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勇者パーティから勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!  作者: おやまみかげ


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第四話 男同士の約束と二人の魔法使い。


 ♣︎


「レシ、重くないか?」

「平気だよ! 俺だって男だからな!」

「そうだな! 頼もしいぜ!」


 レシにパンを運んでもらい、アルデオは缶詰を運んでいた。

 この食材は昨晩レシたちに渡した物だったが「みんなで食べた方がいいだろ?」と、兄妹が返してくれたのだ。


 食材も多くあるわけじゃないし、調達方法も考えないとだな。

 料理はルディアがしてくれるとはいえ、物がなきゃ作れないしなぁ。


 そんなことを考えていると、隣を歩くレシが口を開いた。


「ねぇ、アルデオ」

「どうした?」

「あのさ、村に残ってくれてありがとう」


 今にも溢れそう涙を堪えながら、少年が自分を見上げている。

 アルデオは立ち止まると、レシの目線まで屈み、頭を力強く撫でた。


「ごめんな、村護ってやれなくて」

「アルデオは悪くないだろ? 今、こうやって助けてくれるし……」

「お前、ファファを護りたいんだよな?」

「うん。俺、にいちゃんだからファファを護るんだ」


 ——まだ小さいのに、本当に強いやつだな。


 アルデオは再びレシの頭をガシガシと撫でる。


「な、なんだよ! 子供扱いすんな!」

「子供だろー? 昨日ルディアに撫でられて、鼻水垂らしてたくせによー」

「うるさいな!!」


 顔を真っ赤にしながら、ポコポコと殴ってくる少年。

 鍛え抜かれた身体を持つアルデオには、そんな攻撃は痛くも痒くもない。

 ただこうやって、臆せず向かってくる威勢の良さは伸ばしてあげたい。そう思った。


「レシ、強くなりたいか?」


 小さな拳を手で受け止めると、アルデオはレシに問う。

 

 闘志に燃える綺麗な目を見れば、答えなんてわかりきっている。

 しかしそれでも、きちんとその意志を言葉にしてほしかった。


「俺、強くなりたい。ファファと生きていくために、強くなりたい」

「よし! じゃあ俺が鍛えてやる!」

「えっ……? いいの……?」

「その代わり、力は誰かを護るために使うこと。その力で誰かを支配したりしないこと。この二つ約束できるか?」

「うん。絶対約束する」


 アルデオの目を真っ直ぐに見つめながら、レシは大きく頷いた。


「じゃあ、飯食ったら修行だー! 強くなるには飯が大事だぞ、いっぱい食えよ!」

「うん! ありがとうアルデオ!」


 男の約束を結んだ二人は、三人が待つ焚き火へと歩き出した。




 ♥︎


「す、すみません!! やはり属性魔法は制御が難しく——」

「あはははは!! びっちゃびちゃだねぇ!!」

「つめたーい!!」


 失敗した私を責めることもなく、二人はお腹を抱えて笑っている。

 なかなかの大きさの塊だったため、焚き火は消え、焼いていた肉も無残に転がっていた。


「せっかくルディアが焼いてくださったお肉が……」

「いいのいいの! また焼けばいいんだからさ!」

「それに、ファファまでこんな水浸しにしてしまって……」


 幼い少女の髪からは、水が滴り落ちている。

 服も何もかもびしょ濡れで、手を洗うどころの話ではない。


「ううん、だいじょうぶだよ! 水浴びみたいで気持ちよかった!」

「そっかー、ずっと水なかったんだもんね」

「うん、だからありがとうメデリのおねえちゃん! おねえちゃんはすごい魔法使いなんだね!」


 ギュッと足元に抱きついてくるファファ。

 思わず少女の頭に手を伸ばすと、孤児院時代の自分の姿と重なった。



 

 *


 ——先生、私いつか立派な魔法使いになるの!


 そんな夢を語る、幼い頃の私。

 

 結局、私は魔法使いにはなれなかった。

 属性魔法を扱えるほど、高度な魔力コントロールができないから。

 一方の治癒魔法は、大地に流れる生命エネルギーを借りればよい。

 だから同じ後衛でも、私は僧侶にしかなれなかった。

 

「どうしたの? おねえちゃん……」


 不安そうな顔で、自分を見上げるファファ。

 撫でていた手を下ろすと、メデリはファファの目線までしゃがみ込んだ。


「ファファ、私は魔法使いではないのです」

「そうなの? でもおっきな水出してたよ?」

「あれは……」

「あれは魔法じゃないの? 違うの?」

「えっと……」


 確かにあれは魔法ではある。でも、私は魔法使いではない。

 誤解をさせたままでは、この子に嘘をついていることになってしまう……。


「いいじゃんそんな細かいことはさ!」

「ルディア、でも私は——」

「あたしらの中で魔法使えるのはメデリとフォルぐらいじゃん! つまり、メデリは魔法使いってこと!」

「そんな無茶苦茶な……」


 ルディアは落ちている肉を拾うと、新しく起こした焚き火へと投げ込む。

 新しい肉を枝に刺すと、先ほどと同じように炙り始めた。


「いいんだよ、細かいことは気にしなくて。メデリがいたからここまで来れたんだよ? 何回壊滅しかけたことか……」

「まぁ、私は僧侶ですので……」


 パーティを立て直すのは私の役目。

 とても褒められるようなことではない。

 パーティを強化できるルディアの方が何十倍も貴重だ。


「あたしなんて、誰かがいないと役に立たないよ? メデリはそんなことないじゃん?」

「私は一人では何もできません。ルディアのようにパーティを鼓舞し、勝利に導く方が立派です」

「それを言ったらさ——」

「わたしも、魔法使いになりたい!」


 首を傾げながら二人の話を聞いていたファファが、突然大声で宣言した。


「ですから私は魔法使いでは——」

「メデリのおねえちゃんも、ルディアのおねえちゃんも魔法使いだよ!」

「えっ? あたしも?」


 突然名指しされ、ルディアの声が裏返る。

 不思議そうに見つめる二人に向かって、ファファは言葉を紡いだ。


「だって、ルディアのおねえちゃんが踊ったから、メデリのおねえちゃんは水出せたんでしょ?」

「えぇ、それはその通りです」

「じゃあやっぱり魔法使いだね! いいなぁ、わたしも魔法使いになれるかなぁ……」


 ——先生、私いつか立派な魔法使いになるの!


 幼い頃の私が再びそう宣言する。

 

 私自身は無理でも、この子ならもしかしたら……。


「ファファ、提案があります」


 


 魔法が使えるからチート!

 とはいかないようです。



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