↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者パーティから勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!  作者: おやまみかげ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/12

第九話 魔王を倒せば解決するの?


 ♠︎


「……レウィスのおすすめの宿ってここかい?」

「うん! ここは一階が酒場になってて、それで女の子たちが——」

「却下」

「ひどい!! ここに泊まるって言ったじゃん!!」

「言った。確かに言ったが、ここは却下だ」


 レウィスはがっくりと肩を落とす。


 ——いや、さすがに無理だよ。

 勇者パーティがこんなところを出入りしてる、なんて噂が立ったらとんでもないことだ。


「……まぁそうだよね。そうだとは思ってたよ」

「すまない……。他におすすめがあれば、そこに連れていって欲しいんだけれど」

「わかった。こっちだよ……」


 とぼとぼと歩く彼の後ろを着いていく。

 心なしか、シャツに付いている羽根も小さく見えた。


「なぁレウィス。そんなにあの宿に泊まりたかったのか?」

「そういうわけじゃないというか……。この街はね、物価がすごく高いんだよ。だからああいう宿じゃないと、安く泊まれないんだ……」

「なんだ、お金のことを気にしていたのか?」

「当たり前じゃん! 私、お金ないんだよ!? もう竪琴売れって言うの!?」


 宿に泊まる資金すらないのなら、売った方がいいと思うが……。

 とはいえ、一応仕事道具でもある物を売れと言うのは酷だろう。


「そんなことは言わないよ。それに、一緒に来てくれるのなら旅費はほとんどかからない」

「そうなの? それは相棒が勇者だから?」

「うん。これがあるからね」


 懐から『勇者の証』を取り出す。


「これを見せると、各国で様々な援助を受けられるんだ」

「それ知ってる、掲示板で見たよ! でも、ニセモノって疑われないの? 偽装できそうに見えるけど……」

「もちろん、騙られることもあるだろうね。僕の名前とこの証は、キミも知っての通り世界中に広められているから」

「じゃあ、宿で見せても追い返されるかもよ?」

「大丈夫さ。とりあえず宿まで行けばわかるよ」


 首を傾げるレウィスの肩を、僕は軽く叩いた。




 ♥︎

 

「ファファ、落ち着いてください」

「だって……おにいちゃんが……!!」

「まぁ、受け入れられない……よねぇ」


 興奮状態になっている少女の背を、ルディアが優しく撫でる。

 

 村を襲い、両親を殺した魔族。

 もう襲わない――そんな確証のない約束を、受け入れられるはずもないだろう。

 

「レシ、俺も賛成はできない」

「なんでだよアルデオ!! こいつは俺たちを襲わないって言ってるのに!」

「今はそうかもしれないな。でもどうだ? 腹を減らしたこいつらが、絶対に俺たちを襲わないって言えるのか?」

「それは……」

「言えないだろ? じゃあダメだ」


 未だ魔獣の肩に乗っている少年に向かって、アルデオがきっぱりと言い放った。


 ごく少数だが、魔獣を飼い慣らしている人もいる。

 所謂『魔獣使い』という職業に付いている者たちだ。

 そんなプロである彼らでも、使役している魔獣に襲われ命を落とすことは少なくない。


 魔獣と会話ができることが、逆に利用される可能性もある。

 従順なフリをして、寝静まった頃に襲おうと考えているかもしれない。


「……絶対にこいつらは襲わないよ」

「レシ、そんなことは――」

「だってこいつらも、家族を人間に奪われてるんだ!!」

「だったらもっと危険だろ!? 恨まれてるかもしれないんだぞ!?」

「ならとっくに殺されてるよ!!」


 肩で息をしながら、二人は睨み合う。

 危険を説くアルデオと、魔獣を信じたいレシ。

 完全に意見がぶつかっていた。

 

「……なんでおにいちゃんは、魔族と仲良くできるの?」


 私の服をギュッと掴みながら、ファファがレシを睨みつけた。




 *


「……アルデオが言ってた。力は誰かを護るためのもので、支配するためのものじゃないって」

「理由になってない! おとうさんとおかあさんは魔族に殺されたんだよ!? 村だってなくなっちゃったのに!」

「たしかに父ちゃんと母ちゃんは魔族に殺された。でも、殺したのはこいつらじゃない」

「そんなのわかんないじゃん!!」


 泣き叫ぶファファに、レシは言葉を続ける。


「こいつらじゃない。こいつらは人を食べないから」

「え? そうなの!?」

「ルディア、今は静かにしていてください」

「あ、ごめん……」


 手で口を覆う彼女。

 ファファもこれは意外だったようだ。

 少しだけ、落ち着きを取り戻していた。


「でも……それでも……」

「うん、俺も魔族は許せない。でも、それで俺たちがやり返したら、同じじゃないか?」

「同じ……?」

「このちびすけの父ちゃんは、人間に殺されたんだって」


 レシは足元の幼獣を指さす。

 キュルキュルと鳴き声を上げるそれは、母親の元へと擦り寄った。


「こいつらは、人間に家族を奪われたのに俺たちを攻撃してこなかった。それなのに、俺たちは攻撃していいのかな?」

「……そんなの、わかんない」

「うん、俺もわかんない。でも、やられたからってやり返してたら、ずっと変わらないんじゃないかな?」


 ——なんて、大人な考え方をする子なんだろう。

 いや、みんな一度はきっとそこに辿り着く。

 それでも結局、その難しい問いを捨てて簡単な答えを出してしまう。

 魔王を討伐すれば、世界に平和が訪れるのではないか。と。


「俺はこいつらを村に連れていきたい。力で解決するんじゃなくて、一緒に生きていきたい。人間も魔族も、仲良くなれるかもしれないだろ?」


 少年の真っ直ぐな言葉は、魔王討伐を目標としていた元勇者パーティの三人の胸に、深く深く突き刺さった。




 自分の正義が相手の正義とは限りません。

 互いの正義がぶつかれば、相手は悪になってしまうわけです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。