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勇者パーティから勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!  作者: おやまみかげ


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第十話 勇者だって証拠はあるの?


 ♣︎


「まさか連れて帰ることになるとはなー」

「本当に、大丈夫なのでしょうか……」

「人間食べないらしいし、もしもの時はアルデオが護ってくれるっしょ!」

「ルディア、何かあってからでは遅いのですよ?」

「きっと大丈夫だって! レシを信じようよ!」


 女性陣二人がキャッキャと盛り上がっている。

 レシとファファはというと——


「なぁグルルはどこから来たんだ?」

「おにいちゃん、そんなダサい名前はいや! クリスティーヌがいい!」

「なんでだよ! グルルとキュルでいいだろ?」

「いや! クリスティーヌとフランソワがいい!」


 ……どんな喧嘩してんだよ。


 二人は魔獣の両肩に乗り、ファファが幼獣を抱っこしていた。

 

 あれだけ嫌だのなんだのと騒ぎながら、それでも共に生活することを選ぶのか。

 すげぇやつらだよ、本当に……。


「何ニヤニヤしてんの、アルデオ!」

「してねぇよ!!」

「あまり揶揄うと、有事の際に盾になってもらえませんよ?」

「それは困るな〜」

「お前らさ、俺をなんだと思ってんだよ……」


 どうせ聞くまでもなく、盾役なんだろうけどさ……。


「え? 仲間じゃん?」

「というか、もはや家族に近いかもしれませんねぇ……」

「確かに! これからもずっと一緒に住むわけだしね!」


 いや、ずっと一緒に住む約束をした覚えはねぇけど……。

 そうか、仲間で家族か。そうか……。


「あ! またニヤニヤしてる!!」

「いいではないですか、たまにはニヤニヤしても」

「だからニヤニヤしてねぇよ!!」


 こんな俺たちを見て、誰が元勇者パーティだとわかるだろうか。

 倒すべき敵である魔獣を連れ、子供たちを連れる俺たちを。


 ——フォル。こっちは早くも一つ問題が解決しそうだぜ。

 そっちはどうだ? なんて、離れておいて虫が良すぎるか……。


 暮れ始めた空を、アルデオは見上げていた。




 ♠︎


「いらっしゃい、冒険者かな?」

「はい。二晩泊まりたいのですが、部屋は空いていますか?」

「空いてるよ、二人だね! ……って、そこにいるのはレウィスかい?」


 僕の後ろに小さくなって隠れていたレウィス。

 呆気なく宿の女将に見つかった。


「……ひ、久しぶり」

「あんた、勇者パーティに選ばれたんじゃないの? なんでこの子と一緒にいるんだい?」

「それは、相棒こそ勇者だからだよ!」

「この子が勇者様……?」


 ジロジロと、頭の先から足の先まで訝しげに見られる。

 

 これにももう慣れてしまった。

 大柄なアルデオや、細身だが長身のレウィスと比べて、僕は残念なほどに上背がない。

 これで勇者? という、世間からの目は致し方ないことだ。


「し、失礼だよ! 彼は勇者なんだよ!?」

「本当かい? 勇者様なら証を見せてみな!」


 言われるがまま、懐から勇者の証を取り出す。

 手のひらより少し小さなその宝玉には、王の紋章が刻まれている。

 勇者パーティを結成した際に渡された、この世に二つとない品だ。


「へぇ……それが噂の勇者の証か! ちょっと触らせておくれよ!」

「えぇ!? 勝手に触っちゃダメだよ!!」


 そんな言葉はもう彼女には届かない。

 光り輝く証に触れようと、手を伸ばした。


 ——バチッ!!

 

 嬉々として伸ばされた手を拒絶するかのように、宝玉が電気を放つ。

 それを見ていたレウィスが、興奮気味で口を開いた。


「すごい! 相棒にしか触れないんだ! これならニセモノかどうかも——」

「こ、こんなのが本物なわけないだろ!? あんた、ニセモノの勇者だね!!」

「えぇ!? どうしてそうなるんだよ! 『勇者フォルが、王より賜った証を携え世界を平和に導く』って話、知ってるよね!?」

「そんなのは知ってるさ! でも、その石ころが本物だって証拠はないだろ!?」

「そんなの無茶苦茶だよぉ……」


 一生懸命説いてくれていた彼には申し訳ないが、これも日常茶飯事だ。

 勇者なら証を出せ! 触らせろ!

 こんな危険な物を持っている奴が勇者なわけない、ニセモノだ!

 ここまでテンプレだとしか思えないほど、みんな同じ反応をする。


 ……そろそろきちんと説明するか。


 フォルは一歩、前に出た。


 

 

 *


「驚かせてしまって申し訳ありません。悪用されることがあってはいけないので、普段は僕以外は触れられないのです」

「普段は? てことはなんだい? あたしも触れるってのかい?」

「はい。解除しますので少しお待ちください」


 証に僕の魔力を注げば、少しの間他の人も触れられるようになる。

 そして刻まれている紋章は、王から国民たちへの言葉へと姿を変えるのだ。


「どうぞ、これでもう触れられるはずです」

「そ、そうかい……?」


 恐る恐る、女将が手を伸ばす。

 フォルは彼女の手に宝玉を置くと、覗くように促した。


「これは……」

「なに? なに!? 何が見えるの!? ねぇ!?」

「レウィスも覗いて見るといいさ」


 女将から受け取った証を、レウィスはまじまじと覗く。

 そこには、世界各国を統べる王たちの名前が直筆で刻まれていた。

 ご丁寧に、皆の王印まで添えられて——。


「これは、偽装のしようがないね……」

「だから言っただろう? 大丈夫だって」

「その……悪かったよ。ニセモノだなんて言っちまって……」

「気にしないでください。二晩、お願いできますか?」

「もちろんさ! 一番いい部屋をサービスするよ!」


 


 国中を渡るわけですから、

 世界で通用する証を持ってるはずなんです。

 なんて、おやまは思うわけです。



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