第十一話 敵とは、なんだろう?
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「よ〜し、今日も一日頑張るぞ〜!」
村で生活し始めて、1週間。
水は問題なく汲めるようになって、レシとファファもやっと毎日水浴びができるようになった。
昨日なんて——
「ほら、レシもあたしが綺麗にしてあげるからおいで!」
「は、はぁ!? 俺は一人で大丈夫だよ!!」
「なんでそんな冷たいこと言うの〜? ほら、おいで!」
「ルディア、察してやれよ……」
「子供とはいえ、レシも男の子ですからね……」
アルデオとメデリが呆れたような顔であたしを見てた。
結局、レシはアルデオに手伝ってもらってたっけ。
「よし! 朝ごはんだ!」
「ルディアおねえちゃん、おはよう!」
「おはよう、ファファ。今日も早起きえらいぞ〜!」
「えへへ! わたしもお手伝いする!」
「ありがとう! じゃあこの葉っぱちぎってくれる?」
水が使えるようになって、料理は少しだけバリエーションが増えた。
それでも未だ焚き火での調理だし、森に生えてるキノコや葉っぱくらいしか食べる物がない。
魔獣も都合よく出てくるわけじゃないし。
唯一食べられそうな物といえば……
チラリと、一緒に生活するようになった魔獣たちに視線を送る。
何やら嫌な予感がしたのだろうか、ビクリと肩を振るわせた。
「大丈夫、食べないよ〜」
「クリスとキュルはもう仲間だもんねー!」
結局名前は、母獣がクリスティーヌ、幼獣がキュルになった。
レシが「女の子なのにグルルはありえないって言われた……。キュルはキュルがいいんだって」と魔獣たちの意見を確認し、ファファもそれならと丸く収まったのだ。
「そうだね、だから二匹にも手伝ってもらわないとね〜」
「働かざるもの食うべからず、でしょ?」
「難しい言葉知ってんね〜」
「メデリ先生が教えてくれた!」
「そっか、たくさん学んでえらいぞ〜!」
ファファの頭を撫でると、柔らかい髪が指の間をすり抜ける。
砂埃で絡まった髪も、周りを飛ぶ小さなハエも今はいない。
——本当にここに残ってよかった。
そんなことを考えていると、朝食の時間が迫っていた。
「やばっ!! 授業に間に合わなくなっちゃう!!」
「葉っぱ、お鍋に入れておくね! わたし、おにいちゃんとアルデオ起こしてくる!」
「ありがとうファファ! そっちはお願いね!」
手を振る小さな背中を見届けると、ルディアは急いで朝食の仕上げへと入った。
*
「メデリ先生! ここわかんない!」
「メデリ先生! わたしはこれ終わった!」
「レシから見ますので、ファファは少しお待ちくださいね」
太陽が散々と降り注ぐ中、兄妹はメデリの授業を受けていた。
魔法や魔族についてだけではなく、読み書きや計算なんかも含まれている。
これは将来二人がなりたいものになれるようにと、アルデオのアイデアだった。
「クリスー! そこの木材取ってくれー!」
「グルルルルル……」
「わかったって! クリスティーヌ、取ってくれ!」
「グルル!」
眠気も少ない午前中、レシとファファは勉強をする。
その間に、アルデオは母獣のクリスと家屋の修復を行う。
残念なことに、あたしも勉強なんて教えられない。
だから洗濯や料理なんかの家事全般があたしの仕事だ。
「キュル、その洗濯物取って!」
「キュルル!」
「あんがと〜! あとで木の実あげるからね!」
「キュルルン!」
ここでは魔獣も人間も関係ない。
みんなができることをして生活している。
「よし、洗濯終わり! キュル、キノコ採りに行くよ〜」
「ルディア、また森に行くのか?」
「うん、ほら食材採りに行かないとさ。育ち盛りじゃん? あの子ら」
「でもよ、危ないし。それにずっと森に採りに行くわけにもいかないだろ?」
「それもそうなんだけどさ〜」
アルデオの言うこともわかるけど、この辺りに他に食べられるものはない。
また水辺まで行けば魚はいるかもしれないけど、あたし一人ではそこまでは無理だ。
だからといって、アルデオを村から連れ出すのもリスクがある。
「なんかいい方法ないかなぁ……」
「そろそろ、畑でもやってみますか?」
「畑か〜。でも種がないじゃん?」
「確かにそうですね……」
兄妹が計算問題を解いている間、メデリも話に入ってきた。
畑はやりたいところだけど、ここには行商人も来ないだろうな。
ひと月前には一度廃村になってる場所に、わざわざ売りになんて来るわけない。
「キュルルル!」
「ん? どしたんキュル」
「キュルルン! キュルルル」
「ごめん、あたしキュル語わかんないんだよね」
「グルルルルル」
「クリスの言葉もわからんのよ」
二匹が何かを伝えようとしてくれてるのはわかる。
でもわかるのはそこまで。何を言いたいのかはわからん。
「キュルがさ、種のある場所知ってるって言ってる」
「あ! そっか、レシは話せるんだ!」
「クリスがキュルと採りに行ってくるってさ」
「えぇ!? 二匹だけで行くの!? 大丈夫なん!?」
魔獣とはいえ、大丈夫なのかな?
いや、魔獣だからこそ大丈夫なのかな……。
でも、二匹も仲間だし……。
「とりあえず、頼んでみようぜ!」
「森のことは、誰よりも詳しいと思いますよ」
アルデオとメデリは頼む気満々のようだ。
それに、クリスとキュルももう行く気満々だ。
「よし! じゃあ、任せちゃおっかな! 今日の夕飯は、二匹の好きなキノコと木の実のサラダにするよ〜!」
「グルルルルル!!」
「キュルルルル!!」
「だから、気をつけて行ってきてね! いってらっしゃい!」
幼獣を肩に乗せ、親子の魔獣は森へと入っていった。
クリスとキュルは、熊のような見た目をしています。
木の実やキノコ、木の根っこなんかを食べる草食魔獣です。




