姉とド正論
次回で100話目!ちょっと違う話で行きます。
「お姉様‥って事は貴女がライフ様ですか?」
「お初にお目に掛かりますベルレ神の御使カナリ様。私がゴシマ第一王女にしてシーの姉、ライフ・パーク・カイでございます。僭越ながら『海の歌姫』と呼ばれています。今回は敵の目標であったので密かに南の母の城に匿われておりました為、遅れました事を詫び、此度の一件に関して御礼を申し上げます。」
なるほど、確かに良い声をされている。歳はチャルぐらいか?なびく金髪、もみあげは縦ロールな所は姉妹って感じがするな。
「初めましてベルレ神よりこの世界に遣わされた加成剛志と申します。カナリで結構です。先程の王の決定に意見がお有りの様ですが?」
「はい。この2人は決断が早過ぎる傾向にあります。私も姉として妹の旅出を送り出してあげたい所ですが、ゴシマの最強戦力を外に出す事は今回の事でも国の脅威となる事が判明しました。御使様も事業がおありという事はその隙を狙って来る可能性もあります。旅に出すのは慎重に判断すべきです!」
まあ正論ではある。手の届かない可能性への配慮は為政者は常に考えていなければならない。ちゃんと王族の義務に従った意見なのだが。
「そもそも今日会ったばかりの男に大事な娘をポンと差し出す父親がありますか!!娘をなんだと思ってますの!」
それな。
「そういきり立つなライフ。シーの眼を見てみろ。戦の任務に就いてから曇っていた眼が輝いているではないか。その輝きを取り戻して下さったのはカナリ殿なのだ。御使としての立場、国として縁を強く持ちたい事情、シーの気持ちを考えた上での話だ。」
「輝きを取り戻して下さった事への感謝はしますが、そもそも14歳の女の子を戦の任に就けねばならない状態の方が悪いんですわ!戦の難を逃れて気が抜けておりますの?冷静になって下さいまし!」
いやあド正論でイイねー。
「私はそちらの意向に沿うつもりです。少なからず危険が伴う旅や事業を行なっておりますので覚悟が必要かと。身の安全、国の守りを考慮して残られるのもまた正しき道と思います。ただ申し訳ないですがこのまま内輪の話に時間を取られる状況ではない故、提案がございます。10日前後で一度またこちらに赴きキサガナルの王をとっちめに行きますのでその時までにそちらの話をまとめておくというのはどうでしょうか?」
シーさんが来てくれるのは正直ありがたいがご家族の同意が得られていない状態では誘うわけにも行かない。猶予期間を設けるべきだ。
「御使様は冷静でいらっしゃって助かりますわ。こちらで話し合いの末、同行について返答を致します。」
「あと1つ‥、質問をよろしいですか?」
「はい?何でしょう?」
「今回の侵略理由がライフ様である事は聞いていますが、妻に娶りたいだけで軍勢を動かして来る程キサガナル王は常軌に逸しているのでしょうか?それとも例の海の歌姫の力で開かれるという海底の遺跡が目的でしょうか?」
「恐らく後者でしょう‥‥。キサガナルは人間族を軽視する気概は他の国の比ではないと聞いています。遺跡への道が開かれれば私は用済みとなって殺されるか奴隷にされましょう。それを平気で行なって来る王だと私は会ったその時の言動で悟っています。」
「ふむ。人道からは外れた我欲の強い方なのは察します。能力を欲しているのなら私の推察に1つの筋が通って来ますね。」
「推察‥ですか?」
「私を暗殺しようとしたクオカーフの大臣の余罪の中にランフォーの鳴き声の研究があったとナーカス王から聞いております。その研究が他に流れ、キサガナルの王の目に留まり、海の歌姫の歌に変わる物にできないかと踏んだ。海底遺跡の結界は声による障壁破壊か同調による開門だと既に突き止めているとすると、わざわざ人間族の手を借りずとも突破出来る方を選ぶでしょう。だがそれは叶わなかった。その副産物で今回の魔法封じの兵器が恐らく出来上がり、研究失敗の腹いせと新兵器の実験を兼ねてライフ様を獲得に来た。兵の事も自国も考えず我欲に任せて今回の事に及んだのではないかと。」
「その推察は的を得ていると思います。何にせよ報復措置は必要となってきましょう。」
「そちらはお任せを頂けますか?」
「存分にお願い致します。」
「分かりました。シーさんの同行の件は保留。キサガナルへは使者として赴き対処するという事で。しかしそこまでキサガナル王が固執されている海底の遺跡にも興味が湧きました。キサガナル王への措置が終わった後、使命に役立つ物と判断した時にはライフ様にご助力を願うかも知れませんが御承知願えますか?」
「カナリ様の目的の一助となるならば考えましょう。あくまでも伝説ですので力になれるかは分かりませんが。」
「その時はその時です。よろしくお願い致します。ではそろそろ次へ向かいたいと思います。シー様。先程言った様にまずはゆっくりとお休みください。家族と話し合い、自分の役割と気持ちと向き合ってみて下さい。また答えを聞きに伺います。サイゴウ様も良い娘に囲まれておりますね。お身体とお子様達を大事になさって下さい。」
それまで姉のライフに圧倒されていたサイゴウとシーは不意に自分に言葉が飛んできて我に返る。
「カナリ様!分かりました!でも気持ちを変える気はありません!お待ちしていますわ!」
「では。」
一礼し、その場を後にする。
外に出てノクトちゃんを召喚して貰い、ベルレ・ガルアに向けて出発する。
「良かったんすか?シーさんは来たかったと思うし、王の言っていた外交の事もあるっすけど。」
「家族の反対がある中来てくれとは言えないよ。内輪揉めに時間は割けないし外交はなんとかするさ。でもこれで三国の王と面識と友好を結べたからね。順調過ぎるぐらいだ。一度ベルレ・ガルアに戻って各事業に当たるつもりだよ。色々補充もしたいしね。」
「了解っす(シーさん、道のりは遠そうっすよ‥‥)。」
「ツバサは久々のミヤーザだし、実家とかに行くかい?生きてた事を報告しに行こう。」
「えっ!よろしいのですか?」
事業が落ち着いてからとでも考えていたのか目を見開いて驚くツバサ。
「勿論。その為にあちらから解放した様なもんだし。実家はどこ?」
「実家は‥ロームという街です。」
「ローム?」
「ベルレ・ガルアとミヤーザの首都の間にある街ですわ。距離もさほど遠くありませんし寄っても支障はないと思います。」
まだまだ地理に疎い俺にイセは説明してくれた。ありがたい。
「じゃあ問題ないね。ノクトちゃんよろしくお願いね。」
「グルゥウ!」
「任せといて!だってさ。すっかり主の事お気に入りだよ。」
「皆様‥‥ありがとうございます。何で恩を返せば良いか‥‥。」
「今回頑張ってくれたご褒美って事で。気にしないで良いよ。」
「えー?ツバサだけズルいなぁー?」
「みんなにも考えてるよ一応。」
「本当ですの?!」
「本当か?!主!」
「ご褒美になるかは分からないけどまあ楽しみにしててよ。」
ヒャッホー!と皆乗り気になってくれた。色々と連続で手伝って貰っちゃったからこれぐらいはね。




