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勇者パーティから勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!  作者: おやまみかげ(・8・)


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第十三話 努力は必ず報われる?


 ♥︎


「レシ! ほらもっと頑張れ!」

「わ、わかってるよ……!」

「お! まだ喋る元気あるなら10回追加な!」

「アルデオ、あまりレシをいじめないでください」

「いじめてねーよ! 修行だ修行!」


 ……全く、弟子ができたからって張り切り過ぎなのですよ。


 昼ごはんを食べ終わり、一休みした午後。

 アルデオはレシの、私はファファの指導に入る。

 

「うーん、うまくできないなぁ……」

「ファファ、もう少し魔力を薄くしてみてください」

「薄く……」


 真剣な顔で、少女は水の入った桶を見つめている。

 

 今ファファに教えているのは、魔力を使って水を包む基本魔法だ。

 これができると、水がない地域でも格段に旅がしやすくなる。

 応用すれば火を包むことで攻撃もできるし、土や砂を包むことで目眩しができるようにもなる。

 基本でありながら重宝する、万能魔法の一つだ。


「メデリ先生、できない……」

「まだ始めてから五日ですよ? そんな簡単にできるものではありません」

「でも、基本の魔法なんでしょう?」

「はい。でも、基本だから簡単というわけではないのです」

「そうなの?」


 くりくりとした目を見開きながら、私を見上げるファファ。

 希望に満ち溢れながらも、不安そうな顔をしている。


「はい。基本が何よりも大切なのです。アルデオたちを見てください」

「ずっと腹筋してる……」

「そうでしょう? アルデオは戦士ですから、普段は剣や斧を使います。でも、それらを上手く扱うには、扱える身体を作る必要があるのです」

「魔法も同じ?」

「同じです。強い魔法を使うためには、強い魔法を使えるだけの魔力コントロールができなければいけません」


 ……だからこそ、私は魔法使いにはなれなかった。

 でもだからといって、僧侶という職業が嫌いなわけでもない。

 憧れていた職業ではないのだけれど。


「どうしたら、魔力コントロールは上手になるの?」

「たくさんの努力……と言いたいところですが、それだけではないのが現実です」

「努力してもダメなの?」


 首を傾げるファファの頭に手を置くと、私は一つ深呼吸をしてから伝えた。


「魔法使いに憧れた、とある女の子の話をしましょうか」




 *


「先生、私いつか先生みたいな立派な魔法使いになるの!」

「それは嬉しいねぇ。でもね、メデリ。あたしはあんたが元気に育ってくれたらそれでいいのよ」

「いや! 先生が私を助けてくれたみたいに、今度は私が先生を助けるの!」

「全く……。それじゃあ楽しみにしてるからね」

「うん! だからずっと一緒にいてね!」

「はいはい、あんたは本当に甘えん坊だねぇ」


 孤児院を経営していた、大好きなテラ先生。

 親を知らない私にとって、彼女は親であり師匠でもあった。


「メデリ、もっと魔力を薄くするんだよ」

「こ、こう……?」

「もっとだよ。これはね、基本中の基本魔法なんだ。だけど上手く扱えない人の方が多い。だから今のうちにしっかり学ぶんだよ」

「基本なのに、できない人が多いの?」

「基本だから、極めない人が多いんだ。使えるのと、扱えるのは違うんだよ」


 先生はよく、そう言っていた。

 でもその頃の私は、その意味がよくわかっていなかったのだけれど。


 大好きな先生が魔女だと疑われ、連れていかれそうになったのはそのすぐ後だ。


 私は先生を助けたい一心で、覚えたての魔法を使った。

 魔力を薄くして、包み込んで助けるつもりだった。

 大好きなテラ先生に教えてもらった、基本の魔法で。


 ——だけど、私にはそんな力はなかった。


「子供に魔法を教えるなんて、やっぱり魔女だ!」

「上手くコントロールもできない子供に教えて、兵器にするつもりなんだ!」

「あの院は兵器を生み出している! 燃やせ燃やせ!!」


 そうして何人の子が、家族が犠牲になったのだろう。

 先生は私だけを魔法で包むと、自ら燃え盛る建物へと姿を消した。


 ……その後私は、他の孤児院へと引き取られた。

 けれど、もう知っている子は誰もいない。家族はいない。

 先生がいなくなってから、苦手だった魔力コントロールがさらにできなくなった。


 ——先生、私いつか立派な魔法使いになるの!

 

「なれない……私にはできない……。できないよ、先生……!!」


 ——あたしはあんたが元気に育ってくれたらそれでいいのよ。


「私が元気に……。そうだ、魔力がコントロールできなくても、これなら……。これなら私にも極められるかもしれない……」




 *


「それで? その女の子はどうしたの?」


 ファファが私を見上げる。


「その子は、たくさん努力しました。誰よりも基本魔法を極め、水以外も包めるようになりました。でも、魔法使いにはなれませんでした」

「どうして……? 頑張ったんでしょう?」

「その子としては、とても頑張ったと思います。でも、その子が百回努力してできることが、一回でできてしまう人もいるのです」

「そんなの……ひどいよ……」


 今にも泣き出しそうな顔で、少女は俯く。

 そんな優しい子の頭を撫でながら、私は言葉を続けた。


「でも、おかげでその子は別の道——僧侶という道を歩き始めました」

「僧侶?」

「はい。誰かを元気にすることが、その子の新たな目標になったのです」

「……その子は、魔法使いになりたかったんでしょう? 僧侶でもよかったの?」

「そうですね、確かに魔法使いになりたかった。でも僧侶になったから、見える景色もあるのですよ」


 ——ねぇ、メデリ。

 あなたは僧侶になったことを後悔していますか?

 もし魔法使いになっていたら、今の私はいませんでしたよ。


 不思議そうに首を傾げるファファの頭を、私は再び優しく撫でた。



 


 夢が叶えられないのは努力不足が原因だ。

 そう言う人もいるでしょう。

 でもおやまは、努力だけでは埋められないと思っています。



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