事で頭が一杯でとんだ失礼を!母親のミカサと申します!」
「お気になさらず。親ならそうなって当然です。改めましてベルレ神の御使加成剛志と言います。今回は縁あって娘さんを救う結果になりました。無事親子の再会が果たせて良かったです。」
「何とお礼を言ってよいか!無事な姿を見られて本当に嬉しいです!」
「母さん。この方はとても忙しい方なの。今もゴシマでの戦を止めてベルレ・ガルアに戻る途中という事でここに寄って貰ってる。」
「戦を止める!?そんなに凄い方なのかい?!」
「うん。クオカーフでも王様と一騎打ちして友好の証と私の解放をしてくれたの。従者としてこの方に恩を返す為に私も行くね。」
「そうかい‥。でも無事な姿と頼りになる人の下に居るならこっちは安心さ。これまでの期間を思えば雲泥の差だよ。存分におやり。」
「はい!」
「でも父さんの所には顔を出してから行きな。」
「うん。もちろん行くよ。」
「御使様。思いの強い子で何かと迷惑かもですが、その愚直な一途さで隊長にまでなっちゃう技量もきっとお役に立てると思います。この子をよろしくお願い致します。」
ミカサは深々と頭を下げる。
「すでにゴシマでもその力を役立てて頂きました。これからも活躍して頂きたく思います。娘さんをお預かり致します。」
「何ならツバサを嫁に貰ってやって下さい。」
「かっ母さん!!//////」
照れながらも口元ニヤけてるツバサを見て他の面々はカチンと来ちゃってる。ガルツ神官達と同じく自分の子をポンと差し出しちゃう思い切りの良さは何なんだろうね?
「ええとミカサさん。残念ながら婚姻等々はガサで決めた約定がありまして今は出来ない事にしております。」
「おやそうなんですか?」
「ツバサ。君は今日は残って良い。親御さんとゆっくり過ごす事にして、3日後ソーアに向かう時にベルレ・ガルアに来てくれれば良い。」
「え!?良いんですか?」
「せっかくの水入らず、気を回せてなくて悪かったね。ゆっくりとこれまでを語り合うと良い。では今日中に仕上げたい仕事もございますのでベルレ・ガルアへ戻りたいと思います。ミカサさん今後ともよろしくお願い致します。」
「はい。御使様のご配慮に感謝します。3日後そちらに必ず向かわせます。ですが今暫しの時間を頂き、うちの旦那、この子の父親にも会って行って下さい。」
「それは是非もありません。ご挨拶させて下さい。」
では‥と連れて来られたのは丘の中腹にある場所。
「旦那です。」
紹介されたのは‥‥お墓。
「あんた、ツバサが帰って来たよ。生きてると信じて待った甲斐があったってもんさ。ツバサを救って下さった方も来てる。」
俺も頭を下げて挨拶。他の面子も目を閉じて黙祷。
「こんにちは。ベルレ神の御使加成剛志と申します。今回縁あって娘さんの命を救える事になりました。私の従者としてですがこれからも手伝って頂きこの世界を豊かな世界にしていきます。御見守り下さい。」
ツバサも墓の前にしゃがみ込んで挨拶。
「父さん、ただいま。貴方のツバサはこれからはこの人の下で頑張っていきます。無事成し遂げられるように見守っててね。」
普段は見せない娘としての柔らかい態度と口調で手を合わせ、娘は宣言する。
「父さんに習った剣で、カナリ様の進む『皆を笑顔にする道』を切り拓きます。行ってくるね父さん。」
丘に強めに風が吹き、頑張ってと父親が答えた様な気がした。
丘を後にしながら少し皆と離れたタイミングでツバサは振り返り、父のお墓に向かってにっこりと微笑む。
「(ボソッ)孫も期待しててねw」
耳の良いチャルだけがその宣言を黙認する。




