第十話 勇者だって証拠はあるの?
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「まさか連れて帰ることになるとはなー」
「本当に、大丈夫なのでしょうか……」
「人間食べないらしいし、もしもの時はアルデオが護ってくれるっしょ!」
「ルディア、何かあってからでは遅いのですよ?」
「きっと大丈夫だって! レシを信じようよ!」
女性陣二人がキャッキャと盛り上がっている。
レシとファファはというと——
「なぁグルルはどこから来たんだ?」
「おにいちゃん、そんなダサい名前はいや! クリスティーヌがいい!」
「なんでだよ! グルルとキュルでいいだろ?」
「いや! クリスティーヌとフランソワがいい!」
……どんな喧嘩してんだよ。
二人は魔獣の両肩に乗り、ファファが幼獣を抱っこしていた。
あれだけ嫌だのなんだのと騒ぎながら、それでも共に生活することを選ぶのか。
すげぇやつらだよ、本当に……。
「何ニヤニヤしてんの、アルデオ!」
「してねぇよ!!」
「あまり揶揄うと、有事の際に盾になってもらえませんよ?」
「それは困るな〜」
「お前らさ、俺をなんだと思ってんだよ……」
どうせ聞くまでもなく、盾役なんだろうけどさ……。
「え? 仲間じゃん?」
「というか、もはや家族に近いかもしれませんねぇ……」
「確かに! これからもずっと一緒に住むわけだしね!」
いや、ずっと一緒に住む約束をした覚えはねぇけど……。
そうか、仲間で家族か。そうか……。
「あ! またニヤニヤしてる!!」
「いいではないですか、たまにはニヤニヤしても」
「だからニヤニヤしてねぇよ!!」
こんな俺たちを見て、誰が元勇者パーティだとわかるだろうか。
倒すべき敵である魔獣を連れ、子供たちを連れる俺たちを。
——フォル。こっちは早くも一つ問題が解決しそうだぜ。
そっちはどうだ? なんて、離れておいて虫が良すぎるか……。
暮れ始めた空を、アルデオは見上げていた。
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「いらっしゃい、冒険者かな?」
「はい。二晩泊まりたいのですが、部屋は空いていますか?」
「空いてるよ、二人だね! ……って、そこにいるのはレウィスかい?」
僕の後ろに小さくなって隠れていたレウィス。
呆気なく宿の女将に見つかった。
「……ひ、久しぶり」
「あんた、勇者パーティに選ばれたんじゃないの? なんでこの子と一緒にいるんだい?」
「それは、相棒こそ勇者だからだよ!」
「この子が勇者様……?」
ジロジロと、頭の先から足の先まで訝しげに見られる。
これにももう慣れてしまった。
大柄なアルデオや、細身だが長身のレウィスと比べて、僕は残念なほどに上背がない。
これで勇者? という、世間からの目は致し方ないことだ。
「し、失礼だよ! 彼は勇者なんだよ!?」
「本当かい? 勇者様なら証を見せてみな!」
言われるがまま、懐から勇者の証を取り出す。
手のひらより少し小さなその宝玉には、王の紋章が刻まれている。
勇者パーティを結成した際に渡された、この世に二つとない品だ。
「へぇ……それが噂の勇者の証か! ちょっと触らせておくれよ!」
「えぇ!? 勝手に触っちゃダメだよ!!」
そんな言葉はもう彼女には届かない。
光り輝く証に触れようと、手を伸ばした。
——バチッ!!
嬉々として伸ばされた手を拒絶するかのように、宝玉が電気を放つ。
それを見ていたレウィスが、興奮気味で口を開いた。
「すごい! 相棒にしか触れないんだ! これならニセモノかどうかも——」
「こ、こんなのが本物なわけないだろ!? あんた、ニセモノの勇者だね!!」
「えぇ!? どうしてそうなるんだよ! 『勇者フォルが、王より賜った証を携え世界を平和に導く』って話、知ってるよね!?」
「そんなのは知ってるさ! でも、その石ころが本物だって証拠はないだろ!?」
「そんなの無茶苦茶だよぉ……」
一生懸命説いてくれていた彼には申し訳ないが、これも日常茶飯事だ。
勇者なら証を出せ! 触らせろ!
こんな危険な物を持っている奴が勇者なわけない、ニセモノだ!
ここまでテンプレだとしか思えないほど、みんな同じ反応をする。
……そろそろきちんと説明するか。
フォルは一歩、前に出た。
*
「驚かせてしまって申し訳ありません。悪用されることがあってはいけないので、普段は僕以外は触れられないのです」
「普段は? てことはなんだい? あたしも触れるってのかい?」
「はい。解除しますので少しお待ちください」
証に僕の魔力を注げば、少しの間他の人も触れられるようになる。
そして刻まれている紋章は、王から国民たちへの言葉へと姿を変えるのだ。
「どうぞ、これでもう触れられるはずです」
「そ、そうかい……?」
恐る恐る、女将が手を伸ばす。
フォルは彼女の手に宝玉を置くと、覗くように促した。
「これは……」
「なに? なに!? 何が見えるの!? ねぇ!?」
「レウィスも覗いて見るといいさ」
女将から受け取った証を、レウィスはまじまじと覗く。
そこには、世界各国を統べる王たちの名前が直筆で刻まれていた。
ご丁寧に、皆の王印まで添えられて——。
「これは、偽装のしようがないね……」
「だから言っただろう? 大丈夫だって」
「その……悪かったよ。ニセモノだなんて言っちまって……」
「気にしないでください。二晩、お願いできますか?」
「もちろんさ! 一番いい部屋をサービスするよ!」
国中を渡るわけですから、
世界で通用する証を持ってるはずなんです。
なんて、おやまは思うわけです。




