第八話 レシ覚醒!? 通う心と嫌悪感。
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咄嗟に手を伸ばしたけれど、もうレシはアルデオの前に立っていた。
このままでは、木がレシに当たってしまう。
おそらくあの体勢では、アルデオも力を制御することは不可能……!!
——神様、どうかお願いします。
この一瞬だけでいいのです、力を貸してください。
私は、この子たちを護りたいのです!
「ファイア!!」
構えた杖の先から属性魔法が迸り、彼の手を離れた倒木を撃ち抜いた。
咄嗟にアルデオがレシを庇って地面に伏せ、ルディアはそんな彼の守備力をギリギリで強化する。
ファファ……!!
自分の後ろに隠れていてくれた少女を抱きしめた瞬間、凄まじい音を立てながら倒木は爆散した。
*
「みんな、無事!?」
「おう! 俺もレシも大丈夫だぜ!」
「こちらも問題ありません」
「そっか〜、よかったぁ……」
全員の無事を確認し、ルディアが胸を撫で下ろす。
魔獣はというと、目の前で急に起こった爆発に驚き、私たちから距離を取っていた。
「レシ!! お前、急に出てきたら危ないだろ!?」
「ご、ごめんなさい……」
「俺の前に出ないって約束したよな?」
「でも……」
アルデオに叱られ、レシは小さくなっている。
――道中ずっと言いつけを守っていた子が、あのタイミングでそれを破るなんて。
何か理由があるとしか思えなかった。
「レシ、何故アルデオを止めようとしたのですか?」
「……あの魔獣、俺たちを攻撃しようとしたんじゃなくて、子供を護ろうとしてたんだ」
「子供? そんなのどこにも見当たらないぞ?」
アルデオが辺りを見渡す。
彼が言うように、幼獣の姿はどこにもない。
「いるよ、ほらそこ」
レシが指さしたのは、大きな切り株だった。
その根元には穴が掘られており、アルデオが中を覗くと、つぶらな瞳の幼獣が顔を出した。
「まじだ! 子供がいる!」
「アルデオがその子に近づいたから、あいつは怒っただけなんだよ」
未だ魔獣は距離を取ったままだが、こちらを警戒し続けている。
子供に危害を与えれば、すぐさま向かってくるだろう。
「でもさ、レシはなんでそれがわかったん?」
「切り株にいるって知ってたのか?」
ルディアとアルデオがさらに問いかける。
切り株で子育てをしているなんて、注意深く辺りを観察でもしていない限りは気づけない。
それとも、あの村で生活する者なら持っている知識……?
考えがまとまらずにいると、レシが口を開いた。
「え? だってあいつがそう教えてくれたじゃん」
少年の視線の先には、こちらを警戒し続ける魔獣の姿があった。
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「え!? レシって魔獣の言葉わかんの!?」
「何言ってるの? 『そこは私たちの家、その子から離れて』って言ってたじゃん」
「えぇ!? グオォォォォォォって言ってたよ!?」
「何もそこまで正確に再現しなくても……」
あたしの渾身の雄叫びに、メデリが呆れたようにため息をついた。
「アルデオは聞こえた?」
「いや、俺もグオォォォォォォだったな」
「メデリは?」
「私も同じです」
……もしかして、子供にしか聞こえないとか?
「ファファは!? ファファも聞こえた?」
「ううん、怖かった……」
少女はメデリの後ろに隠れながら、ギュッと服の裾を握りしめていた。
「じゃあ、レシだけが聞こえたんだ! すごいね!」
「レシからも話しかけられんのか?」
「わかんない。やってみる」
レシはじっと魔獣と見つめ合う。
すると、警戒していたはずの魔獣がゆっくりと近づいてきた。
「おい、危ないんじゃ――」
「大丈夫、何もしないって約束したから」
「まじかよ……。お前、魔獣と会話できんだな……」
のそのそと近づいてきた魔獣は、レシの前で停止する。
アルデオより少し大きな身体を屈めると、少年を肩へと乗せた。
「グルルルルルル……」
「もう、水を止めたりしないってさ!」
「そう言ってるのか?」
「うん!」
レシはそう言うけど、正直唸ってるようにしか聞こえない……。
ファファなんて、メデリの後ろから出てこなくなっちゃったし。
「グウゥゥゥ」
「うーん、それは聞いてみないとわかんないや」
「なんと仰ってるのですか?」
「村で一緒に暮らしたいんだって」
「村で一緒に暮らす!?」
魔獣が!? あたしたちと!?
それって……エサだと思われてない!?
「うん。絶対に人を襲ったりしないって――」
「いやだ! 魔族なんて、だいっきらい!!」
レシの言葉を遮ったのは、彼の妹であるファファだった。
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「後もう少しで着きそうだね」
それまで木々しかなかった景色が変わり、遠くに石壁が見える。
道も舗装され始めており、だいぶ歩きやすくなってきた。
「相棒と出会ってなかったら、私は今日も木の上で眠ることになっていたよ……」
「なるほど。それでレウィスのシャツには、羽根が生えているのか」
「違うよ! これは吟遊詩人としてのオシャレなの!!」
「そうか、てっきり鳥に貰ったのかと」
「……相棒ってさ、なんか変だよね」
キミにだけは、そんな風に言われたくないんだが……。
そう思いつつも、彼のお喋りに救われているのも事実だ。
「街に着いたら、まずは今晩の宿探しからだな」
「それなら良いところ知ってるよ!」
「本当かい!? それなら今日はそこに泊まろうか」
「絶対相棒も気に入ると思う! ご飯も美味しいところ知ってるし、案内するよ!」
鼻高々に宣言する彼を見ていると、こんな旅も悪くない。
なんて、そんな風に思うんだ。
魔族と人間、共存は可能なのでしょうか?
新勇者パーティも、なんだかいい雰囲気ですね。




