第四話 男同士の約束と二人の魔法使い。
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「レシ、重くないか?」
「平気だよ! 俺だって男だからな!」
「そうだな! 頼もしいぜ!」
レシにパンを運んでもらい、アルデオは缶詰を運んでいた。
この食材は昨晩レシたちに渡した物だったが「みんなで食べた方がいいだろ?」と、兄妹が返してくれたのだ。
食材も多くあるわけじゃないし、調達方法も考えないとだな。
料理はルディアがしてくれるとはいえ、物がなきゃ作れないしなぁ。
そんなことを考えていると、隣を歩くレシが口を開いた。
「ねぇ、アルデオ」
「どうした?」
「あのさ、村に残ってくれてありがとう」
今にも溢れそう涙を堪えながら、少年が自分を見上げている。
アルデオは立ち止まると、レシの目線まで屈み、頭を力強く撫でた。
「ごめんな、村護ってやれなくて」
「アルデオは悪くないだろ? 今、こうやって助けてくれるし……」
「お前、ファファを護りたいんだよな?」
「うん。俺、にいちゃんだからファファを護るんだ」
——まだ小さいのに、本当に強いやつだな。
アルデオは再びレシの頭をガシガシと撫でる。
「な、なんだよ! 子供扱いすんな!」
「子供だろー? 昨日ルディアに撫でられて、鼻水垂らしてたくせによー」
「うるさいな!!」
顔を真っ赤にしながら、ポコポコと殴ってくる少年。
鍛え抜かれた身体を持つアルデオには、そんな攻撃は痛くも痒くもない。
ただこうやって、臆せず向かってくる威勢の良さは伸ばしてあげたい。そう思った。
「レシ、強くなりたいか?」
小さな拳を手で受け止めると、アルデオはレシに問う。
闘志に燃える綺麗な目を見れば、答えなんてわかりきっている。
しかしそれでも、きちんとその意志を言葉にしてほしかった。
「俺、強くなりたい。ファファと生きていくために、強くなりたい」
「よし! じゃあ俺が鍛えてやる!」
「えっ……? いいの……?」
「その代わり、力は誰かを護るために使うこと。その力で誰かを支配したりしないこと。この二つ約束できるか?」
「うん。絶対約束する」
アルデオの目を真っ直ぐに見つめながら、レシは大きく頷いた。
「じゃあ、飯食ったら修行だー! 強くなるには飯が大事だぞ、いっぱい食えよ!」
「うん! ありがとうアルデオ!」
男の約束を結んだ二人は、三人が待つ焚き火へと歩き出した。
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「す、すみません!! やはり属性魔法は制御が難しく——」
「あはははは!! びっちゃびちゃだねぇ!!」
「つめたーい!!」
失敗した私を責めることもなく、二人はお腹を抱えて笑っている。
なかなかの大きさの塊だったため、焚き火は消え、焼いていた肉も無残に転がっていた。
「せっかくルディアが焼いてくださったお肉が……」
「いいのいいの! また焼けばいいんだからさ!」
「それに、ファファまでこんな水浸しにしてしまって……」
幼い少女の髪からは、水が滴り落ちている。
服も何もかもびしょ濡れで、手を洗うどころの話ではない。
「ううん、だいじょうぶだよ! 水浴びみたいで気持ちよかった!」
「そっかー、ずっと水なかったんだもんね」
「うん、だからありがとうメデリのおねえちゃん! おねえちゃんはすごい魔法使いなんだね!」
ギュッと足元に抱きついてくるファファ。
思わず少女の頭に手を伸ばすと、孤児院時代の自分の姿と重なった。
*
——先生、私いつか立派な魔法使いになるの!
そんな夢を語る、幼い頃の私。
結局、私は魔法使いにはなれなかった。
属性魔法を扱えるほど、高度な魔力コントロールができないから。
一方の治癒魔法は、大地に流れる生命エネルギーを借りればよい。
だから同じ後衛でも、私は僧侶にしかなれなかった。
「どうしたの? おねえちゃん……」
不安そうな顔で、自分を見上げるファファ。
撫でていた手を下ろすと、メデリはファファの目線までしゃがみ込んだ。
「ファファ、私は魔法使いではないのです」
「そうなの? でもおっきな水出してたよ?」
「あれは……」
「あれは魔法じゃないの? 違うの?」
「えっと……」
確かにあれは魔法ではある。でも、私は魔法使いではない。
誤解をさせたままでは、この子に嘘をついていることになってしまう……。
「いいじゃんそんな細かいことはさ!」
「ルディア、でも私は——」
「あたしらの中で魔法使えるのはメデリとフォルぐらいじゃん! つまり、メデリは魔法使いってこと!」
「そんな無茶苦茶な……」
ルディアは落ちている肉を拾うと、新しく起こした焚き火へと投げ込む。
新しい肉を枝に刺すと、先ほどと同じように炙り始めた。
「いいんだよ、細かいことは気にしなくて。メデリがいたからここまで来れたんだよ? 何回壊滅しかけたことか……」
「まぁ、私は僧侶ですので……」
パーティを立て直すのは私の役目。
とても褒められるようなことではない。
パーティを強化できるルディアの方が何十倍も貴重だ。
「あたしなんて、誰かがいないと役に立たないよ? メデリはそんなことないじゃん?」
「私は一人では何もできません。ルディアのようにパーティを鼓舞し、勝利に導く方が立派です」
「それを言ったらさ——」
「わたしも、魔法使いになりたい!」
首を傾げながら二人の話を聞いていたファファが、突然大声で宣言した。
「ですから私は魔法使いでは——」
「メデリのおねえちゃんも、ルディアのおねえちゃんも魔法使いだよ!」
「えっ? あたしも?」
突然名指しされ、ルディアの声が裏返る。
不思議そうに見つめる二人に向かって、ファファは言葉を紡いだ。
「だって、ルディアのおねえちゃんが踊ったから、メデリのおねえちゃんは水出せたんでしょ?」
「えぇ、それはその通りです」
「じゃあやっぱり魔法使いだね! いいなぁ、わたしも魔法使いになれるかなぁ……」
——先生、私いつか立派な魔法使いになるの!
幼い頃の私が再びそう宣言する。
私自身は無理でも、この子ならもしかしたら……。
「ファファ、提案があります」
魔法が使えるからチート!
とはいかないようです。




