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現実世界でチートだった男が異世界に行ってもほぼチートだった件  作者: 松本隼龍


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謁見と宣言

翌朝、屋敷からそのまま続く道をサウ車で王の城に向かう。


「昨夜は安眠出来ましたか?大丈夫でしたか?」


やけに強めにシーは聞いて来る。だがその眼は腫れぼったくなっており、そっちの方が心配だ。泣いてた?


「私の方はグッスリと。それよりもシーさんの方が気になりますが大丈夫ですか?」

「へっ?!ああこれは大丈夫です!やはり戦から解放されたからでしょうか、心が落ち着かず中々寝付けなくて‥‥。」

「ああ、揺り戻しというやつですね。戦の殺伐とした中で神経が張り詰めている状態から解放されるとそうなります。人間らしい証拠ですし、謁見後は一度ゆっくりとお休みください。それで回復すると思いますよ。」

「そっそうですわね!そうさせて頂きます。(あんな話を聞かされて、更に気遣われてはますます好きになってしまいます!イセお姉様も同様だったのでしょうか? あの過去を経てなんでそんな優しい顔が出来るのですか!ああああああああああ!)」

「(あー何か悶え苦しんでるっすねー既視感しかないっすー。)」


そんなこんなですぐに城に到着。王の間で謁見だ。


「国王陛下。シー・ザ・カイ、ただいま戻りました。同時に此度の侵略を阻止する協力をして下さったベルレ神の御使様とその御一行をお連れしました。」

国王は壮年の金髪の男性。体格はそこそこあるが左足がない。これがシーが出張っている理由なのかもしれない。


「シー。ソーアとカラハマの件大義であった。幼いお前に戦わせてばかりですまない。」

「国の為でございます。王族として、行える者が行うというだけの話ですわ。ではカナリ様。」

「ベルレ神の御使の加成剛志と申します。カナリで結構です。ソーアでの縁あって勝手ながら助太刀をさせて頂きました。シー様と国が無事で何よりかと思います。」

「ゴシマの王、サイゴウ・カイである。カナリ殿、今回の助太刀に深く感謝する。娘も救って頂き父としても重ねて感謝を申し上げたい。」

「娘様の頑張りに手を貸したくなっただけです。御使としてはこの世界の調和を使命として派遣されて参りました。その使命の内とお考え下さい。」

「あくまで仕事の内と申すか。謙虚な事だ。だが其方は戦を止める力を持つ者だ。王としては見定めねばならぬ。カナリ殿は何を以て使命を完遂するおつもりか?」


一国の王としては当然の質問だな。個人で戦を止める能力が近くにいるというだけで脅威だ。悪事に繋がるようなら遠ざける必要がある。


「私の生きている理由は『自分の知識や経験を外に活かし、明るい豊かな社会の一端を担い、以て国民の負託に応えると誓った自衛官としての使命を全うし死ぬ』事です。自衛隊とは別世界で私が所属していた国の守り手集団の名で、国民の負託とは『笑顔の継続』であると判断しています。こちらの世界に来たからと変えるつもりもありません。それに邁進してこの世界の調和を図るというベルレ神からの使命を全うしたいと思っております。」


「戦を止める力があれど使命を全うする為のみに使うと?」

「はい。平時は笑顔の創出・継続に努め、有事の際には最前線に赴き解消する。二刀流の構えで戦っていく所存です。完遂の目安は私が死ぬ時、私抜きでも自立して持続的発展を目指す者達で溢れる状態である事と思っています。また死ねば次の世界に送られるかも知れませんがそうなってもやる事は変えるつもりはありません。」


うんうんと頷きゴシマの王は笑顔になる。


「相分かった。カナリ殿の使命感と献身には恐れ入るが、我も為政者として、その解を見せて貰った気分だ。政治の世界にも精通しておるのでしょうな。」

「はい。この世界に来る直前は政治家で前世代の怠慢の代償に苦しみながらも次世代に残すまいと戦っていた身であります。」

「やはりそうであったか。納得が行った。そこで、そのカナリ殿から見て今回のキサガナルの侵略はどう見られる?」

「とても許せるものではありません。侵略理由が国民の機微に関わる物で無い事、兵器に子供を使う卑劣さ、人質を取った上で更に実験台にするという傲慢さ、その場にいれば即殺しています。」


殺す、という単語でその場が凍りつく。


「実際に出来る者が言うと凄みが違うな‥‥。一国の王を相手にしてもそれを言ってしまえる胆力と自信に感服するぞ。だが少し怖いのは事実。何か強い縁を結んで置かねば国として安心出来ん。」

「何か協定などを結ぶ事を考えましょうか?」

「協定は所詮は契約。破棄すればそれまでな部分がある。狂気や悲しみに早変わりしてしまう事は政治家を経験なさっているなら理解して頂けるだろう。」


ふむ。公約破りや党や会派の鞍替えは日常茶飯事か。それはよく見てきたものだが‥‥ではどうする?ん?もしや?


「この国の王族と婚姻をすると言うのはどうだろう?親類とあらば心強い事この上ないのだが?」



やはりそう来るか‥‥。


シーが顔に手を当てて頬を赤らめながらこっちを見て眼をうるうるさせ始める。 子の意思を汲んだ王の申し出。娘と俺との距離を見て察したのか事前に申し合わせたのかは知らないが良い父親であり策士な王だな。後ろの女性陣はおでこに血管浮き出てるオーラを感じる。見えないけど。


「恐れながら私との婚姻やお付き合いに関してはガサで協定を結んでおりまして、7カ国全てと友好を結べるまで禁止とさせて頂いております。破れば私は自害の腹づもりです。よってその申し出には今の所お受け出来ません。」

「自害とは性急な‥。カナリ殿は自分に厳しすぎる気がするぞ。‥‥では妥協点として婚約ではどうだ?先程カナリ殿が挙げた協定とはなってしまうがカナリ殿にとってはそこでも良いから『協定』と申したのだろう?」

「前例を出してしまうと縁を結びたがる連中の政略結婚の火種となってしまいます。この国の制度は一夫多妻ではないでしょうし私の目も手も回らない状況に自ら臨む形には今の所なれません。」

各国の繋ぎや文化レベル向上とてんやわんや状態だ。今はこれが精一杯。


「なるほど、あくまでも使命優先という事だな。国としては脅威である存在と縁を強く結び、安全を図りたいのだとそちらには理解して頂こう。それともう一つ。此度の件の礼は何か所望はあるだろうか?」

ようやくこの段取りに辿り着いた。

「では今回の戦の捕虜と敗残兵の一部が亡命を希望しております。遺恨あるここゴシマには置けませんのでガサに農夫として受け入れる事にしました。その為にどうしてもクマポンを経由するのでクマポンに一言口添えを願いたいです。」

「お安い御用だな。すぐに通達を送ろう。」

「もう一つはこちらの国で悩まれている事と作物、文化の情報をあるだけ見せて頂きたく思います。それらを研究し、自国他国問わず利益になる様に還元を。山育ち故に海の事は疎いですが学ばせて頂きたい。」

「なんとも自身への欲求の無い‥‥。」


頭を項垂れるサイゴウ王。


「献身が過ぎると周りは心配に変わるぞカナリ殿?」

「支えてくれる者達がいますのでそこは安心しています。」


後ろに控える女性陣に手の平を向けて言い切る。


「ふっそうか。では我が娘もそこに加えて頂こう。齢の関係でまだ妻にはなれぬが、国とのやり取りに置いては王達と面識がある者が側に付いていると何かと便宜が図りやすくなろう。シーもそれで良いな?」

「はい!カナリ様に尽くして世界の調和を共に目指したく思います!」

「国の情報に関しては次回の来訪までに。国防に関しては御使と強き縁を結んだとだけ触れ回らせて頂くぞ。幾らか牽制になっている間、カナリ殿が調和を為される事を祈る。」


中々の申し出に心が追いついていないのが正直な所だが、ガルツ神官の時にイセの件を告げられた時に経験済みな展開だ。この世界の父親、娘すぐ任せすぎじゃない?


「了解致しました。シーさんはご同行という事ですが本当によろしいですか?」

「ああ。娘の幸せがそこにあるのなら送り出すのも父親の役目だ。娘を頼みますぞカナリ殿。」

「シーさんも?」

「勿論です。」


シーはある意味人質みたいな感じだな。幼少期の徳川家康みたいな。本人目玉が爛々だけど。


「当人やこの国がそれで良ければ。」

「よろしくお願いしますわ!カナリ様!皆様!」


我が子を送り出す親の顔に変わった王はシーに告げる。


「シー。お前はその歳でよくこの国に尽くしてくれた。魔法学会の重役にもなれた道もあった身でありながら、片足の我に変わり国を回って国政の安寧に努めてくれた。こちらへ。」

「はい。」

シーの頭をそっと撫でて優しい表情で

「ありがとう。シー。これからは自分の為に生きなさい。」

「はい‥。」

少し涙ぐむシー。だがすぐに元気良く宣言する。


「ゴシマの代表として!カナリ殿が使命に邁進できる様に尽くします!行って来ますわ!」



「その前に、私からよろしいですか?」


扉が開き、1人の女性が入ってくる。 


「お姉様‥‥。」


今回の戦の敵の目標。ライフ・パーク・カイその人だ。

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