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勇者パーティから勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!  作者: おやまみかげ


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第八話 レシ覚醒!? 通う心と嫌悪感。


 ♥︎


 咄嗟に手を伸ばしたけれど、もうレシはアルデオの前に立っていた。


 このままでは、木がレシに当たってしまう。

 おそらくあの体勢では、アルデオも力を制御することは不可能……!!


 ——神様、どうかお願いします。

 この一瞬だけでいいのです、力を貸してください。

 私は、この子たちを護りたいのです!


「ファイア!!」


 構えた杖の先から属性魔法が(ほとばし)り、彼の手を離れた倒木を撃ち抜いた。

 咄嗟にアルデオがレシを庇って地面に伏せ、ルディアはそんな彼の守備力をギリギリで強化する。


 ファファ……!!


 自分の後ろに隠れていてくれた少女を抱きしめた瞬間、凄まじい音を立てながら倒木は爆散した。


 


 *


「みんな、無事!?」

「おう! 俺もレシも大丈夫だぜ!」

「こちらも問題ありません」

「そっか〜、よかったぁ……」


 全員の無事を確認し、ルディアが胸を撫で下ろす。

 魔獣はというと、目の前で急に起こった爆発に驚き、私たちから距離を取っていた。


「レシ!! お前、急に出てきたら危ないだろ!?」

「ご、ごめんなさい……」

「俺の前に出ないって約束したよな?」

「でも……」


 アルデオに叱られ、レシは小さくなっている。


 ――道中ずっと言いつけを守っていた子が、あのタイミングでそれを破るなんて。

 何か理由があるとしか思えなかった。


「レシ、何故アルデオを止めようとしたのですか?」

「……あの魔獣、俺たちを攻撃しようとしたんじゃなくて、子供を護ろうとしてたんだ」

「子供? そんなのどこにも見当たらないぞ?」


 アルデオが辺りを見渡す。

 彼が言うように、幼獣の姿はどこにもない。

 

「いるよ、ほらそこ」


 レシが指さしたのは、大きな切り株だった。

 その根元には穴が掘られており、アルデオが中を覗くと、つぶらな瞳の幼獣が顔を出した。


「まじだ! 子供がいる!」

「アルデオがその子に近づいたから、あいつは怒っただけなんだよ」


 未だ魔獣は距離を取ったままだが、こちらを警戒し続けている。

 子供に危害を与えれば、すぐさま向かってくるだろう。


「でもさ、レシはなんでそれがわかったん?」

「切り株にいるって知ってたのか?」


 ルディアとアルデオがさらに問いかける。

 

 切り株で子育てをしているなんて、注意深く辺りを観察でもしていない限りは気づけない。

 それとも、あの村(クィエス)で生活する者なら持っている知識……?


 考えがまとまらずにいると、レシが口を開いた。


「え? だってあいつがそう教えてくれたじゃん」


 少年の視線の先には、こちらを警戒し続ける魔獣の姿があった。

 



 ♦︎


「え!? レシって魔獣の言葉わかんの!?」

「何言ってるの? 『そこは私たちの家、その子から離れて』って言ってたじゃん」

「えぇ!? グオォォォォォォって言ってたよ!?」

「何もそこまで正確に再現しなくても……」


 あたしの渾身の雄叫びに、メデリが呆れたようにため息をついた。


「アルデオは聞こえた?」

「いや、俺もグオォォォォォォだったな」

「メデリは?」

「私も同じです」


 ……もしかして、子供にしか聞こえないとか?


「ファファは!? ファファも聞こえた?」

「ううん、怖かった……」


 少女はメデリの後ろに隠れながら、ギュッと服の裾を握りしめていた。


「じゃあ、レシだけが聞こえたんだ! すごいね!」

「レシからも話しかけられんのか?」

「わかんない。やってみる」


 レシはじっと魔獣と見つめ合う。

 すると、警戒していたはずの魔獣がゆっくりと近づいてきた。


「おい、危ないんじゃ――」

「大丈夫、何もしないって約束したから」

「まじかよ……。お前、魔獣と会話できんだな……」


 のそのそと近づいてきた魔獣は、レシの前で停止する。

 アルデオより少し大きな身体を屈めると、少年を肩へと乗せた。


「グルルルルルル……」

「もう、水を止めたりしないってさ!」

「そう言ってるのか?」

「うん!」


 レシはそう言うけど、正直唸ってるようにしか聞こえない……。

 ファファなんて、メデリの後ろから出てこなくなっちゃったし。


「グウゥゥゥ」

「うーん、それは聞いてみないとわかんないや」

「なんと仰ってるのですか?」

「村で一緒に暮らしたいんだって」

「村で一緒に暮らす!?」


 魔獣が!? あたしたちと!?

 それって……エサだと思われてない!?


「うん。絶対に人を襲ったりしないって――」

「いやだ! 魔族なんて、だいっきらい!!」


 レシの言葉を遮ったのは、彼の妹であるファファだった。




 ♠︎


「後もう少しで着きそうだね」


 それまで木々しかなかった景色が変わり、遠くに石壁が見える。

 道も舗装され始めており、だいぶ歩きやすくなってきた。


「相棒と出会ってなかったら、私は今日も木の上で眠ることになっていたよ……」

「なるほど。それでレウィスのシャツには、羽根が生えているのか」

「違うよ! これは吟遊詩人としてのオシャレなの!!」

「そうか、てっきり鳥に貰ったのかと」

「……相棒ってさ、なんか変だよね」


 キミにだけは、そんな風に言われたくないんだが……。

 

 そう思いつつも、彼のお喋りに救われているのも事実だ。


「街に着いたら、まずは今晩の宿探しからだな」

「それなら良いところ知ってるよ!」

「本当かい!? それなら今日はそこに泊まろうか」

「絶対相棒も気に入ると思う! ご飯も美味しいところ知ってるし、案内するよ!」


 鼻高々に宣言する彼を見ていると、こんな旅も悪くない。

 なんて、そんな風に思うんだ。


 


 魔族と人間、共存は可能なのでしょうか?

 新勇者パーティも、なんだかいい雰囲気ですね。



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