第七話 水を求めてレッツゴー!
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共に行こうとするメデリとルディアを、アルデオは手で制した。
「いや、二人はレシとファファと待っててくれ」
「そういうわけには行きませんよ、私は僧侶ですから」
「ならルディアは――」
「ダメ! あたしがいないとアルデオ足遅いじゃん!! メデリが倒れたらどうすんの?」
——痛いところをついてくるな。
戦士である俺は、二人に比べて素早くは動けない。
これまでの戦闘では、フォルが先制攻撃を仕掛け、俺は後衛二人を守ることに専念していた。
でも今、その戦い方はできない。
俺が攻撃と守備、どちらも担う必要がある。
でも、二人も一緒に行くとなると……。
「ここが襲撃されないとも言えませんよね……」
「肉焼いちゃったし、魔族が来てもおかしくないんだよねぇ……」
問題は、レシとファファを護る者がいないということだ。
とはいえ二人が残ってくれたとしても、どちらも攻撃職ではない。
「それなら、俺たちも一緒に行くよ!」
レシの言葉に、ファファもコクコクと頷く。
「お前ら、外は危ないんだぞ!?」
「だって、アルデオたち水の場所知らないだろ?」
「わたしとおにいちゃんは知ってるもんね!」
真っ直ぐに見つめてくる兄妹。
残してくぐらいなら、連れていった方が安全か……?
「メデリ、どう思う?」
俺はこういう頭を悩ませるようなことは向いてない。
賢い彼女が同じ考えなら、俺は自分の考えに自信が持てる。
メデリは顎に指を当てながら少し考えると、首を縦に振った。
「置いていくよりは安全でしょう。私たちが盾になればいいですし」
「そうだね! みんなで行こ〜う!」
「いや、二人がそれでケガする必要はないからな!?」
盾役は俺だけで十分だ。二人が傷つく必要はない。
それに、レシとファファにそんな姿を見せるわけにはいかないだろ?
「大丈夫だって! あたしが守備力も瞬発力も最大にするから、アルデオが護ってね!」
「最悪、倒れても蘇生できますから。安心して盾になってください」
「……お前らさ」
そんな俺たちのやり取りを、兄妹は楽しそうに聞いていた。
*
「いいか二人とも、絶対俺より前に出るなよ?」
「メデリおねえちゃんと手繋いでるからだいじょうぶ!」
「ファファは偉いなー! レシもルディアに手繋いでもらったらいいんじゃないか?」
「バ、バカにすんな! 俺は男だから護るほうだよ!!」
顔を赤くしながら、俺の半歩後ろを歩くレシ。
言いつけを守って前には出ないが、それでも女性陣よりは前を歩いている。
……本当にファファを護りたいんだな。
妹がまだ幼いとはいえ、レシもまだまだ子供だ。
それでもその行動からは、揺るぎない意思を感じた。
「ねぇレシ、水場までってまだかかるの〜?」
「あともう少しで着くよ」
「よかった! あたし喉乾いちゃってさ〜」
「そういえば、レシたちは水が止まってからどうしていたのですか?」
村の大人たちは全滅し、たまに来る孤児院の人間から二人は逃げていた。
そんな生活をしていては、水なんて手に入らないだろう。
だが、ひと月も水無しで生きられるはずがない。
「まさか……お前ら兄妹だけで水場に行ってたのか!?」
「そんな危ないことしないよ。貯めてあった水を少しずつ飲んでたんだ。あの村は水がよく来なくなるから、みんな貯めておくんだよ」
「えぇ!? そんな古い水飲んでお腹壊さないの!?」
レシの言葉に、ルディアが大声を上げる。
そんな彼女の姿を不思議そうに見つめながら、少年は当たり前のように答えた。
「だから、濾してから飲むんだよ」
「小さいときに、飲み方をおかあさんから教えてもらうんだよ!」
「なるほど、生き抜くための知恵というわけですか……」
「あ! ほら、あそこだよ」
レシが前方を指さす。
喋るのに夢中になってて気づかなかったが、言われてみれば水が流れる音がするな。
目指していた水場は、すぐそこまで迫っていた。
*
「すごい場所だなー」
「これは……」
「めっちゃきれ〜!!」
目の前に広がる大きな滝。
圧倒的な自然の美を前に、メデリとルディアが感嘆の声を上げた。
これなら魔獣じゃなくても、この場所が気に入るのは当たり前のことだろう。
「な! すごいだろ!」
「みんなでピクニックに来たんだよー!」
久々に訪れることのできた思い出の場所に、兄妹も嬉しそうにしている。
「でもさ、魔獣なんていなくない?」
「そうですね、見える範囲にはいないようですが……」
二人が言うように、問題であるはずの魔獣がどこにも見当たらないのだ。
「それなら、なんで水来ないんだろうなー」
「あ! もしかしてあれじゃない!?」
ルディアが指をさした場所には、巨大な木が倒れていた。
近づいてみると、細い水路を木がすっかり塞いでしまっている。
「これが原因かー」
これ避ければ問題解決だな!
アルデオが倒木に手をかけた瞬間——。
「グオォォォォォォ!!」
「やばい!! 魔獣戻ってきた!!」
「ルディア、早くアルデオの援護を!」
「了解!!」
メデリが兄妹を背に隠し、ルディアが舞い始めた。
彼女の強化で、俺の身体は重力を忘れたかのように軽くなる。
「これでも喰らえ!!」
持ち上げた倒木を、魔獣目掛けて投げようとした時——。
「レシ! 待ってください!!」
メデリの悲鳴に近い声が響き渡る。
そして——
「ダメだよ!! やめてよアルデオ!!」
レシが両手を広げ、俺の前に立ちはだかった。
この村で生きてきた大人たちの知恵は、幼い兄妹の命を救いました。
ファンタジーなんだから、魔法があればなんでも解決……?
本当にそうでしょうか?
みんながみんな魔法を使えるとは限りませんし、
もし使えるなら、村が被害を受ける前に対処できたかもしれない。
世界はそんなに優しくはないのです。




