第二話 もう魔王城には行きません!
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「今日はここで休もうか」
フォルの言葉に三人が頷く。
かつては栄えていただろう廃村が、今晩の宿となった。
各々明日の準備を整え、起こしていた焚き火の元へと集まる。
「あれ? フォルは?」
「素材が少し足りないからって、外へ取りに行ったぞ」
「それなら、僧侶の私も」
「フォルが一人でいいってさ。メデリ、疲れてるだろうからって」
「それは……彼も同じでしょうに」
旅を始めてから三ヶ月。
互いのこともなんとなくわかってきていた。
「もう、三ヶ月経つんだね〜」
「そうだな。あっという間だった」
「いろんなことがありましたね」
思い出話に花を咲かせていると、背後に視線を感じた。
すぐさまアルデオが臨戦態勢に入り、二人はその背後へと回る。
「敵かな?」
「いや、まだわからない。二人とも、気を抜くな」
くそっ、こんな時に戦闘か。
今はフォルもいないし、俺が二人を護りながら戦わないと。
緊張が走る中、メデリが杖を下ろした。
「……待ってください。あれ、子供ではないですか?」
「子供!? こんなとこに!?」
その言葉に目を凝らすと、確かに小さな人影が二つ。
とはいえ、魔族でないとも言い切れない。
「アルデオ、剣を下ろしてください」
「しかし……」
「子供であれば、出てきてもらわないと」
メデリの言うことは尤もだ。
だが、この状況で剣を下ろすなど——。
決断できずにいると、ルディアが口を開いた。
「なら、あたしが見てくるよ。それでもし魔族だったら、アルデオはすぐ戦えるし、危なくてもメデリが助けてくれるっしょ?」
「おい! そんなこと——」
「もし子供だったら助けないとだよ? 見捨てるの?」
「それでルディアが——」
「だいじょーぶ! あたし踊り子だよ? 回避は得意だかんね!」
前衛である自分が動かず、後衛であるルディアを送る。
下手をすれば命に関わることだが、メデリの覚悟も決まっているようだった。
——やるしかない。
もし魔族でも、俺がすぐ踏み込んで盾になればいい。
「わかった。ルディア、俺の瞬発力を上げといてくれ。それなら何かあってもすぐ護れる」
「りょーかい!」
彼女が舞うと、身体の底から力が湧いてくる。
そのままルディアは、小さな人影に向かって駆け出した。
*
「やっぱり子供だったよー!!」
暗闇から、ルディアの明るい声が飛んできた。
俺もメデリも武器をしまうと、すぐさま彼女の元へと向かう。
そこには、まだ幼い少女と、その子を護るように立つ威勢のいい少年がいた。
二人の恐怖を解くように、メデリが優しく声をかける。
「こんばんは、私はメデリと申します」
「うるさい! お前らもどうせ妹を奪いにきたんだろ!?」
「そんなことはいたしませんよ。ご兄妹なのですか?」
「そうだ!! ファファは俺のたった一人の家族なんだ!!」
「そっか〜、よく護ってきたね! かっこいいぞ!」
ルディアが少年の頭をガシガシと撫でると、堰を切ったように泣き始めた。
こんな廃村に妹と二人——。かなり心細かっただろう。
「大丈夫だから泣くな泣くな! 妹はファファで、お前は?」
「ぐすっ……そういうお前は、なんて言うんだよ……」
鼻水垂らしてるくせに、ちゃんと男なんだなー。
「俺はアルデオ。はい、お前の番な!」
「レシ……」
「いい名前だなー! そこのイケてるねーちゃんはルディアだ」
「よろしくね〜!」
「……よろしく」
二人を焚き火へと連れ出し、ルディアが夕食を振る舞う。
食事も久々だったのだろう。ものすごい勢いで平らげていた。
お腹が膨れると、ファファはメデリの膝の上で寝てしまい、レシがぽつりぽつりと話し始めた。
ひと月程前、ここは魔族に襲われて廃村になったらしい。
親も村人たちも殺されたが、二人はなんとか生き残り、今日まで耐えていたようだ。
「たまに大人が来るんだ。他の子たちはみんな、そいつらと行っちゃった」
「レシたちはどうして行かなかったんだ?」
「ファファと、離れ離れになるって言われたから……」
魔族に親を奪われ、住むところがなくなった子供は孤児院へと送られる。
しかし、どこの院も常にギリギリで生活しているため、兄妹で仲良くというのもなかなか難しい話ではあった。
「そうか、お前にーちゃんだもんな! じゃあこれやるよ!」
アルデオは、ありったけの食料をレシに手渡した。
「いいの……?」
「いいんだよ! それならしばらく食うには困らないだろ?」
「ありがとうアルデオ!」
少年は深々と頭を下げると、妹を背負い去っていった。
「魔族のせいで、あんなちっちゃい子たちまで……」
「あぁ、さっさと魔王を倒さないとな」
「……本当に、それで解決するのでしょうか」
「どしたん? メデリ」
「食料はいずれ無くなります。そうなれば、結局あの子たちは生きていけない。目の前の困っている子たちを置いて、先に進むのが正しいことなのでしょうか」
メデリの言葉に、ルディアが火を見つめたまま静かに口を開いた。
「実はさ、レシたちみたいな子の居場所になるのが夢なんだよね。ご飯作って、歌って踊って。みんなが笑顔になれる場所を作りたいんだ」
「いいですね。私は子供たちに勉学を教えるのが夢でした。かつて自分が、孤児院でそうしていただいたので」
「二人ともすげーな! 俺なんて、故郷の村を護りたいぐらいしか夢ないのにさ。じいちゃんばあちゃんや、村の子供たちを護りたいんだよなー」
各々が秘めていた夢や思いを口にする。
——勇者パーティに選ばれたからには、それを受け入れて成し遂げるべきだ。
そんな正義をかざす者は、三人の中にいなかった。
「あたしさ、正直——」
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「僕が外に出てる間に、そんなことがあったのか……」
「あぁ。だから俺たちはもう一緒には行けない」
「ごめんねフォル。あたしたちはこの村に残る」
「子供たちだけでは、暮らしていけないでしょうから」
まさかの三対一。
しかも、勇者である自分が一だなんて……。
でも、それでも僕たちは勇者パーティだ。
「じ、じゃあ、魔王討伐はどうする気なんだ!?」
きっとわかってくれる。
確かに目の前の子供たちも大切だ。
だけど僕たちが行かなければ、同じような思いをする子供たちが増えるだけだ!
「フォルは行くんだろ?」
「もし疲れたら、いつでも戻ってきてね!」
「ここから、フォルの無事をお祈りしております」
嘘、だろ……?
なんでこんなに、ここに残る意思が固いんだ……?
「でも、僕たちが魔王城へ行かなければ——」
「「「行きたい人が頑張って」」」
僕たちは、勇者パーティのはずだった——。
「じゃあ、気をつけてな」
「あたしたちは離れていても仲間だよ!」
「神のご加護があらんことを……」
しかし勇者を追放したので、もう魔王城には行きません!
ここから物語は本当のスタートです\( ˆoˆ )/




