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勇者パーティから勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!  作者: おやまみかげ(・8・)


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第十二話 使命って、やりたいこと?


 ♠︎


「あーあ、あのふかふかなベッドが恋しいなぁ……」

「そうだな、ご飯も美味しかったし」

「でしょう!? あのお店は本当に料理が美味しいんだよ!」


 結局あの街では、魔王に関する情報は何一つ得られなかった。

 得られたものといえば——


「レウィスは女にだらしないんだよなぁ」

「彼女にも逃げられたしな」

「でも意外だったよ。本当に勇者パーティに選ばれてたなんて」

「な、嘘だと思ってたわ」


 という、なんとも情けない情報だけである。


「相棒も気に入ってくれてよかったー!」

「豆のスープが絶品だったな」

「だよね! 丁寧に漉しているからなめらかなんだよー! また絶対行こうね!」

「うん、また絶対に行こう」


 そんな約束をしてから気づいた。

 前のメンバーと、絶対なんて約束をしたことがなかったことに――。


 僕が無意識のうちに、みんなに覚悟を決めさせてしまっていた?

 魔王を討伐できるなら、僕は自分の命なんて惜しくはない。

 でも、みんなには夢があるようだった。

 この旅で、散ってもいいと思っていたのは僕だけだった……?


「どうしたの、相棒」

「いや、なんでも——」


 そう、言いかけて口を噤む。

 

 また同じことを繰り返すのか? と、頭の中で声が響いた。



 *

 

「……僕が、みんなに背負わせていたんだろうかと思ってね」

「急にそんなこと言うなんて、何かあった?」

「約束なんて、したことがなかったんだ」

「それはどうして?」


 どうして……。どうしてだろうか。


「……できないことはすべきじゃないと思っていたのかもしれない」

「できない、って言うと?」

「僕は勇者だ。その使命を全うするためなら、命なんて惜しくない。だから、次があるかなんて考えたことがなかった」


 こんなことを言ったのはレウィスが初めてだ。

 前の三人とも、そこそこいい関係は気づけていたはずなのに。

 でもこんなこと、絶対に言えなかった。


「ねぇ、相棒……。『命なんて惜しくない』なんて、もう二度と言わないで」

「でも僕は勇者だから。みんなを護る使命が——」

「勇者だから、使命だから……。だからって、相棒が死んでいいわけじゃないんだよ!? もっと命を大事にしてよ!」

「大事にって、それだと僕は何のために……」


 ——魔王を討伐し、世界の平和を護る。

 

 それ以外に、僕には何の目標もない。

 命を大事にと言われても、僕はどうしたらいい?

 

 たとえ共倒れになったとしても、魔王を倒せたら僕の使命は果たされる。

 むしろ命を優先していたら、好機を逃すのではないか?


 ——それって、フォル自身がやりたいことなの?


 なんでこんな時に、ルディアの言葉を思い出すのだろう。

 そんな風に考えたことがないから、わからないんだ……。


 ——それは、自らの夢を諦める理由になりますか?


 メデリ、キミは本当は何をしたかったんだ?

 三ヶ月も一緒に旅をしてきたのに、僕はそれを知ろうともしなかった。

 

 ——魔王討伐に行きたいのが、お前だけだってことに。


 アルデオ、僕はみんなも同じ気持ちでいると思ってた。

 いや、きっとそう信じたかったんだ。

 

 でも、三人にもあったんだろうな。

 僕が魔王討伐を使命に感じているように、それぞれ成し遂げたいと思うことが……。


「相棒、急に怒鳴ったりしてごめんね……」

「いや、いいんだよ。でも……」

「でも?」

「わからないんだ、魔王討伐以外に何をすればいいのか……。旅を続け、情報を集めて魔王城へ向かう。それ以外に、僕は何をすればいい?」


 こんなこと、きっと他人に教えてもらうことじゃない。

 みんな自分自身で見つけていることなんだ。

 でも、僕はわからない……。

 この命は、勇者は、魔王を討伐するためにあるものだから——。


「それならさ、私と一緒に探そうよ」

「探す……」

「うん! また美味しいご飯食べて、ふかふかのベッドで眠る。そしたらやりたいこと、見つかるかもよ?」

「そう、だろうか……」

「きっとそうだよ! だって、また絶対に豆のスープを飲みに行くって約束したでしょう?」


 ……そうだ。

 僕はさっき初めて、またこれがしたい。

 そう思ったんだ。


「これが……やりたいこと……」

「みんなからしたらすごく小さなやりたいことだけどね! 最初はそれでいいんじゃないかな?」

「これが……やりたいことか」

「実感湧いてきた? また美味しいスープを飲むために、魔王倒して世界を平和に導かないとね!」


 レウィスがグッと親指を立て、ウインクをする。


 ——フォルってさ、夢ある?


 あの時は、その言葉の意味がわからなかった。

 世界の平和とみんなを護ること以外、やることなんてないと思っていた。


「……そうか。また、美味しい豆のスープを飲むために戦うのか」

「勇者様なのに、相棒のやりたいことは慎ましいね!」

「し、仕方ないだろう? わからないんだからさ……」

「これから見つけていけばいいんだよ! そうでしょう?」

「そうだな、レウィスありがとう」

「相棒のためなら喜んで! だよ!」


 きっと彼は、正式な勇者パーティとして選ばれることはなかったと思う。

 それでも、今の僕に必要なのは間違いなくレウィスだったと、そう思うんだ。


 


 勇者が少しだけ未来を考えられるようになった豆のスープ。

 そんなに美味しかったのでしょうか。豆のスープ……。



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